【為替本日の注目点】米4月CPI、前月比で0.8%上昇

ドル円は大きな動きを見せた。米CPIの上振れを受け、109円台を回復し、109円71銭までドルが反発。ユーロドルは水準をやや切り下げ、1.2060まで下落するも底堅く推移。ユーロ円は132円45銭前後まで上昇。株式市場は大幅続落。CPIが予想を上回る上昇だったことからハイテク株を中心に売られ、ダウは681ドル安。債券相場は5日続落。長期金利は一時1.6988%まで上昇し、1.69%前後で引ける。ドル高が進んだことで金は続落。原油は4日続伸。 4月消費者物価指数      →  0.8% 4月財政収支         →  -2256億ドル ドル/円  108.72 ~ 109.71 ユーロ/ドル 1.2060 ~ 1.2152 ユーロ/円  131.65 ~ 132.45 NYダウ -681.50  → 33,587.66ドル GOLD -13.30 → 1,822.80ドル WTI +0.80 → 66.08ドル 米10年国債  +0.070 → 1.692% 【本日の注目イベント】 日   3月貿易収支 日   3月国際収支 日   4月景気ウオッチャー調査 米   新規失業保険申請件数 米   4月生産者物価指数 米   バイデン大統領、共和党上院議員と会談 米   ブラード・セントルイス連銀総裁、オンラインイベントで講演 米   バーキン・リッチモンド連銀総裁講演 米   ウォラー・FRB理事、オンラインイベントで講演 米   ブラード・セントルイス連銀総裁、オンラインイベントで講演  米4月のCPIは上振れが予想されてはいましたが、予想以上に上昇していました。総合CPIは前月比で「0.8%」上昇し、前年同月比では「4.2%」と、2008年以来の上昇でした。CPIの予想以上の上昇を受けてFRBの金融緩和政策の変更が早まるとの見方からドル円は大きく買われ、109円71銭を付けています。ただこの水準は、今月3日に付けた直近高値とほぼ同水準で、ここからもう一段ドルが買われ110円台に乗せることができるかどうかが正念場となります。4月のCPIではほぼ全ての項目で上昇しており、特にガソリン価格、中古車価格の上昇が目立っており、その他にも輸送サービス、ホテル宿泊などが大きく上昇しています。新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、パンデミックで深刻な打撃を受けた分野の経済活動が一段と広がったことが背景にあります。  CPIの発表を受け、NY株式市場では金利上昇を嫌気した株価の下落が加速し、ダウは681ドル、ナスダックは357ポイント下げています。もっとも、この日のCPIの発表が無くても、昨日も日本株が大きく続落したことから、そこそこの下げが見込まれていましたが、CPIが追い打ちをかけた格好になりました。日本株の下げも止まらず、日米で株安の連鎖が起きており、このままでは今日の日経平均も3日連続の大幅安が見込まれますが、日銀のETF買いも焦点の一つになります。ただ米CPIの大幅な上昇は経済活動の正常化の裏返しで、今後消費を含めた社会活動が活発になれば、その先には企業収益の拡大も見込まれ、決して悪い面だけではなく、むしろFRBの目指している姿に近づくことになります。「ゼロ金利政策」、「金融緩和政策」に慣れ過ぎたため、市場にはややショックかもしれませんが、これがむしろ正常な姿であって、そのためにFRBは金融政策を駆使しているわけです。  CPIの発表を受けクラリダFRB理事は12日、「発表されたCPIには驚いた」と述べ、「必要とあればインフレ率を目標まで抑えるための行動をわれわれはちゅうちょしないだろう」と言明しています。また、「経済には繰り延べ需要があり、供給が需要の水準に追いつくまでには幾分か時間がかかるかもしれない」と発言し、さらに4月の雇用統計が予想を下回ったのは、経済再開に伴う労働市場の摩擦を反映している可能性があると指摘しています。(ブルームバーグ)  ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、中国政府が対米貿易交渉のトップを劉鶴副首相から交代させることを検討していると報じています。トップ交代の場合は、劉氏よりも若い胡春華副首相が起用される見通しで、胡氏も劉氏と同じく政治局員で、かつては習近平氏の後任となる国家主席候補と目されたこともある人物とのことです。劉氏はトランプ政権下で、USTRのライトハイザー代表と何度も貿易交渉を行い、筆者には「温厚な人物」との印象があります。コロナ禍で米中の貿易交渉は中断されていますが、今後事態が落ち着けば、先の交渉で中国が約束した米国からの穀物などの輸入がどの程度履行されているかどうかの交渉が再開されるはずです。米中貿易交渉の前面に立つ人物だけに、今後の米中関係にとっても重要な人事であり、米通商代表部も注目しているとみられます。  この欄で何度か述べてきたように、ドル円が110円を超えて上昇するには米長期金利の上昇が不可欠です。昨日の米債券市場ではCPIの発表を受け長期金利は一時1.6988%まで上昇する場面があり、これがドル円を109円71銭まで押し上げました。長期金利が再び3月30日に付けた1.77%台まで上昇するのかどうかがポイントです。労働市場の回復がFRBの目標には届いていないため、インフレ率の上昇だけで直ちに金融政策の更を行うことはないと思いますが、金融政策の変更を示唆するテーパリング開始には着実に近づいていると考えています。 今後の労働市場の状況を注意深く見ながら、9月か11月にはFRBからのメッセージが発せられると予想しています。 本日のドル円レンジは109円20銭~110円20銭程度を見ています。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大きな動きを見せた。米CPIの上振れを受け、109円台を回復し、109円71銭までドルが反発。ユーロドルは水準をやや切り下げ、1.2060まで下落するも底堅く推移。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-05-13 09:45