【為替本日の注目点】NYダウ586ドル高と急反発。

 昨日の東京時間昼過ぎには109円72銭まで売られたドル円は反発。米長期金利の上昇とNY株式が急反発したことから円を売る動き加速し、110円35銭までドル高に。ユーロドルは水準を大きく変えることなく1.19を挟みもみ合う。ユーロは対円で131円台半ばまで反発。株式市場は急反発。金融当局は金利引き締めに際しても、斬新的なペースになるとの観測が広がり、ダウは586ドル高。前日の大幅な下げを埋める荒っぽい展開に。債券は売られ、長期金利は1.49%近辺まで上昇。金は反発。原油価格は、原油在庫の減少観測やイラン産原油の輸出解禁が遅れるとの見方が材料となり2ドルを超える上昇。引け値でも73ドル台半ばを記録。 ドル/円  110.10 ~ 110.35 ユーロ/ドル 1.1885 ~ 1.1921 ユーロ/円  130.87 ~ 131.50 NYダウ  +586.89  → 33,876.97ドル GOLD +13.90  → 1,782.90ドル WTI  +2.02   → 73.66ドル  米10年国債 +0.051  → 1.489% 【本日の注目イベント】 欧   ユーロ圏6月消費者信頼感指数(速報値) 米   6月リッチモンド連銀製造景況業指数 米   5月中古住宅販売件数 米   パウエル・FRB議長、下院で証言 米   メスター・クリーブランド連銀総裁、オンラインイベントで講演 米   デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、オンラインイベントで講演 米   NY市長選予備選  FRBの利上げのタイミングを巡り、金融・商品市場では荒っぽい展開が続いています。先週末のNY株の大幅下落を受け、昨日の東京株式市場ではその影響をもろに受け、日経平均株価は寄り付きから大きく下げ、午後には1100円を超える下げに見舞われました。利上げが早まるのは米国であって、日本ではないにもかかわらず、「離れ」の日本が「母屋」の米国を上回る厳しい下げになってしまいました。今朝の経済紙でも、日本株の下げが突出する理由の一つに、「アジア市場の中では株価指数先物市場が発達しており、注文量が多くても安定して想定した価格で約定しやすい」という点を挙げていました。そのため投機筋の対象になり易いということの様です。  ドル円は日経平均株価の大幅な下げに「リスク回避が進み」、昼過ぎには109円72銭までドル安が進みました。ドル円はその後欧州市場に入るとFTなど欧州の株価が堅調だったことから110円台を回復し、NYではダウが600ドル近い反発を見せたことで、110円35銭までドルが買い戻されています。結局、金曜日と週明け月曜日で「往って来い」の展開になっており、為替も株も金利も概ね元の水準に戻っています。株価の大幅な下落が今回の金融市場混乱の源だったと思いますが、昨日のNYでは金融当局の引き締めスタンスは変わらないが、そのペースは斬新的になるとの見方が広がったことで、投資家心理が落ち着きを取り戻したことが大きかったと思われます。  ブラード・セントルイス連銀総裁の「2022年末には利上げ」という発言をきっかけに今回の混乱が始まったわけですが、昨日も地区連銀総裁の発言が相次ぎ、まとめてみると、FOMC委員の間でも意見が分かれていることが鮮明になっています。ブラード総裁は先週末に続いて、「FOMCが先週にテーパリング議論を開始したのは適切だ」と述べ、MBS(住宅ローン担保証券)の購入縮小を提言しました。また、ダラス連銀のカプラン総裁も、「債券購入のテーパリングを比較的早期に開始することを支持する」と述べ、「タカ派的」な認識を見せています。一方、ウイリアムズNY連銀総裁は。「今年3%前後のインフレ率が2022年と23年には2%近くに低下する」と予想しており、ただ物価上昇には「強い不透明感」があることも認めています。(ブルームバーグ)  パウエル議長は本日(22日)、下院特別小員会の公聴会で証言を行うことになっていますが、事前に準備した証言の内容が公開されました。公聴会の前に証言テキストの内容が公開されるのは、異例のことと思いますが、これも市場の混乱を避けるための配慮かと思われます。テキストでは、米経済の再開に伴う消費の回復と原油高に言及し、「インフレはここ数カ月で顕著に加速した。これらの一時的な供給の影響が弱まれば、インフレ率はわれわれの長期目標に向け再び鈍化すると予想される」とあります。(ブルームバーグ)議長はこれまで「足元の物価上昇は一時的」との言葉を何度も繰り返して述べていましたが、このテキスト内容を見る限り、「一時的」との認識は変えていないと見られます。一方で、雇用の見通しについては引き続き楽観的で、「新型コロナウイルスワクチン接種が進み、現時点で下押し圧力となっているパンデミック関連要因の一部が緩和されれば、雇用の伸びは今後数カ月で上向くはずだ」との予想を明きらかにするようです。  またサマーズ元財務長官と世界最大のヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエーツの創業者ダリオ氏は、カタールで行われた経済フォーラムで、米経済は過熱しインフレに向っているとの認識を示しています。サマーズ氏は、「2月時点では、今年はインフレ率が2%を若干上回る水準になるという見方で、市場予想の専門家はほぼ一致していた」とした上で、「今年最初の5カ月間ですでにそれを上回るインフレ率になっている」と指摘。「そうした状況を見ると、専門家らは予想を修正するだけではなく、大きく外れた予想につながった誤った分析についても考えるべきだ」と話しています。ダリオ氏も、インフレが加速し景気回復を脅かす恐れがあるため、「金融当局は、そうなる前に対応すべきだ」と述べています。  「ゼロ金利政策から金融正常化へ舵を切り直す」には、それなりの説得力とそれを行うことの正当性を証明することは不可欠です。よしんば、それらが出来たとしても市場のある程度の混乱は必至とも言えます。リスク資産は金利上昇を嫌いますが、それも相対的なもので、長期金利の1.5%程度は受け入れ出来るのではないかと思います。株式に代表されるリスク資産でも平均して1.5%を上回る配当利回りは享受でき、その上「キャピタルゲイン」も期待できます。いずれ株式と債券がソフトランディングする時期があると予想しています。 本日のドル円は110円~110円70銭程度を予想しています。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
昨日の東京時間昼過ぎには109円72銭まで売られたドル円は反発。米長期金利の上昇とNY株式が急反発したことから円を売る動き加速し、110円35銭までドル高に。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-06-22 10:00