市場に立ち続ける投資家の背中を支えてくれる「スマレバ」、分散投資とレバレッジ調整を徹底することで中長期での安定運用を実現

大和アセットマネジメントが設定・運用する「マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド(愛称:スマレバ)」は、2020年3月のコロナ禍の大幅な株価下落を軽微な調整で乗り切り、2019年11月の設定から2021年7月末まで設定来のトータルリターンが13.82%、過去1年は同10.85%と安定した収益を積み重ねている。マン・グループ東京支店の大石佳敬ジェネラル・マネジャー(写真:左)に同ファンドの運用戦略について、大和アセットマネジメントの商品企画課長である大久保智弘氏(写真:右)に同ファンドの活用法について聞いた。(マン・グループは、同ファンドの主要な投資先である外国籍ファンドの運用会社です。)
――「スマレバ」は、今年4月以降には3カ月間で7.69%の上昇と良好なパフォーマンスの割に、基準価額の日々のブレ幅が小さいように見えます。なぜ、このような運用が可能なのでしょうか?
大石 スマレバで用いられている運用戦略は、世界の株式、債券40市場に分散投資を行い、ポートフォリオの目標ボラティリティ(変動率)が年率10%程度になるようにリスク管理に焦点を当て、リスク調整後リターンの最大化をめざしています。具体的には、システムが、世界の40市場を24時間休みなくモニタリングすることによってそれぞれの市場のリスクの状況を把握します。それらの状況に照らして、ポートフォリオ全体のリスク水準が一定となるように、それぞれの市場への投資配分やレバレッジを日々機動的に調整しています。レバレッジを活用していると聞くとリスクが高いとイメージされる方が多いのですが、それはレバレッジを使う目的が、高いリターンを狙うことにあるからかもしれません。しかし、当戦略の場合は状況が少し異なります。当戦略にとって、レバレッジの活用はリスクをコントロールするための手段です。レバレッジをかけっぱなしにするのではなく、市場のリスクの状況によりレバレッジ比率を調整しています。良好なパフォーマンスの割に、日々の基準価額のブレ幅が小さいと感じて頂いている背景には、こうしたシステムによる日々のリスクコントロールの存在があります。
例えば、当戦略では、スマレバが設定された2019年11月から2021年7月までの投資配分比率(レバレッジ)の推移を見てみると、高い時は320%程度となっていますが、低い時は30%以下に抑えているといったかたちで、市場環境によって大きく動かしていることがわかります。こうした調整の最大の目的は、ポートフォリオ全体のリスクの水準を一定に保つことです。リスクを取り過ぎてしまうと、運が良ければ高い利益が得られるでしょうが、悪ければ大きな損失が発生します。つまり、「山高ければ谷深し」という投資の格言にもあるような状態になってしまいます。当戦略では、リスクを徹底的にコントロールすることで、中長期でみてなるべく大きな谷を避けていく、といった運用を目指しています。ちなみに、本戦略では、こうしたリスクコントロールの効果もあり、2020年3月のコロナショックの時には、ポートフォリオのレバレッジを約8割削減することで、株式市場が30%程度も下落する中で、ポートフォリオの下落率を9.6%に抑えることができました。
このように、当戦略では、中長期での安定的なパフォーマンスの獲得を目指していきます。このため、2021年7月末時点で過去3カ月のトータルリターンが7.69%だったという短期的な結果にフォーカスをして頂くよりも、より長い目線での評価をしていただくと本戦略の良さをよりわかっていただけるのではないかと思います。
――日々のリスクの調整について具体的に教えて下さい。
大石 当戦略では、約40市場の株式や債券の先物を売買することで運用ポートフォリオを構築しています。投資対象の世界の40市場は、それぞれに毎日の価格変動がありますが、こうしたデータを収集し、少なくとも1日1回最適なポートフォリオを計算します。ただし、最適なポートフォリオが計算できたとしても、その時点で世界の全ての市場が開いているわけではないので、すぐにポートフォリオの再構築ができるわけではありません。そこでシステムは、それぞれの市場が開くのを待ち、それぞれの市場について細かく監視し、AI(人工知能)もフル活用して市場の状況を学習することで、コストも抑えながら実際の売買を行っていきます。こうした地道な作業を、システムは毎日毎日ひたすら繰り返しています。なお、このシステムは、マンAHLが、30年以上の研究・開発、そして経験によって作り上げてきた独自のものとなります。
また、日々のリスク水準の調整に加えて、当戦略では市場の下落局面に備え、2つのブレーキ機能を有しています。1つは、本来であれば分散投資効果が期待される株式市場と債券市場が、両方とも同時に下落する局面で発動されるブレ―キです。
この第1のブレーキは、株式市場と債券市場の相関係数を10分毎に計算し、その結果が統計的な異常を示した場合にブレーキがかかり、最大でポートフォリオの資産配分比率を50%圧縮します。このブレーキは、マンAHL社と英オックスフォード大学との共同研究がベースとなっている独自の機能です。
もう一つの第2のブレーキは、組み入れ資産に下落トレンドが続いている場合に、その資産の組入れ比率を落とす機能です。資産のトレンド察知には、30年以上にわたりマンAHL社が行ってきたCTA(コモディティ・トレーディング・アドバイザー)運用において培ってきたシグナルを活用しています。
当戦略では、通常のバランス型戦略と比較するとより機動的に資産配分、レバレッジ比率を調整することから取引頻度は多くなります。しかしながらマンAHL社には先ほど述べたように長年の研究開発の中で培われた自動売買のための取引執行システムがあります。これにより取引コストを抑えることができるからこそ、機動的な資産配分、レバレッジ比率の調整が効率的に行えるわけです。
――「スマレバ」が採用する戦略の類似戦略である「AHLターゲットリスク戦略」は21年7月末現在で、過去3年間の年率トータルリターンが13.25%、リスクが8.53%、また、過去5年間の年率トータルリターンが11.85%、リスクが7.87%になっており、この戦略を採用しているファンドの中で最も運用歴が長いファンドは、当社モーニング・スターの英国拠点の評価も最高位の5つ星となっています。「スマレバ」の中長期のリスクとリターンは、このようなイメージで考えればよいのでしょうか?
大石 「AHLターゲットリスク戦略」は、当戦略より広範囲の資産クラスを投資対象としているものの、同じリスク管理とブレーキ機能を活用していますので、当戦略の参考指標と考えていただいて良いと思います。ただし、「AHLターゲットリスク戦略」も当戦略も目標リターンは設定していません。これは市場の短期的なリターンを予測することは困難であり、結果として当戦略のリターンを予測することや、それを直接コントロールすることはできないと考えているためです。だからといって、何もできないわけではありません。リスクについてはコントロールが可能です。また、分散投資もパフォーマンスを安定化させるための有効な手段でしょう。当戦略では、分散投資およびリスクコントロールに徹することで、中長期での安定的な運用を目指していきます。
資産運用においては、日々の価格変動に翻弄されてハラハラ・ドキドキしてしまうという方も少なくないのではないでしょうか。しかし、その価格変動のブレ幅を抑えることで、落ち着いて中長期での資産形成が可能になるのではないかと思っています。もちろん、リスク水準を一定に保つことは容易ではありません。当戦略では、それをシステムの力を借りて実現していきます。そのシステムを作っているのが、マンAHL社です。マンAHL社は、システム運用の先駆者であり、かつ、専門の技術者集団として100名近い研究員を抱え、日夜研究・開発に努めています。こうした研究・開発が当戦略も含めた運用システムを支えています。また、こうしたシステムは、世界の複数の場所にバックアップを用意することで継続的な運用という観点での頑健性も確保しています。
大久保 市場は日々変動しますし調整局面は今後もあるでしょう。こうした中で、日々の市場の動きに翻弄されず、システム運用を行うスマレバの存在意義は大きいと考えます。
――当ファンドを資産運用に取り入れるにあたって、具体的な利用方法についてアイデアはありますか?
大久保 当ファンドは、そもそも機関投資家向けの運用商品として企画し、私募ファンドとして投資していただいておりました。その安定的なパフォーマンスを一般の個人投資家の皆様にも提供したいと考えて公募ファンドとして2019年11月に設定しました。ファンド名が「スマート・レバレッジ戦略ファンド」と、「レバレッジ」がついていますが、大石さんにご説明いただいたように、このレバレッジは「リスク量を調整」するために使われています。リターンを2倍、3倍にするためのレバレッジ戦略とは性質が異なることを、ご理解いただきたいと思います。
設定来のパフォーマンスを見ていただいても分かる通り、コロナショックと、その後の株価の急回復という大きな変動があったにもかかわらず、概ね安定した右肩上がりのパフォーマンスになっています。どのような環境であっても日々リバランスを行うことで、安定したパフォーマンスを狙っていく戦略であるため、投資のタイミングを考えなくて良い「コア資産」になるファンドだと思います。
また、当ファンドは信託報酬率を実質2.1875%程度としていますが、過去65営業日の分配金再投資基準価額の騰落率が2%未満という当ファンドがめざす10%程度のリスクに見合う収益を下回る場合は、実質1.6375%程度に引き下げます。
マンAHL社のリスクコントロール戦略(当戦略および類似戦略の総称)は、2021年3月末に約1兆3,000億円の残高だったものが、21年6月末には1兆5,500億円に拡大するなど、世界の機関投資家(主に銀行や年金)をはじめ世界的に評価が高まっている戦略です。
資産形成で成功するためには、中長期でリスクを取り続けることが重要だといわれますが、不確実性の中で変化し続ける市場に立ち続けるためにも「スマレバ」は投資家の皆様の貴重な戦力になると思います。長期の資産形成のコアファンドとして「スマレバ」をご活用いただければ幸いです。(情報提供:モーニングスター社)
「マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド(愛称:スマレバ)」の運用戦略についてマン・グループ東京支店の大石佳敬ジェネラル・マネジャー(写真:左)に、同ファンドの活用法について大和アセットマネジメントの商品企画課長である大久保智弘氏(写真:右)に聞いた。
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2021-10-07 10:00