【為替本日の注目点】ドル円2カ月半ぶりに110円台後半に

FOMCでは予想よりもタカ派的だったことで米金利が上昇。ドル円も110円72銭と、約2カ月半ぶりの水準まで上昇。ユーロドルは下落。5月6日以来となる1.1995までユーロ安が進む。株式市場ではFOMCを受け3指数が揃って大幅に下落。ダウは3日続落で一時は3万4000ドルを大きく割り込む場面も。債券は売られ、長期金利は一時1.59%台まで上昇し、高値圏で引ける。金は反発。原油は小幅に続伸。
5月住宅着工件数 → 157.2万件
5月建設許可件数 → 168.1万件
米5月輸入物価指数 → 1.1%
ドル/円 109.80 ~ 110.72
ユーロ/ドル 1.1995 ~ 1.2127
ユーロ/円 132.65 ~ 133.35
NYダウ -265.66 → 34,033.67ドル
GOLD +5.00 → 1,861.40ドル
WTI +0.03 → 72.15ドル
米10年国債 +0.083 → 1.575%
【本日の注目イベント】
豪 豪5月雇用統計
トルコ トルコ中銀政策金利発表
欧 ユーロ圏5月消費者物価指数(改定値)
米 新規失業保険申請件数
米 6月フィラデルフィア連銀景況指数
米 5月景気先行指標総合指数
米 米証券取引委員会(SEC)、ビットコインETFを巡る判断
米 イエレン財務長官、下院歳入委員会で証言
ほぼ全ての市場の動きが予想通りでした。金(きん)が小幅に反発したのがやや予想外でしたが、前日まで3日続落していたことからドル高にも拘わらず上昇しましたが、値ごろ感での反発とみます。
FOMCでは政策金利を据え置きましたが、公表された「ドットチャート」では2023年末までに2回の利上げを見込んでいることが示唆され、株式と債券が大きく売られ、発表前までは1.48%台で小動きだった米長期金利は1.59%台まで急騰しました。米金利の上昇に引き寄せられる格好でドル円は素直に上昇。110円台半ばを超え、110円72銭までドル高が進みました。この水準は4月6日以来となり、現時点では110円台前半から半ばにあった「壁」を抜けたと見られます。ただそれでも「月足」では雲の中に入った状況で、雲全体が「抵抗帯」であることを考えると、これで上昇が一気に加速するとはまだ判断できません。
声明文では、「ワクチン接種の進展により、米国内の新型コロナウイルス感染症の広がりは抑えられてきた。こうした進展と強力な政策支援が施される中、経済活動や雇用の指標は強さを増した。インフレ率は上昇し、これは主として一過性の要因を反映している。金融政策の適切なスタンスを見極める上で、委員会は今後の情報が経済見通しに与える意義を引き続き監視する」としています。パウエル議長は会見で、資産購入の縮小について当局者らが議論を始めたことを明らかにし、「今日も議論した」と述べ、「米経済は明らかに進展した」と語っています。その上で、「今回の会合は議論することについて議論する会合だという考え方も可能だ」と、禅問答のような言い回しもしています。「ドットチャート」では、参加者18人のうち13人が2023年末までに少なくとも1回の利上げがあると予想。3月時点では7人だったことから、6人も利上げ前倒しにシフトしたことになります。また、早ければ2022年度中に利上げがあると見込んだ参加者も7人おり、前回から4人増えていました。
経済が回復する中で、利上げ開始の時期が前倒しされる可能性が高まったわけですが、金利上昇を嫌気してNY株式市場は大きく値を下げています。ただ今回の金利上昇は景気回復を伴う、いわば「良い金利上昇」です。景気回復は企業業績を押し上げることにつながるため、今後は必ずしも株価の下落要因になるとは限りません。以前にも指摘しましたが、株式市場が、長く続いて来た低金利という「ぬるま湯」に慣れ切ったしまった反動と捉えています。
バイデン大統領はスイスのジュネーブで初となるプーチン大統領と会談を行いました。米ロトップが直接会って会話を行ったことで、やはり意義のある会談だったと思います。会談は2時間半程度だったようですが、米国とロシアはそれぞれの大使を相手国の首都に戻すことが決まったようで、一定の成果はありました。ただ人権問題での対立は続いており、バイデン大統領は会談後の会見で、「プーチン氏に今回指摘したような人権侵害について黙っているなら、米国の大統領でいられるだろうか」と発言し、「だからこそ、ナワリヌイ氏のような事件には懸念の声を上げていく」と語っています。プーチン大統領も今回の会談を「全体として生産的で、本質的、具体的なもので、結果を得ようとする雰囲気の中で行われた。最も重要なのは、信頼の兆しがわずかに見られたことだ」と評価しています。双方とも重要な問題についてお互いのレッドラインを理解していたと語っています。(ブルームバーグ)
イエレン財務長官は16日、上院財政委員会で証言を行い、「米経済は新型コロナウイルスのパンデミックからの力強い回復に向け、順調に進んでいる」と説明しました。一方で、米国は賃金格差や労働参加率の低下、人種間の格差、気候変動といった困難を抱えており、そうした問題への対処には相当規模の公共投資が必要だとして、バイデン大統領が提示している複数年にわたる4兆ドル(約442兆円)規模の歳出案を支持するよう呼び掛けました。イエレン氏の証言は今夜も下院で行われることになっています。
上でも述べたように、ドル円はなかなか抜け切れなかった110円台前半から半ばの「壁」を抜けています。ここまで来ると、本邦輸出業者は「余裕を持って」相場に向かうことができます。これまでは110円に入ればドル売りを持ち込んでいたものが、次のターゲットは111円台のどこかの水準か、あるいは昨年のドルの高値であった112円台を狙うことになることが考えられます。トヨタ自動車など、まだ多くの輸出企業の「社内レートは」105~107円程度に設定されています。
本日のドル円は110円30銭~111円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
FOMCでは予想よりもタカ派的だったことで米金利が上昇。ドル円も110円72銭と、約2カ月半ぶりの水準まで上昇。ユーロドルは下落。5月6日以来となる1.1995までユーロ安が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-06-17 10:00