【為替本日の注目点】米金利低下でドル円110円を割り込む

ドル円は110円を割り込み、109円54銭まで下落。米長期金利の低下や株価の大幅な下落、さらにはコロナ変異種の感染拡大など、リスク回避の流れが強まった。ユーロドルは1.18台半ばを中心に小動き。クロス円が下げ、ユーロ円は4月下旬以来の129円台に。株式市場はほぼ全面安。新型コロナの変異株の感染拡大が成長見通しを一変させるとの懸念が広がった。ダウは259ドル下げ、堅調だった他の2指数も大幅に売られた。債券は続伸。長期金利はこの日も低下し、一時は1.247%まで下げる。長期金利はこれで8営業日連続の低下。金は6日ぶりに反落。原油は小幅に反発。
新規失業保険申請件数 → 37.3万件
5月消費者信用残高 → 352.8億ドル
ドル/円 109.54 ~ 109.86
ユーロ/ドル 1.1834 ~ 1.1868
ユーロ/円 129.73 ~ 130.16
NYダウ -259.86 → 34,421.93ドル
GOLD -1.90 → 1,800.20ドル
WTI +0.74 → 72.94ドル
米10年国債 -0.023 → 1.293%
【本日の注目イベント】
中 中国6月消費者物価指数
中 中国6月生産者物価指数
欧 英中銀総裁、ECB総裁とパネル討論に参加
欧 ECB議事要旨
英 英5月鉱工業生産
英 英5月貿易収支
英 ベイリー・BOE総裁講演
加 カナダ6月就業者数
加 カナダ6月失業率
昨日のレポートで、「ドル円は米長期金利が急低下するわりには堅調だ」と記述しましたが、さすがにその金利がさらに低下し、一時は1.247%台まで低下したことで、底堅く推移していたドル円も持ちこたえられなかったようです。ドル円は110円台を割りこむと下げが加速し、109円70銭台では一旦下げ止まり反発する動きも見せましたが、110円台を回復することなく再び下げに転じ、109円54銭近辺まで売られています。米10年債利回りは昨日も下げ、これで8営業日連続で水準を切り下げたことになります。因みに、1.24%台は2月16日以来ということになりますが、この日のドル円は105円台半ばから106円台に乗せた水準で推移しており、米長期金利の低水準の割にはまだ「ドル高」だと言えそうです。これは偏に日本のコロナワクチンの接種状況が反映されているものと考えられます。米国でワクチン接種が一段と進み、日本での接種遅れが鮮明になった5月から6月にかけては円が大きく売られ、ドル円は110円台から111円台まで買われ、ユーロ円も134円台まで上昇するなど、「円全面安の展開」でした。この時は、米長期金利は既にピークを付け低下傾向を示していましたが、それでも円は売られ易い状況でした。コロナワクチン接種はその後日本でも進んできましたが、それでも昨日政府が東京都に4回目となる「緊急事態宣言」の発令を決めるなど、依然として欧米との差は歴然です。結局ドルが売られたのは米長期金利の急低下が最大の要因であると分析しています。それにしても、米国の利上げ開始時期を巡る議論が活発になる中、長期金利が1.25%を割り込む足元の状況がどのような意味合いを持つのか、理解に苦しむ筆者ですが、過去の経験から言えば、「市場は時として間違うことがある」という、この言葉を前面に押し出して説明したいところですが、どうでしょう?
昨日のレポートでも述べましたが、ECBは従来のインフレ目標である「2%を下回るがそれに近い水準」から目標を引き上げることを決めました。新たな物価目標は「中期で対称的な2%」とし、「一時的には上振れを容認する」姿勢を明確にしました。従来の物価目標は「文言があいまいすぎる」との指摘が政策委員会のメンバーからもあり、ラガルド総裁は会見で、「新原則はあいまいさを全て取り除くとともに、2%は上限ではないと明確に伝えている」と説明しています。また新戦略は、「情報開示やリスク評価、担保の枠組みや企業セクターの資産購入といった分野の金融政策運営で、気候変動への考慮を加味する」としています。今月22日の政策会合をもって新戦略の適用を開始することとし、次回の点検を2025年に予定するとしました。今回、新たな戦略に「気候変動」という文言を入れたことは、環境に厳しい欧州の姿勢を如実に表していると受け止めています。
菅首相は昨日の夜7時から会見を行い、東京都と沖縄県に「緊急事態宣言」の適用を行うこと発表しました。また同時に開催された、2週間後に開催される東京オリンピック・パラリンピックの観客対応について、来日したバッハIOC会長を含めた5者協議では、1都3県の全会場で無観客とすることを決めました。開会式と閉会式が開かれる国立競技場も対象になるそうで、無観客開催による経済的損出は2兆4133億円に上るとの試算(関西大学宮本勝浩名誉教授による)もあるようです。
109円台半ばまで売られてきたドル円ですが、日足までの短期チャートでは全て売りサインが点灯してきました。従って、日足でさらに明確なネガティブなサインが点灯するかどうかが一つの焦点になります。雲の下限は現在「109円30銭前後」にあることから、ざっくり109円を割り込むようだと、今回の上昇トレンドも長い調整局面入りとなる可能性があります。ただ移動平均線を見ると、日足では「200線」が最も下方にあり、依然として「順目」に並んでいることから、まだ明確なトレンドて転換は確認できていないと判断しています。
本日のドル円は109円30銭~110円10銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は110円を割り込み、109円54銭まで下落。米長期金利の低下や株価の大幅な下落、さらにはコロナ変異種の感染拡大など、リスク回避の流れが強まった。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-07-09 10:15