【為替本日の注目点】米8月非農業部門雇用者数予想を大きく下回る

ドル円は110円近辺から反落。8月の雇用統計で雇用者数が予想を大きく下回ったことで、緩和縮小判断に影響が出るとの見方からドルが売られた。ユーロドルは続伸。6月29日以来となる1.1909までドル安ユーロ高が進む。株式市場は景気敏感株が売られ、大型ハイテク株が買われた。ダウは74ドル下げ、ナスダックは3日連続で最高値を更新。米景気に対する懸念から債券は反落。長期金利は1.32%台に上昇。金は反発し、原油は反落。
8月失業率 → 5.2%
8月非農業部門雇用者数 → 23.5万人
8月平均時給 (前月比) → 0.6%
8月平均時給 (前年比) → 4.3%
8月労働参加率 → 61.7%
8月ISM非製造業景況指数 → 61.7
8月マークイットサービス業PMI(改定値) → 55.1
8月マークイットコンポジットPMI(改定値) → 55.4
ドル/円 109.59 ~ 109.96
ユーロ/ドル 1.1866 ~ 1.1909
ユーロ/円 130.18 ~ 130.74
NYダウ -74.73 → 35,369.09ドル
GOLD +22.20 → 1,833.70ドル
WTI -0.70 → 69.29ドル
米10年国債 +0.039 → 1.322%
【本日の注目イベント】
独 独7月製造業新規受注
米 NY市場休場 (レーバーデー)
米 失業保険の上乗せ給付期限切れ
米 米国防長官、カタール訪問
先週水曜日のADP雇用者数に続き、8月の雇用統計では非農業部門雇用者数(NFP)が市場予想の「73.7万人」を大きく下回る「23.5万人」でした。予想を大きく下回る結果に、FRBが年内に債券購入を縮小させるかどうかの判断を難しくさせるのではないかといった見方が浮上し、債券が売られ金利は上昇しました。ドル円は109円台半ばまで売られ、ユーロドルでは1.19台までドル安・ユーロ高が進みました。テ―パリング開始時期が遅れるのではないかとの懸念がドル売りにつながったようです。
確かに、今回の数値は速報段階ですが、ADPと雇用統計でのNFPが予想を大きく下回ったことは、驚きです。デルタ変異株の感染拡大がすでに消費活動を抑制しており、企業のオフィス復帰計画の妨げにもなっています。こうした状況で雇用主は採用に一段と慎重になり、一部労働者が他の人と接触する機会の多い仕事を敬遠している可能性があると、ブルームバーグは分析しています。今回の雇用統計の内訳でも、娯楽・ホスピタリティー業界の雇用者数は前月比横ばいで、レストラン・バーの雇用者が4万2000人減少でした。また、建設業、小売業、政府機関、ヘルスケア関連の雇用も減少しています。デルタ変異株の急激な感染拡大が消費や雇用を通じて米景気そのものを悪化させる可能性があるとの声も出てきました。
しかし、今回の雇用結果だけで米景気の減速を判断するのはやや早計かと思われます。8月分のNFPは増加傾向が大きく鈍化しましたが、7月分と6月分はともに、上方修正されています。7月分は「94.3万人」から「105.3万人」に、6月分は「93.8万人」から「96.2万人」へと上方修正され、その合計は13.4万人にものぼります。特に7月分は「100万人の大台」を大きく超えています。また失業率も2020年3月以来の低水準で、コロナパンデミック以降最低です。さらに言えば、毎週発表される新規失業保険申請件数も減少傾向を示しています。今回の期待外れの雇用統計を受けてバイデン大統領は、「これまで実施してきた措置により、米国は経済の急降下から抜け出した。雇用は増えつつあり、失われていない」と強気の発言を行っています。
言えることは、9月のFOMCでのテーパリング開始に関する言及がなされる可能性はほぼなくなったということと、そもそもパウエル議長は数回の雇用統計の結果を見極めたいと述べていたこともあり、8月だけではなく9月の雇用統計の結果も見極める必要があったということです。連邦政府が失業給付金に上乗せする特別加算(週300ドル=3万3000円)は9月4日に期限切れとなっています。手厚い上乗せが無くなったことで、多くの人は本確的に仕事探しに奔走することが予想されます。また、米国では8月から新学期が始まったことも、人々が外に仕事を求め易くなったと考えられ、雇用に好影響を与える材料になります。デルタ変異株の感染状況をしっかりと見極める必要があることは当然ですが、10月に発表される「9月の雇用統計の結果」が政策判断に大きく影響することになります。
ドル円は110円台に乗せると押し戻される展開が続いています。一方株式市場の方では、ようやく日本株の上昇が話題になるほど上昇傾向を強めています。本日も日本株の上昇が予想され、株価の上昇はひとまず「リスクオン」ということになり、ドル円は底堅い動きを見せると予想しています。NY市場がレーバーデイで休場のため、大きな動きはないと思いすが、レンジ予想は109円40銭~109円90銭程度といったところでしょうか。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は110円近辺から反落。8月の雇用統計で雇用者数が予想を大きく下回ったことで、緩和縮小判断に影響が出るとの見方からドルが売られた。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-09-06 10:45