【為替本日の注目点】パウエル証言を受けドル下落

 ドル円は再び110円を割り込む。パウエル議長の議会証言を受け、米長期金利が低下したことで109円94銭までドル売りが進む。ユーロドルは反発。1.1839まで上昇したが、依然上値が重い展開が続く。株式市場はまちまち。ダウは小幅に反発したものの、ナスダックは高値警戒感から小幅に続落。債券相場はパウエル議長の議会証言後に急伸。長期金利は1.34%台まで急低下。金は続伸。原油は在庫の増加とOPECプラスの対立解消が進んだことで2ドルを超える(2.8%)下落。 6月生産者物価指数  → 1.0%            ドル/円  109.94 ~ 110.45 ユーロ/ドル 1.1803 ~ 1.1839 ユーロ/円  130.02 ~ 130.42 NYダウ  +44.44  → 34,933.23ドル GOLD +15.10  → 1,825.00ドル WTI  -2.12   → 73.13ドル 米10年国債 -0.071  → 1.346% 【本日の注目イベント】 豪   豪6月雇用統計 中   4-6月GDP 中   中国6月小売売上高 中   中国6月鉱工業生産 英   英6月失業率 米   新規失業保険申請件数 米   6月輸入物価指数 米   7月フィラデルフィア連銀景況指数 米   6月鉱工業生産 米   6月設備稼働率 米   7月NY連銀製造景況業指数 米   パウエル・FRB議長、上院銀行委員会で証言 米   米独首脳会議(ワシントン) 米   企業決算 → モルガンスタンレー、アルコア  前日に発表された6月のCPIは前月比で「0.9%」と、13年ぶりの高い伸びを見せましたが、この日発表された6月のPPIも前月比で「1.0%」と、高水準でした。市場予想の「0.5%」を上回り、企業が一段と値上げ圧力にさらされていることが示された格好です。コアPPIも前月比で同じく「1.0%」の上昇で、前年同月比では2010年の統計開始以降で最大の伸びを記録したと伝えられています。  そんな中、注目のパウエル議長の議会証言が行われました。議長はこれまで「足元の物価上昇は一時的だ」と繰り返し述べており、上述のように、足元ではさらに一段の物価上昇が示された中での証言でした。「物価上昇は一時的だ」との認識を変えるのかどうかに注目していましたが、議長は「生産のボトルネックなど供給面の制約で生産が限定されている業種で強い需要が見られ、それが一部の財とサービスに特に急速な物価上昇をもたらしている。だがそうした物価上昇は、ボトルネックの影響が解消されるのに伴い一部反転するだろう」と指摘し、これまでの考えを維持し、「金融当局による大規模な資産購入の縮小を開始できるだけの進展はまで見せていない」と証言しています。議長はその理由を、「労働市場の状況は改善が続いているが、まだ長い道のりが残っている」と指摘しています。ただその見通しについては、「公衆衛生の状況が引き続き改善し、現在雇用の重石となっているパンデミック関連要素の一部が後退するにつれて、雇用の伸びは向こう数カ月に力強さを見せるだろう」との認識を示しました。(ブルームバーグ)債券購入のテーパリングに踏み切る基準に達したとどのように判断するのかとの委員からの質問に対しては、「正確に言うことは非常に難しい」とし、「進展に伴い当局は多く通知していく」と答えるに留めていました。  市場ではこの証言を、「テーパリング開始時期を早めるものではない」と受け止められ、株と債券が買われ、金利低下に伴いドル円は110円台半ばから110円割れまで下落しました。証言内容にサプライズはありませんでしたが、依然として物価上昇が続き足元の状況にも、「一時的」といった見方を変えていなかったことがカギでした。ただこのまま適温相場が続き、株価が再び最高値を更新する状況が続けば、株価急落のリスクはさらに高まり、テーパリング開始の宣言を行うタイミングをはかるのが、ますます難しくなります。どのようにソフトランディングに持って行くのか、パウエル議長の手腕が試され、引いてはFRB議長再任の道への岐路だとも言えます。  ベージュブック(地区連銀報告)が公表されました。報告書では、米経済は回復ペースが加速した。新型コロナウイルスのパンデミックからの経済活動再開を受け、求人や受注対応の上で負担が増大したと記されており、パウエル議長の証言と一致しています。「健全な労働需要は幅広く見られたが、低技能の職種で最も需要が強かった」とし、「幾つかの地区連銀で企業は困難な求人状況が初秋まで続くと予想した」と記されています。さらに、「労働者の確保や引き留めで賃金外の現金報酬の使用が増えたと、全地区が報告した」とありました。  本日も引き続きパウエル議長の議会証言がありますが、基本的な認識が確認されたことから、大きな動きにはならないと見ています。予想レンジは109円60銭~110円40銭程度といったところでしょうか。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は再び110円を割り込む。パウエル議長の議会証言を受け、米長期金利が低下したことで109円94銭までドル売りが進む。ユーロドルは反発。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-07-15 10:00