【香港IPO事情】11日に上場予定の鴻承環保科技が上場延期、改善されない初値状況に慎重姿勢強まる

 11月11日に新規上場を予定していた鴻承環保科技(02265)が上場延期を発表した。同日に上場を予定していた安能物流(09956)は公開予定価格の下限で公開価格を決定し、予定通り上場する見通し。11月になって新規上場の銘柄数は増えているものの、新規上場する企業の初値が公開価格を上回ることがなく、公開後に株価が下落するという展開が続いている。市場の大きな懸念材料である中国恒大(03333)の存続問題も重石となっていることから、香港での新規上場は厳しくなっている。  香港の新規上場は、今年8月以来、1カ月当たりの上場銘柄数を3~4銘柄に限定して継続されてきた。新規上場する企業も、医療関係を中心に、早期の資金調達需要が強い企業群に絞られていた。しかし、市場の環境は厳しく、8月24日に上場した血管バルーンの先瑞達医療(06669)は初値が公開価格を23%も下回り、9月29日上場のバイオ医薬品の創勝集団(06628)はマイナス18.75%、8月20日上場の神経医療機器メーカーの心イ医療(06609)はマイナス17.34%と厳しい初値状況が続いていた。これらの企業は、前評判が高く、公開価格も公募レンジの上限で決まっていたが、11月5日に上場した眼科系診断機器の鷹瞳科技(02251)は公開価格を公募レンジの下限以下に設定したにもかかわらず、マイナス5.45%という初値になった。  11月には鷹瞳科技(02251)の他に、12日までに8銘柄の新規上場が予定されていた。上場企業の業種も、医療関係だけではなく、ネット広告や物流企業、家庭用品メーカーなどに広がって、上場市場の正常化に近づいていることが感じられたが、上場時の初値状況は厳しいままだった。11月2日に上場した外科ロボットの微創機器人(02252)は前評判が高く公募レンジ上限で公開価格を決定したものの初値は公開価格比7.87%マイナスになった。11月5日上場の鷹瞳科技(02251)以降は、公開価格を公募レンジの下限に設定しているが、公開価格と同値で初値をつけ、その後に株価が下落するというパターンを繰り返している。  このような厳しい状況を踏まえて鴻承環保科技(02265)は上場を延期したものと考えられる。同社は金鉱の有害廃棄物処理で中国トップ企業であり、環境保全意識の高まりから、今後の成長が期待される企業だ。一方、貨物物流のトップ企業である安能物流(09956)は、10日に同業の京城佳業(02210)が無事に上場を果たしたことから、予定を変更しなかったと考えられる。現在のところ、12日上場予定の日用品メーカーの貝特集団(01491)までの予定が明らかになっているが、その後の発表は途絶えている。当面のIPOは、慎重な判断で進められることになろう。(イメージ写真提供:123RF)
11月11日に新規上場を予定していた鴻承環保科技(02265)が上場延期を発表した。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-11-10 13:15