中国を「巨像」と見るかそれとも、「豚・イノシシ」なのか?

 これからの中国経済をどう読むか? 難しいところです。  「象のシッポは細くて長い」、「足は太くてどっしりしている」、象の一部に触れた人はこう感想を述べるでしょうが、どれも間違ってはいないのですが、しかし巨大な象の全体を表しているわけではありません。  それほど巨大な中国は、つかみどころがなく、様々な報道や解説が氾濫(はんらん)し、どれを信じればいいのか? 情報収集力の乏しい中小企業にとって撤退か、残るのか? それとも積極投資か? 判断に迷うところです。 ■自分の目で見ることも大切  4月16日、「中国の今年1月から3月までのGDPの成長率は7.4%の増加にとどまり、2四半期連続で成長率が鈍り中国の景気の減速が鮮明になった」と報じられました。  一方で、中国の2013年の輸出入を合わせた貿易額は前年比7.6%増の4兆1600億ドル(約437兆円)で、モノのやりとりに限った貿易では米国を抜いて世界一となりました。  どれも多少の数値の操作はあれど、発表された事実として捉えるしかありません。我々はこれを足掛かりに、裏付け情報を集め、さまざまな角度から自分なりに仮説を立て、今後の方向性を決定するしかありません。  ネット情報などに頼らず、実際に自分で上海や、北京の街を歩いて、空気を実感することも大切なのです。この目で実際に見ている限り、この発展した大都市の街並みが中国経済崩壊で、一瞬のうちにゴーストタウン化するとは考えられません。世界中から人々が集まり、さまざまな形の経済活動が活発に行われ、消費も伸びています。住宅需要も旺盛です。  ところが地方の3-5級都市を実際に訪問すると、住宅や工業開発区などに無理に投資した揚げ句に、建物を造りすぎたり運転資金不足でプロジェクトが止まったりして、大規模なゴーストタウンを産み出してしまった地域を多数見かけます。この状況を目の当たりにした人々は、口をそろえて中国崩壊説を唱えます。  私は時々中国の田舎を訪問する機会がありますが、高速道路は大都市間をつないで、格段に便利になっていますが、その途中に存在する田舎の都市は、道路網や鉄道の整備が遅れていて、言わば陸の孤島と化しています。こんなところに、急に住宅、工業区などに投資しても、入居者を得るあてもないのです。狭い日本と異なり、それだけ中国は広く、都市開発一つとっても、簡単ではなく、膨大な費用と時間が掛かるのです。 ■中国の抱える問題と課題  中国の貿易額は世界一となりましたが、輸出が輸入を上回る構造的な問題を抱えています。中国政府は景気を下支えする手段として、インフラ投資や国有企業の設備投資に大きく依存しています。それが過剰生産を招き、国内でさばききれない商品を安値で海外で売るため、貿易摩擦をしばしば引き起こしています。また非効率なエネルギー消費によって、材料や原油の輸入が増え、そのうえ環境破壊を招いています。  また中国は人民元をコントロールして低く抑え、モノの貿易では世界最大となったのですが、金融などサービス貿易を含めると米国になお及びません。  2013年度のGDPを産業別付加価値額で見ると、第二次産業の付加価値は24兆9684億元で伸び率は7.8%、第三次産業の付加価値は26兆2204億元で、伸び率は8.3%で、第三次産業の付加価値は1兆2520億元多く、伸び率は0.5ポイント上回り、GDPに占める割合は46.1%と、ようやく第二次産業を逆転しました。  輸出額の伸びは堅調なのですが、「世界の工場はなお健在」と見るのはあまりに表面的な見方と言わざるをえないでしょう。  GDPの消費構成から見ると、個人消費が先進国の約2分の1の35%と極端に低いこと(約1/2)、いまだに固定資産投資が発展途上国並みの50%を占めていることなどから、表面的な「GDPの成長率7.4%、前期に対して0.1%目標に及ばず、減速傾向鮮明」といった単純な分析では、中国経済の真実は語れません。 ■中国は「巨象」か「豚・イノシシ」か?  ではいったい、中国を巨象とみなせるのか?  それとも、単なる豚やイノシシでしかないのか?  いや、どちらもある面では正しい。だから過大評価することなく、また過小評価する必要もない。場面場面で、冷静に判断していくことが必要なのです。偏った情報に踊らされることなく、自分なりに事実を捉え判断すること。  グローバル経済下、中小企業の経営者にとって、最低限これくらいの情報収集力と、分析・判断力は必要になってきます。そして、中国は、日本のように画一的な物差しで捉えることはできないし、これからの成長を、長い目で見ていかなければならない国なのです。(執筆者:浜田金男 提供:中国ビジネスヘッドライン)
これからの中国経済をどう読むか? 難しいところです。 「像のシッポは細くて長い」、「足は太くてどっしりしている」、像の一部に触れた人はこう感想を述べるでしょうが、どれも間違ってはいないのですが、しかし巨大な像の全体を表しているわけではありません。
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2014-04-23 11:00