【為替本日の注目点】米変異株の拡大でリスク回避の流れ強まる

ドル円は大幅なドル安が進み、109円07銭まで売られる。米国でコロナの再拡大懸念が広がりリスク回避の流れが急速に広がった。ユーロドルではドル安の勢いは限定的。1.1824までユーロが買われたが1.18台半ばから上方が壁に。ユーロは対円で128円台後半まで下落。株式市場は大幅安となる。変異株の感染拡大が景気回復に重しとなる見方が広がり、ダウは一時900ドルを超える下げに。引けではやや反発したものの、725ドル安と、今年最大の下げを記録。債券は大幅に続伸し、長期金利は一時1.17%台まで低下。今年2月以来となる低水準に。金は続落。原油は世界的なコロナ感染の拡大から需要が減るとの見通しから大幅安。先週末から5.80ドル下げ、一気に66ドル台に。
7月NAHB住宅市場指数 → 80
ドル/円 109.07 ~ 109.67
ユーロ/ドル 1.176 ~ 1.1824
ユーロ/円 128.89 ~ 129.31
NYダウ -725.81 → 33,962.04ドル
GOLD -5.80 → 1,809.20ドル
WTI -5.39 → 66.42ドル
米10年国債 -0.101 → 1.189%
【本日の注目イベント】
豪 RBA議事録
日 6月消費者物価指数
独 独6月生産者物価指数
欧 ユーロ圏5月経常収支
米 6月住宅着工件数
米 6月建設許可件数
米 企業決算 → ネットフリックス
高値圏で推移していた米国株が何かのきっかけで大幅安に転じる懸念を感じていました。FRBによるテーパリングを巡る議論が大きく前面に出ている中、いずれは金利引き上げが行われるわけで、その状況下でも「最高値」を更新し続けるNY株式市場に違和感を禁じ得ませんでした。先週1週間だけを見ても、ダウは2回、ナスダックも2回、S&P500に至っては3回も「最高値」を更新しています。
昨日のNY市場では、新型コロナウイルスの変異株感染拡大が景気回復に暗い影を投げかける格好となり、リスク回避の流れが急拡大。リスク資産が大きく売られ、安全資産が買われる展開でした。NY株式市場ではダウ銘柄が最も厳しい下げに見舞われ、他の主要指数も大きく下げ全面安の展開でした。一方債券が買われ、長期金利は今年2月以来となる1.2%割れまで低下しています。米金利の急低下を受け、ドル円でもドル売りが強まり、昨日の東京市場の朝方には110円台で推移する場面もあったドル円は、109円ぎりぎりの水準まで円高に振れています。このようなケースでは良く見られる「円全面高」の流れから、クロス円はほぼ全て円高に振れています。ここまで株価が下げ、長期金利も低下したことで、来週のFOMCでのテーパリング開始時期の議論にも影響を与える可能性があります。少なくともここ2週間ほどの長期金利の動きを見る限り、FRBが債券購入の縮小に動く可能性は感じられず、一部のタカ派的な予想である「8月にテーパリングを示唆し、9月に正式に宣言。11月にテーパリング開始」といったシナリオも修正を迫られると考えます。
英国では19日、イングランドでの新型コロナ関連の規制が解除され、英国民がナイトクラブで気勢を上げる姿が放映されていましたが、感染が急速に再拡大している中での規制解除です。昨日の英国の新規感染者数は4万7848人でした。この数は、今最も感染拡大が懸念されているインドネシアの4万4721人を超えています。それでも規制解除に踏み切ったジョンソン英首相は、「冬にかけてさらに感染が拡大することも予想され、今やらなければいつやるんだ」と、専門家が反対する状況下でも解除を決めました。また感染者数は急激に増加しているものの、死者の数は極端に少なく、明らかにワクチンの効果が出ていることも英首相の背中を押したようです。一方で皮肉にも、米疾病対策センター(CDC)は19日、英国への渡航警戒レベルを最高レベルに引き上げ、可能な限り渡航は避けるよう勧告しています。今年の春先、新型コロナウイルスの感染状況が世界の金融市場の動向を見る上での「カギ」になっていました。今再びコロナ感染が金融市場を揺さぶり始めています。今週開幕する東京オリンピックが成功するかどうかも含めて、コロナ感染の再拡大を封じ込めることが出来るのか、重要な局面にいます。
米政府は英国や日本など同盟国と、米マイクロソフトに対するサイバー攻撃は中国政府に関係するハッカーが行ったとの見解を正式に示し、3カ国に加え、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、EU、NATO(北大西洋条約機構)を巻き込み、一斉に中国を非難しました。ラーブ英外相は声明で、「中国政府はこうした組織的なサイバー妨害工作をやめなければならない。やめないなら、責任が問われることになる」と主張し、ホワイトハウスも、「中国に責任をとらせるための追加行動を排除しない」と表明しています。
ドル円は昨日のNY市場で109円07銭まで売られ、今朝はその安値からは大きく反発しています。これまでにも何度か述べてきましたが、109円前後が非常に重要な値位置だと考えています。この水準は、「日足の雲の下限」にあたり、昨日の下げもちょうどこのレベルでサポートされたことが確認できます。仮にこの雲を下抜けするようだと、1月下旬以来のこととなり、日足でのトレンド転換の可能性が高まることから重要なポイントだと見ています。本日もNY株の大幅安を受け、日経平均株価の大幅下落は避けられない状況かと思いますが、すでに日経平均は下げを先取りしており、展開によってはそれほどの下げを見せないことも考えられます。
ドル円は109円~109円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大幅なドル安が進み、109円07銭まで売られる。米国でコロナの再拡大懸念が広がりリスク回避の流れが急速に広がった。ユーロドルではドル安の勢いは限定的。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-07-20 09:45