フィデリティ「テンバガー・ハンター」は1年半で2倍化の好発進、30年以上にわたって磨かれた投資哲学とは?

 「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」は、文字通り「テンバガー(株価10倍化)」になるような銘柄を発掘して投資する究極の「目利き力」による運用を行っている。運用責任者のジョエル・ティリングハスト氏は、「元祖テンバガー・ハンター」といわれるピーター・リンチ氏からも「極めて優れたストックピッカー」というお墨付きを得たフィデリティの看板ファンドマネジャーの1人だ。ファンドの運用成績は、運用開始からわずか1年半で、基準価額が2倍以上になる好スタートをきった。同ファンドについてフィデリティ投信シニア・プロダクト・ストラテジストの藤原嘉人氏(写真)に聞いた。  ――ファンドは2020年3月の設定から約1年半で、基準価額が2万1000円を超えています。なぜ、これほど優れた成績があげられたのでしょう?  当ファンドでは、リード・ポートフォリオマネジャーであるジョエル・ティリングハストの投資哲学である「感情的ではなく、忍耐強く、合理的に投資する」、「流行に左右されずに強い事業に投資する」、「人気銘柄を避け、割安銘柄に投資する」――この3つを実践しています。しっかり成長できる企業の株式を、独自に発掘し、市場がその魅力に気付く前に割安な価格で購入し、市場が正当に評価するのを待つということが基本的な投資戦略です。  ただ、その時々の市場環境に応じて、柔軟に投資銘柄を選ぶ視点を変えています。たとえば、2020年3月の設定時は、新型コロナ感染拡大で先行き不透明な環境でしたので、銘柄選定にあたっては「この困難な環境を乗り越え成長が期待される企業」を厳選しました。その後、ワクチンが開発され、その接種が進んで経済の正常化が進む中にあって、銘柄選択の視点は、「事業が好調で財務体質が優良、景気に敏感、もしくは、長期に成長が期待できる、かつ大きく出遅れた割安な成長株」へとシフトしました。  今後も感染状況など紆余曲折があると思いますが、経済の正常化、金融政策の正常化ということが展望され、企業の成長は、領域がより幅広くなっていくことが展望されます。現在は、投資領域を多極化する局面であると考えています。  ――このファンドと同様の戦略である「フィデリティ・ロープライス・ストック・ファンド」は、1989年12月の設定で、2021年9月末までに基準価額が約55倍になっています。同じ期間に米NASDAQ総合指数は約32倍ですから、長期にわたって優れた運用成績が残しています。その理由は?  今年6月に、米国モーニングスターからティリングハストは「Investing Excellence Awards」というアワードの中の「アウトスタンディング(卓越した)・ポートフォリオマネージャー」を受賞しました。特定のアセットクラスのポートフォリオマネジャー(PM)ということではなく、広いアセットクラスの中で優れたPMとして認めていただいたことは、本人も極めて栄誉なことと感じています。このジョエルの優れた企業選択の能力が一番の理由です。  アワードの受賞にあたってモーニングスターから「ジョエルは持続力のある企業を探している。流行を追わず、経営者の誠実さや能力を吟味している。このように、忍耐強く、リスクを意識したアプローチが、安定した収益、抑制されたボラティリティ(価格変動率)、優れたダウンサイド・プロテクション(下落時の下落率抑制効果)等によって、リスク調整後のリターンは一貫して好調を維持している」というコメントをいただきました。ジョエルの運用を客観的に評価していただいていると思います。  また、長期で見たときに、ファンドは「ITバブル」、「リーマン・ショック」、「コロナ・ショック」といった数々の危機を乗り越えてきました。設定来のリスクリターン特性は、リスクはグローバル株式とほぼ同じ、リターンはしっかり市場平均より高いという特性を実現しています。また、市場追随率は、市場の上昇時には100%を超えてしっかり追随する一方、下落時には市場下落率の80%近辺の下落に止めています。この実績は、注目度は低いが、クオリティの高い企業を発掘し、それも多数発掘してきた結果だと思います。  ――ティリングハスト氏は、運用経験30年超の大ベテランですが、そのノウハウはファンドの運用チームに受け継がれているのですか?  ジョエルをリードPMとして、3人のPMがジョエルを支えています。この3人のPMに運用ノウハウは日々の投資判断の積み重ねの中で引き継がれています。実際に、投資アイデアは、この3人のPMからふんだんに出ていますし、投資判断もジョエルと共有しながらやっています。最近の実態としては、3人のPMは、ジョエルとほぼ一致する投資判断ができるまでになっています。  実は、現在の運用チームは、6カ月間以上にわたってジョエルなしで、ジョエルと変わらない投資判断を行った経験があります。2011年3月の東日本大震災の時に、ジョエルは東京にいました。その未曽有の災害を体験し、ジョエルは思うところがあると言って6カ月にわたる長期休暇を取りました。その際に、復帰したジョエルも得心がいくほど、しっかりと運用ができていました。それから10年以上が経過し、チームの運用力はさらに磨きがかかっています。  ――設定から1年半で2倍以上に上昇したファンドに、これから投資していくのは遅すぎるのではないでしょうか?  経済の正常化が進む中で企業業績は2022年以降にかけて引き続き成長が展望されます。従って、ファンダメンタルズ的には追い風が続きます。そういった中で、テンバガーが期待される銘柄は、まだまだ多数あるというのが運用チームの見立てです。  政策、金融の舵取りなどは、市場に大きく影響しますが、残念ながらそれを完全に予見することはできません。一方で経済が正常化し、企業の業績が株価により反映しやすくなるという相場環境が展望されると、企業業績の株価へのインパクトが大きくなります。ストックピッカーの「目利き力」が、パフォーマンスにも反映されやすくなると期待いただけると思います。むしろ、これからが、当ファンドの実力が発揮される局面になると思います。長期の資産形成の有力な手段として、当ファンドをご検討ください。(情報提供:モーニングスター社)
「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」についてフィデリティ投信シニア・プロダクト・ストラテジストの藤原嘉人氏(写真)に聞いた。
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2021-10-26 10:30