【為替本日の注目点】ドル円は115円テストに失敗し大幅反落

東京時間の朝方114円97銭まで買われたドル円はその後じり安となり、NYでは大きく売られる。米長期金利が低下したことや、軟調な経済指標の発表を受け一時は114円を割り込む。ユーロ圏では新型コロナウイルス感染の再拡大が続いていることもあり、ユーロを売る動きは止まらず。ユーロドルは一時1.1294まで続落。株式市場は3指数が大幅に反落。ダウは211ドル下げ、ビザの下落が全体の下げをけん引。債券は反発。長期金利は1.59%前後まで低下。金は反発。原油は2ドルを超える下げで一気に78ドル台に。バイデン大統領がガソリン市場の調査を米連邦取引委員会(FTC)に要請したことも重荷に。 10月住宅着工件数     →  152.0万件 10月建設許可件数     →  165.0万件 ドル/円  113.94 ~ 114.77 ユーロ/ドル 1.1294 ~ 1.1327 ユーロ/円  129.03 ~ 129.81 NYダウ  -211.17 → 35,931.05 GOLD +16.10  →  1,870.20ドル WTI  -2.40  →  78.36ドル   米10年国債 -0.045 → 1.589% 本日の注目イベント トルコ 中銀政策金利発表 米   新規失業保険申請件数 米   11月フィラデルフィア連銀景況指数 米   10月景気先行指標総合指数 米   米・カナダ・メキシコ首脳会議(ワシントン) 米   ボスティック・アトランタ連銀総裁講演 米   エバンス・シカゴ連銀総裁、Q&Aに参加 米   ウィリアムズ・NY連銀総裁講演  ドル円は難しい展開でした。昨日の朝方には、前日のNY市場でのドル高を受け114円97銭までドルが買われ、「115円テストは時間の問題」かと思われましたが、その後は実需のドル売りに押され、軟調に。NYでは米長期金利が低下したことや、住宅着工件数が予想を下回ったことで、株価が大きく下げ、リスク回避の流れが強まったことでドル円は大きく売られ、113円94銭まで押し戻されました115円前後では実需のドル売りが集まり易く、抜け切るには簡単ではないと思ってはいましたが、東京での高値から1円も押し戻されたことにやや驚きも感じています。これで市場には「115円台は重い」といった印象が強く残されたことになります。世界的にインフレ懸念が強まり、米金融当局は早ければ2022年後半にも利上げを迫られる可能性があるため、「ドル高シナリオ」は変わってはいませんが、115円を超えて上昇するには想定以上に時間がかるかもしれません。  そのインフレが加速している元凶の一つに原油価格の高騰が挙げられますが、昨日のNY原油先物市場ではWTI原油価格が前日比2ドル36セント下げ、一気に78ドル台まで売られ、6週間ぶりの水準を付けました。原油価格の高騰を背景に米政府が備蓄原油を放出するといった根強い観測がある中、バイデン大統領が、ガソリン市場で違法行為がはびこっている可能性があるとして、米連邦取引委員会(FTC)に調査を要請したことも影響したようです。大統領はカーンFTC委員長に宛てた書簡で、ガソリンの小売価格と卸売価格の差について懸念を表明し、「石油・ガス企業が反消費者的な行為に及んでいる証左は山のようにある」と指摘しました。その上で、「反競争的もしくは違法の可能性がある行為のため、勤勉な米国民が高いガソリン代を払わされるのを私は容認しない」と、調査を求めました。(ブルームバーグ)米国のガソリン価格は昨年10月から49.6%も上昇し、CPIを押し上げているだけではなく、自動車を主な移動手段とする米国民の家計にも相当な重荷になってきています。英国でも、昨日発表された10月のCPIが前月比で「4.2%」上昇しており、BOEの目標である「2%」を大きく超えていました。BOEは物価上昇率が来年の早い段階で「5%」に達すると想定しており、利上げに踏み切らざるを得ない状況に追い込まれている印象です。  NYダウ構成銘柄でもある「VISA」が大きく売られ、ダウ指数の下げをけん引しましたが、これは、アマゾンが英国で発行されたビザのクレジットカードを来年から利用できなくなると発表したことの影響です。アマゾンは「顧客にベストプライスを提供しようと取り組んでいる各ビジネスにとって、カード決済のコストが引き続き障害になっている」と発表し、手数料の高さを理由に来年1月19日からアマゾンでは同社のカードが利用できなくなる予定です。これに対してビザは、「アマゾンが将来的に消費者の選択を制限すると脅していることに非常に失望している。消費者の選択が制限されれば誰も得をしない」と説明し、「当社はアマゾンとの長年の関係があり、解決に向けた努力を続けていく」と発表しています。  本日はトルコで政策金利の発表があります。トルコ中銀は先月、市場にとってサプライズの「利下げ」を行いましたが、今回もエルドアン大統領の圧力の下、「1%の利下げを断行する」ものと見られています。本日の政策決定会合を前にエルドアン大統領は17日、低金利を目指す闘いを続けることと表明しました。エルドアン氏は議会演説で、「金利を擁護する人たちと同じ道をたどることはできない。市民から金利の重荷を取り除く」と表明し、中銀に圧力をかけています。この発言を受けトルコリラはすでに下落していますが、トルコのインフレは上記米国や英国とは比較になりません。直近10月のCPIは前年比で「19.89%」上昇し、9月の「19.58」を上回り、5カ月連続で上昇しています。原油などエネルギー価格の上昇が最大の要因ですが、通貨リラ安の影響もあり、コア指数でも「16.82%」と、桁違いの数字です。本来は「利上げ」を行い通貨安に歯止めをかけるべきですが、「低金利志向」の極めて強いエルドアン大統領の意向が強く、トルコ中銀は「利下げ」を行っています。「利下げ」を行うことで通貨リラが売られ、それが再び輸入物価を押し上げインフレにつながるという「悪循環」から抜け出ることが出来ない状況が続いています。通貨リラの浮上がまだまだ見通せません。  再び上値を重くしたドル円ですが、日足では「転換線」が113円85銭近辺にあり、先ずはこの水準がサポートと見られます。本日の予想は113円80銭~114円60銭程度と見ています。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
東京時間の朝方114円97銭まで買われたドル円はその後じり安となり、NYでは大きく売られる。米長期金利が低下したことや、軟調な経済指標の発表を受け一時は114円を割り込む。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-11-18 10:00