【為替本日の注目点】パウエル議長、年内縮小が適切との認識を示す

ドル円はパウエル議長の講演内容を受け反落。110円26銭近辺まで買われていたが、議長のややハト派的な発言を受け109円78銭までドルが売られる。ユーロドルも講演直前の1.1735近辺から急反発。1.1802までドル安ユーロ高が進む。株式市場は3指数が揃って上昇し、ナスダックとS&P500は最高値を更新する。S&P500は初の4500ポイント台に。債券は反発。長期金利は1.30%台へ低下。金は大幅に上昇。原油もハリケーン「アイダ」が米南部へ上陸したことから大幅高。 7月個人所得                →  1.1% 7月個人支出                →  0.3% 7月PCEコアデフレータ          →  3.6% 8月ミシガン大学消費者マインド(確定値)  →  70.3 ドル/円  109.78 ~ 110.26 ユーロ/ドル 1.1735 ~ 1.1802 ユーロ/円  129.37 ~ 129.74 NYダウ  +242.68  → 35,455.80ドル GOLD +24.30 → 1,819.50ドル WTI  +1.32 →  68.74ドル  米10年国債 -0.042 → 1.307% 【本日の注目イベント】 独   独8月消費者物価指数(速報値) 欧   ユーロ圏8月消費者信頼感(確定値) 欧   ユーロ圏8月景況感指数 英   ロンドン市場休場(バンクホリデー) 米   7月中古住宅販売成約件数 加   カナダ4-6月期経常収支  注目されたパウエル議長の講演は、終わってみれば大きな動きにはつながらず、拍子抜けした印象でした。ドル円は講演開始前には110円26銭まで買われる局面もありましたが、講演を境に下落に転じ再び元の鞘に収まった感じです。ユーロドルは講演後、ドル売りユーロ買いが活発となり、約2週間ぶりに1.18台まで買い戻されました。  パウエル議長はオンライン形式の講演で、テーパリングについて、「年内に開始するのが適当だろう」と述べ、インフレ目標に向けて、「一段と顕著な進展」を遂げるという基準を満たしたと指摘し、労働市場についても、「明確な進展」を遂げたと思うと述べました。また7月のFOMCでも、大半の参加者が資産購入の縮小を年内に開始することが適切との認識を示し、「私自身もその一人だった」ことを明らかにしています。一方でリスクも指摘しており、「5%の失業率は依然として高すぎる」と述べ、「デルタ変異株の感染もさらに拡大した。われわれは、今後入手するデータと変化するリスクを慎重に見極めていく」と語っています。筆者が先週末の予想で「パウエル議長は慎重だ」と記述しましたが、全体的に見れば、ハト派寄りの慎重な内容に終始したと言えるものでした。その結果、ドルが売られ債券と株、金(きん)が買われています。  テーパリングについて年内開始が適切だと言う一方、今後のデータを見極める必要があるといった慎重な姿勢を示したことで、9月の正式なテーパリング開始宣言は事実上無くなったと考えられ、11月か12月のFOMCで言及する可能性が高まったとみています。筆者は当初より、11月にテーパリングを宣言し、2022年より開始と予想していましたが、どうやらその可能性がさらに高まったとみられます。ただ今週末に発表される「8月の雇用統計」の結果が100万人を大きく超えるようなサプライズであったら、宣言が早まることもあり得るかもしれません。  ドル円にとっては金利上昇という強い味方の到着が見越せなくなったことで、今後やや上値が抑制される展開も予想されます。テーパリングが開始されたとしても、それが直ぐに利上げにはつながらないということです。パウエル議長も、「見込まれる資産購入縮小のタイミングとペースは、利上げ開始時期に関する直接的なシグナルを送ることを意図してするわけではない。利上げ開始については、われわれは異なった、そして一層厳しい基準を明確にしている」と、慎重な言い回しをしています。  デルタ変異株の感染拡大も今後の大きなリスクですが、アフガニスタンでのテロ攻撃も今後の米国の出方次第ではリスクかもしれません。カブールの空港近くで起きた自爆テロで13人の兵士を失った米国は、直ちにバイデン大統領がホワイトハウスでコメントを発表し、これまでにない強い口調で、「われわれは許さないし、忘れない。必ず見つけ出し、報いを受けさせる」と語りましたが、その言葉通り、米軍はISの首謀者と見られる2人を攻撃し、殺害したことを発表しました。サリバン大統領補佐官は、過激派組織「イスラム国」系勢力を標的とする攻撃を継続すると述べ、「大統領はISホサラン州(IS-K)に代償を支払わせるために何でもする」と述べています。(ブルームバーグ)  ジャクソンホールが終わり、これで次の市場の関心は今週末の雇用統計に移ります。結果次第ではまだ混乱があろうかと思いますが、109円―111円の鉄板レンジがなかなか抜け切れないのではとの観測も高まりつつあります。しかし、そんな時こそ注意が必要です。安心しきってはいけません。 本日のドル円は109円50銭~110円20銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円はパウエル議長の講演内容を受け反落。110円26銭近辺まで買われていたが、議長のややハト派的な発言を受け109円78銭までドルが売られる。(イメージ写真提供:123RF)
economic,gaitameonline,gaitamedotinterview,fxExchange
2021-08-30 09:45