【為替本日の注目点】ドル円4年8カ月ぶりに115円台前半へ

ドル円は欧州市場では114円台半ばまで売られる場面があったものの、NY市場では再びドルが買われ、115円19銭まで上昇。米長期金利が上昇したことでドルが買い戻され、4年8カ月ぶりのドル高を記録。 ユーロドルは前日と変わらず、1.12台半ばから後半で推移。 株式市場は前日の動きと異なり、ダウとS&P500が上昇し、ナスダックは下げる。パウエル氏再任で金融政策が安定することが好感された一方、長期金利の上昇からナスダックは売られる。 債券は続落。長期金利は1.66%台に上昇。 金は大幅に続落し1780ドル台に。原油は米国が備蓄原油の放出を決めたものの、織り込み済みとの理由で大幅に上昇。 11月マークイット製造業PMI(速報値)       →  59.1 11月マークイットサービス業PMI(速報値)     →  57.0 11月マークイットコンポジットPMI(速報値)    →  56.5 11月リッチモンド連銀製造景況業指数         →  11 ドル/円  114.84 ~ 115.19 ユーロ/ドル 1.1241 ~ 1.1271 ユーロ/円  129.25 ~ 129.68 NYダウ  +194.55 → 35,813.80 GOLD -22,50  →  1,783.80ドル WTI  +1.75  →  78.50ドル 米10年国債 +0.042 → 1.665% 本日の注目イベント 独 11月ifo景況感指数 米 7-9月GDP(改定値) 米 10月耐久財受注 米 10月個人所得 米 10月個人支出 米 10月PCEコアデフレータ 米 11月ミシガン大学消費者マインド(確定値) 米 10月新築住宅販売件数 米 FOMC議事録(11月2-3日分) 米  新規失業保険申請件数 先週金曜日の本欄で、「個人的にはパウエル氏を支持するけど、何の根拠もないが、ただ漠然とブレイナード氏がFRB議長に指名されるのでは・・・」と書きましたが、バイデン大統領は、パウエル氏をFRB議長に再任することを決めました。金融政策の安定を優先した形となり、バイデン大統領は「堅実で断固としたリーダーシップで市場は安定し、経済は力強い回復軌道に乗った」と、パウエル氏のこれまでの実績を評価し、同氏が共和党員であることから、「党派を超えた支持を得られるリーダーであることが重要だ」と述べました。また議長候補であったブレイナード理事を副議長に任命し、今後上院での承認を経て、正式に就任することになります。足元で高進するインフレに対処するには、ブレイナード氏の「ハト派寄り」の姿勢がややネックになった可能性もありそうです。 パウエル氏の議長再任の報を受け、23日の昼前にはドルが買われ、ドル円は115円台に突入しました。その後一旦114円台半ばまで押し戻される場面もありましたが、米長期金利の上昇を受け昨日のNYでは、2017年3月以来となる115円19銭までドル高が進んでいます。 バイデン大統領は原油高に対応するため、戦略的石油備蓄の放出を決めました。ホワイトハウスの発表によると、米国は早ければ12月半ばから下旬に5000万バレルの石油備蓄を放出する模様で、日本、中国、インド、韓国、英国にも協調を呼びかけており、日本は本日にも国家備蓄の放出について発表する予定です。ただ昨日のNY原油先物市場では、米国の放出決定にもかかわらず原油価格は大きく上昇しています。10月下旬には一時85ドル台まで買われた原油価格は、備蓄放出の可能性が報道された後、75ドル台まで急落しており、すでに織り込み済みだったというのが背景のようです。また備蓄放出後に、放出される石油の大部分を将来的に戦略備蓄に返還させることが義務づけられていることもあり、結局需給バランスを変えないとの見方もあったようです。昨日のWTI原油価格は1ドル75セント上昇して取り引きを終えています。 トルコリラの下げが止まりません。 昨日の海外市場でリラは次々と節目を割りこみ、対米ドルでは一時18%安となる13.45近辺までリラ安が進みました。ドルに対する下げは20年ぶりとなる11営業日連続で、これで今月だけでも対ドルで3分の1も価値を減らしたこととなり、相場の動きからしても異常な状況が続いています。リラは対円でも8円台半ばを割り込む場面があったようです。直接のきっかけとなったのが、エルドアン大統領がトルコ中銀のカブジュオール総裁と会談していたことが明らかになったことでした。具体的な会談内容は明らかになってはいませんが、市場は、エルドアン氏が再び利下げ圧力を中銀総裁にかけたのではないかとの疑念がリラ売りにつながったとみられます。トルコ中銀は先週の金融政策会合で政策金利を「16%」から「15%」に引き下げたばかりです。20%近いインフレが続いている中、金融政策の原則を無視し、「利下げを行えば、景気が良くなる」とのエルドアン氏の「妄信」からトルコ中銀は猛烈な利下げ圧力を受けており、12月の会合でも再利下げがあるとの見方も浮上しています。これまでにもリラの急落は何度か見ていますが、今回の下げには正直驚いています。「エルドアン氏と中銀総裁が会談した」との報道だけで、これほど売られるリラは非常にリスキーだと言わざるを得ません。今後反転する際にも、その幅は結構大きなものになると見ています。 緊張が続くウクライナ国境を巡って、米国とロシアの軍トップが23日電話会談を行いました。「ロシアがウクライナに侵攻なら、極めて重大な結果を招く」と、フランスのルドリアン外相が警告を発している中、ミリー米統合参謀本部議長とロシアのグラシモフ第1国防次官兼参謀総長は、「安全保障に関するいくつかの疑念事項について話し合った」、と米統合参謀本部が声明で明らかにしています。会談内容については、「慣例に従い、両者は会談内容の詳細を非公開とすることで一致した」と説明しています。(ブルームバーグ) ついに115円台に乗せてきたドル円ですが、115円というのは大きな節目であったと同時に、チャートではここから上方にはこれといった重要なレジスタンスが見当たりません。敢えて探せば、2016年12月から翌年1月にかけてドルが急上昇し、118円台後半までドル高が進んだ、あの局面です。2016年の米大統領選で予想に反してトランプ氏がクリントン氏に勝利し、ドル円は直後に100円を割り込みましたが、その後のトランプ氏の言動が思いのほかノーマルであったことなど、一転して政策期待が先行して118円台を付けた経緯があります。 米インフレが今後どこまで進行するのかとも大いに関係しますが、115円台に乗せたことで、再びドルの上昇に弾みが付く可能性も出て来た印象です。 本日のドル円は114円70銭~115円50銭程度を見ています。 (執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は欧州市場では114円台半ばまで売られる場面があったものの、NY市場では再びドルが買われ、115円19銭まで上昇。米長期金利が上昇したことでドルが買い戻され、4年8カ月ぶりのドル高を記録。
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2021-11-24 11:15