【為替本日の注目点】米10月非農業部門雇用者数は53.1万人

10月の雇用者数が市場予想を上回り、発表直後はドルが買われ、114円台に乗せたがその後失速。米長期金利が1.43%台まで低下したこともあり、113円30銭までドル安が進む。ユーロドルは続落し、2020年7月以来となる1.1514を示現。株式市場は雇用者の上振れを好感し、3指数が最高値を更新。インフラ法案が可決したことも材料視され、ナスダックとS&P500は7営業日連続で最高値を更新する。債券は続伸。長期気金利は一時1.43%台まで低下し、1.45%台で取り引きを終える。金と原油は揃って大幅に反発。
9月消費者信用残高 → 29.91b
10月失業率 → 4.6%
10月非農業部門雇用者数 → 51.3万人
10月平均時給 (前月比) → 0.4%
10月平均時給 (前年比) → 4.9%
10月労働参加率 → 61.6%
ドル/円 113.30 ~ 114.03
ユーロ/ドル 1.1514 ~ 1.1573
ユーロ/円 130.81 ~ 131.43
NYダウ +203.72 → 36,327.95ドル
GOLD +23.30 → 1,816.80ドル
WTI +2.46 → 81.27ドル
米10年国債 -0.075 → 1.451%
【本日の注目イベント】
日 9月景気先行指数(CI)(速報値)
日 日銀金融政策決定会合における主な意見(10月27、28日分)
中 中国共産党、6中総会(11日まで)
米 パウエル・FRB議長、会議冒頭で挨拶
米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
米 クラリダ・FRB副議長、オンラインイベントで講演
米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁講演
米 ボウマン・FRB理事講演
今回の雇用統計については、筆者は強気でしたが、やはり10月の非農業部門雇用者数は「53.1万人」と、市場予想を上回っていました。さらに9月分と8月分も大幅に上方修正され、この2カ月分だけで約25万人の上乗せでした。また失業率も前月よりも0.2%改善し「4.6%」と、米国で新型コロナウイルスのパンデミックが始まった2020年3月以来の低水準となり、米労働市場は着実に改善傾向を示しています。今年9月から失業保険の加算が終了したことで、人々が本格的に職探しに奔走しているようですが、市場が「売り手市場」であるため、より賃金が高く、条件の良い仕事が見つかるまで就職することを我慢する人も多くなっているとの報告もあります。実際平均時給を見ても、年率で「4.9%」上昇しており、今年4月の「0.4%」をボトムに上昇傾向を維持しています。
雇用統計の結果を受けドル円は直後に114円台に乗せる場面もありましたが続かず、その後は株高、債券高を背景に113円30銭までドル売りが進みました。本来ならドルがもう少し買われても良かったと思いますが、株価の上昇以上に長期金利が低下したことが、利益確定のドル売りを誘ったようです。株式市場では3指数が揃って最高値を更新し、10月下旬からこれで何度「最高値更新」の文字が本欄を飾ったことでしょう。早ければ2022年夏にも利上げが見込まれる状況下でも株価は「どこ吹く風」とばかり、上昇を続けています。大量の待機マネーが相場を押し上げているのは分かりますが、下げに転じた際の下落幅が相当大きくなることは想像に難くありません。
足元のインフレについて「長期のインフレになるとは少なくとも今は思えないが、こんな状況は何十年も起きていない」と、元FRB理事のクロズナー氏は述べています。(11月8日、日経新聞)またカンザスシティー連銀のジョージ総裁は会合で、「サプライチェーンが正常化し、需要が弱まるにつれ、インフレはいずれ落ち着くと想定するのが妥当だが、高いインフレが長期化するリスクが高まったことも同様に明白だ」と指摘し、「こうしたインフレ圧力を前に、辛抱強くなれるとの主張は説得力が薄れた」と述べ、パウエル議長の言葉に異を唱える姿勢を見せています。
米下院は5日夜、バイデン政権の提唱するインフラ包括法案を可決しました。道路や橋、公共交通などの整備に5500億ドル(約62兆4000億円)を投じる内容で、下院での採決を巡っては民主党進歩派と穏健派の対立で数カ月にわたって法案が未決状態でした。これでバイデン大統領の署名を持って成立することになりますが、ブルームバーグは「支持率低下にも見舞われていた大統領にとって勝利を意味する」と分析しています。ただ、バイデン大統領とペロシ下院議長にとってはもう1本の柱である1兆7500億ドル余りの税制・支出法案の採決には至っておらず、今後の政策実施については不透明であることには変わりはありません。
ドル円はこのところ続いているレンジの下限近くまで売られましたが、焦点は113円を割りこむことが出来るかどうかといった点です。仮にここを明確に割り込むようだと、ドル高基調が続く中でも一旦ドルの下値を試しに行く可能性もあるのではないかと予想しています。113円から115円、さらに厳密に言えば、113円20銭から114円60銭のレンジが続いています。今回のFOMCでもFRBの利上げ姿勢は慎重でした。一方で、市場の利上げ観測は前倒し傾向にあります。FRBが後手に回って利上げを急ぐことになるのか、あるいは格言通り「FRBにはさからわない方が良かった」ということになるか、ドル円の水準もそれによって変わってきます。
本日のドル円は113円~113円80銭といったところでしょうか。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
10月の雇用者数が市場予想を上回り、発表直後はドルが買われ、114円台に乗せたがその後失速。米長期金利が1.43%台まで低下したこともあり、113円30銭までドル安が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-11-08 10:00