【為替本日の注目点】ECB、緊急債券購入のペース減速を決定

ドル円は110円台から再び反落。米景気への懸念から長期金利が低下し、ドル円は109円63銭まで売られる。ユーロドルはECBの決定を受け上昇する場面もあったが、1.18台半ばまで買われた後、前日の水準に落ち着く。株式市場は続落。ダウは151ドル下げ、4日続落。債券は続伸。長期金利は1.29%台まで低下。金は反発。原油は中国の戦略原油備蓄放出を材料に1ドルを超える下げに。
新規失業保険申請件数高 → 31.0万件
ドル/円 109.63 ~ 109.96
ユーロ/ドル 1.1805 ~ 1.1841
ユーロ/円 129.66 ~ 130.14
NYダウ -151.69 → 34,879.38ドル
GOLD +6.50 → 1,800.00ドル
WTI -1.16 → 68.14ドル
米10年国債 -0.041 → 1.297%
【本日の注目イベント】
独 独8月消費者物価指数(速報値)
英 英7月鉱工業生産
米 8月生産者物価指数
米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
ECBは政策委員会を開きパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の購入ペースを10―12月期(第4四半期)に減速させることを決めました。第2、第3四半期は月額800億ユーロ(約10兆4000億円)の購入を続けていましたが、これを新たに月額600億~700億ユーロに設定した模様です。ユーロ圏では直近の消費者物価指数が「3.0%」と、ECBの目標である「2.0%」を大きく超えており、政策メンバーの多くから「政策見直し」声が多く挙がっていました。これに対して「物価上昇は一時的である」と、慎重な姿勢を示してきたラガルド総裁でしたが、今回はそうした意見を受け入れ購入ペースの減速を決めたようです。
ラガルド総裁は会見で、「ユーロ圏経済の回復がますます進展している」と、購入を減速させても回復が続くことに自信を示しながらも、今回の決定は「テーパリングではない」と言明し、「PEPPを向こう3カ月について微調整する」と述べていました。この発言を受け、ユーロドルの上昇が抑制されています。ECBは3カ月ごとにPEPPの見直しを行っており、新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染次第では今後も続けて減速するかどうか不透明です。またインフレの脅威を巡る認識では政策メンバーの間で異なっており、緊急措置の終了方法と時期の議論は、まだ機が熟していないことも示唆していました。3カ月の購入ペースを決めたことで、「12月16日の会合がPEPPの先行きに関する重大な決定の場となる」と、ブルームバーグは伝えています。
カナダ、オーストラリアに次いでECBが債券購入ペースの減速を決めたことで、FRBの判断がますます注目されてきます。昨日も多くのFOMCメンバーがテーパリングを巡る発言を行いました。ボウマンFRB理事は米銀行協会向けのオンライン形式の講演で、「私が期待するようなデータが出てくれば、年内に資産購入縮小の過程に入ることは適切となる可能性が高い」と述べ、テーパリングに前向きな発言を行いました。質疑応答では、「私は入ってくるデータに勇気づけられていることに変わりはないが」、FOMC次回会合での「われわれの協議結果を事前に判断したくない」とも述べています。また、アトランタ連銀のボスティック総裁はダウジョーンズとのインタビューで、「夏の前半には強いデータが出ていたので、私は多くの予想よりも早期のテーパリング開始支持に相当傾いていた」と語っています。(ブルームバーグ)その上で、「最近の弱いデータはまだ幾らかの駆け引きがある可能性を示唆したが、私は今も年内のある時点が適切だと考えている」と付け加え、かなりタカ派寄りの発言を行っています。
一方シカゴ連銀のエバンス総裁はなお慎重な姿勢を示し、「昨年に経済活動が深刻かつ急激に落ち込んだ後、経済は力強く成長した。しかし、サプライチェーンや労働市場で広がるボトルネックが示すように、課題は山積している」と述べています。また自身の慎重な見方の理由として、「新型コロナウイルスの新たな変異株が全米で健康や安全性に影響を及ぼす中、全ての共通要素は引き続き不確実性が高いということだ」と指摘しています。労働市場にやや鈍化の傾向が見られ、デルタ変異株感染拡大の収束が見えない状況下でありながらも、FOMCメンバーの多くはテーパリング開始を支持しているのが現状です。エバンス総裁の発言は少数派に属するかと思いますが、11月のFOMCでのテーパリング開始に関する発表があることは、最早「既成事実化」していると言えます。今後金利は緩やかな上昇に向かい、ドルをサポートすると予想します。今週のドル円は一時110円45銭まで買われ、「上っ放れる」形を見せましたが、結局失敗に終わっています。再来週のFOMCまで膠着は続くかもしれません。
本日のドル円は109円30銭~110円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は110円台から再び反落。米景気への懸念から長期金利が低下し、ドル円は109円63銭まで売られる。ユーロドルはECBの決定を受け上昇する場面もあったが、(イメージ写真提供:123RF)
economic,gaitameonline,gaitamedotinterview,fxExchange
2021-09-10 10:30