本邦初! ブランディワインのバリュー株ファンド、一味違う運用戦略で銘柄を発掘する極意に迫る!

 株価が割安な時に購入し、市場がその価値を正しく評価した時に利益を得る「バリュー株投資」は、「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェット氏の投資手法として有名だ。ただ、ここ数年はアメリカのグロース株(成長株)人気の凄まじさに押されて旗色が悪かった。しかし、新型コロナのワクチン接種が進んだ昨年末あたりから、「行き過ぎたグロース株人気」への警戒感と相まって「バリュー株の復調」が言われている。ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントは、国内でもGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)をはじめとした多くの機関投資家に高く評価されるバリュー投資のエキスパートだ。三井住友DSアセットマネジメントが8月31日に設定した「ブランディワイン・グローバルバリュー株式ファンド」はバリュー株投資では初めて日本の個人投資家に紹介されることになった。同ファンドの魅力について、実質的な運用を担当するポートフォリオ・マネージャーのジム・クラーク氏と、三井住友DSアセットマネジメント投信営業部の塩出景子氏に聞いた。  ――ブランディワイン社は、1986年の創業から一貫してバリュー投資を専門にしているということですが、なぜ、バリュー投資に特化しているのでしょうか? クラーク 一般的に人々の行動は様々な感情により成り立っています。投資行動も同じです。バリュープレミアム(企業本来の価値と価格の差)は、投資家の基本的な感情の動きから生じるもので、常に市場に存在し、今後も存在し続けるものと考えています。そのため、バリュー投資こそが、長期的に優れたリターンの提供が可能な投資手法であると確信し、一貫してバリュー投資の研究を行い、実践的な経験を積み重ねてきました。当社は、トニー・ヒッチェルが最高品質の投資運用戦略を、誠実さと敬意を持って提供することを第一に考えデラウェア州で設立しました。米国大型株のバリュー運用でスタートし、現在では株式や債券、国内外の市場を問わず、バリュー・スタイル投資戦略を提供し続けています。  ブランディワインという社名は、アメリカ独立をかけた戦いの舞台となったデラウェア州を流れる美しい川、ブランディワイン川にちなんで名づけられました。創業以来、一貫してバリュー投資の哲学を変えることなく、運用プロセスの分析と改良を続ける当社の運用に対する姿勢は、社名に冠したブランディワイン川の脈々とした流れと同じだと例えて良いと思います。  ――ブランディワイン社は、GPIFが海外債券アクティブ運用で採用しているように、債券運用者として定評があります。実際に運用資産676億ドル(約7.43兆円)の過半は債券運用です。債券運用で優れた会社が行う株式のバリュー投資という点で、他とは異なる特徴があるのでしょうか? クラーク 私たちは、世界の変化に適応する能力をもっており、学習する企業文化もブランディワインの重要な能力だと考えています。  マクロチームにより導き出される世界中の金利、通貨、その他のマクロ要因についての分析結果を当社の株式運用にも活用しており、大きなメリットにつながっています。企業に投資をするということは、否応なく、その企業の国や通貨に投資することになります。ブランディワインは、企業のファンダメンタルリサーチにマクロ分析を活用することにより、他の投資家が見逃してしまうリスクや投資機会を見出すことができます。  また、当社の株式アナリスト・チームは多様なセクターのリサーチ経験を積み、多くの分析ツールに精通していますが、銘柄を選ぶ際にも、すべての国やセクターに投資をする必要はないと考えています。特定の国やセクターに縛られることなく、自由に最も良い銘柄に投資します。また、私たちは企業のビジネス内容が理解でき、強力なバランスシートを持っているにもかかわらず、過小評価されている企業を探し続けます。私は、25年間運用をしていますが、無借金の会社が経営破綻したことを見たことがないためバランスシートの質について妥協しません。そして、事業の質とリスクの両面から企業を深く研究します。また、経営陣と話をするときには、特に、リスクに関する考え方や資本配分の方法について注意深くヒアリングしています。 塩出 ブランディワイン社のバリュー株式の投資戦略は、トップダウンでマクロ的なカタリストがある国や、通貨や金利の見通しに基づいて投資先として有望な国やセクターを選び、そのうえでファンダメンタル分析を行い割安な銘柄をピックアップするというアプローチをとっています。  バリュー株投資は、参照する株式インデックスに採用されている銘柄の、株価指標や財務分析の結果を基にスクリーニングし、割安銘柄の投資対象を絞り込むことが一般的です。ブランディワイン社のように、国や通貨から丁寧にマクロ分析して割安なエリアを特定した上で、個別にファンダメンタルリサーチを行い銘柄選定する手法は他に例がなく、非常にユニークな存在だと思います。  ――ファンドの運用を理解するのに役立つような典型的な投資事例を紹介してください。 クラーク 英国の住宅建設会社に比較的大きく投資して何年も保有しています。この業界は一般的に収益性が高く、英国では一戸建て住宅が不足していると当社では考え、また、政府もそのように考えているのにも関わらず、投資家は長年にわたってこのセクターを悲観的に見ています。ベルウェイは、この業界では中堅ですが、負債がなく、将来の成長のために高い資本利益率で再投資しています。高い成長を続けているにも関わらず、PER(株価収益率)8倍で取引されていて、依然として割安だと考えています。  また、最近、韓国のLGに投資しました。韓国の経済回復と通貨は魅力的だと判断したからです。LGは持ち株会社で、3つの上場企業を保有しています。テレビや家電の世界的メーカーであるLGエレクトロニクス、化粧品と家庭用品メーカーであるLGハウスホールド&ヘルスケア、そして、世界第2位の電気自動車用バッテリーメーカーのLGケミカルです。LGケミカルは、当社が投資している企業の中で、最も高い利益成長を遂げている企業です。この傘下企業の時価を単純に合計すると1株当たり約28万ウォンになりますが、株価は9万5000ウォンしかありません。時価の30%相当です。一般に持ち株会社は過小評価される傾向にありますが、これほど大きなディスカウントになることはありません。  また、多くのバリューマネージャーは、1株当たり時価の50~70%程度だと割安と考えて保有しますが、30%台まで低下すると回避(売却)してしまう場合があります。我々は十分に分析を行い、魅力的な水準になったと考え購入しました。まだ、投資したばかりですが、非常に良いポイントで購入できたと考えています。  ――日本の投資家へのメッセージは? クラーク 日本のパートナーと協力して、バリュー投資の魅力を伝えていきたいと考えています。私は、1997年から運用を始めて、一貫してバリュー投資をしてきていますが、97年当時はバリュー投資が難しい環境で、多くのバリュー株ファンドが閉鎖されていました。それが、2000年のインターネットバブル崩壊によって物色の流れが変わり、4年以上にわたってバリュー株優位の相場になりました。現在は、この2000年当時の状況に似ていると考えます。バリュー投資は再び機能し始めていて、何年かに1度のチャンスになると考えています。 塩出 過去10年以上にわたって、株式市場ではグロース株が選好されてきました。このファンドで投資しているような銘柄群については、投資しても儲からない銘柄と思われるようになっています。しかし、今までとは全く違うアプローチにより構築されたポートフォリオだからこそ、これからの市場でチャンスをつかめるのではないでしょうか。今お持ちの資産の中に「ブランディワイン・グローバルバリュー株式ファンド」を組み入れていただき、これからの資産形成手段として多くの方々にご活用いただきたいです。(グラフは、「ブランディワイン・グローバルバリュー株式ファンド」と同様の戦略の運用戦略の2012年12月~2021年8月のパフォーマンス推移、国内ファンドの手数料等相当額を控除後)(情報提供:モーニングスター社)
「ブランディワイン・グローバルバリュー株式ファンド」の魅力について、実質的な運用を担当するポートフォリオ・マネージャーのジム・クラーク氏と、三井住友DSアセットマネジメント投信営業部の塩出景子氏に聞いた。(グラフは、「ブランディワイン・グローバルバリュー株式ファンド」と同様の戦略の運用戦略のパフォーマンス推移、国内ファンドの手数料等相当額を控除後)
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2021-10-01 17:30