【為替本日の注目点】米11月の失業率は4.2%に低下

11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回ったものの、失業率は改善するなど強弱まちまちだったが、リスクオフの流れが進みドル円は112円56銭まで下落。長期金利の急低下もドル円を押し下げた。ユーロドルは1.12台半ばまで下げた後反発。1.1334まで買戻しが進む。株式市場は3指数が揃って下落。雇用者数の伸びが予想に届かなかったことや、オミクロン株感染への懸念からダウは59ドル下落。ナスダックはさら厳しい下げに。債券相場は大きく上昇。長期金利は9月23日以来となる1.31%台まで低下する場面も。金は大幅に上昇。原油も買われる。
11月失業率 → 4.2%
11月非農業部門雇用者数 → 21.0万人
11月平均時給 (前月比) → 0.3%
11月平均時給 (前年比) → 4.8%
11月労働参加率 → 61.8
11月ISM製造業景況指数 → 69.1
10月製造業受注 → 1.0%
11月マークイットサービス業PMI(改定値) → 58.0
11月マークイットコンポジットPMI(改定値) → 57.2
ドル/円 112.56 ~ 113.61
ユーロ/ドル 1.1267 ~ 1.1334
ユーロ/円 127.38 ~ 128.34
NYダウ -59.71 → 34,580.08
GOLD +21.20 → 1,783.90ドル
WTI +0.24 → 66.26ドル
米10年国債 -0.101 → 1.343%
【本日の注目イベント】
独 10月製造業新規受注
11月の米雇用統計は再びサプライズでした。
非農業部門雇用者数は市場予想の「53.1万人増加」に対して、結果は「21.0万人の増加」に留まりました。先月に比べると、項目別では広義のサービス分野が「17.5万人」に留まり、先月の「53.4万人」から大きく鈍化していました。またレジャーや小売りでも雇用の伸びが鈍化しています。
一方で失業率は「4.2%」と、先月の「4.6%」から大きく改善しており、労働参加率も改善していました。結局今回の雇用統計では「強弱まちまち」の結果でした。
米雇用統計は「事業所調査」と「家計調査」の2つで構成されており、雇用者数と賃金に関わる「事業所調査」では今回、幅広い業種で採用ペースが鈍化していることを示しています。一方、失業と労働参加率を決定する「家計調査」では、雇用が114万人急増したとの結果が明らかになっています。(ブルームバーグ)
もともと「ぶれやすい」雇用統計にはこういった背景がありますが、統計発表後、ドル円は113円61銭まで買われ、この日の高値を付けています。その後雇用者数の鈍化に反応したせいか、じりじりと売られ、112円台半ばまでドル安が進みました。もっとも、株式市場では株価が大きく下げ、リスク回避の流れが強まったこともドル売りにつながったようですが、長期金利の急低下が最も大きな要因だったようです。米長期金利は9月23日以来となる、1.31%台まで低下し、1.34%台で引けています。また超長期の30年債も一時1.66%台と、1月初旬以来約11カ月ぶりの低水準を付けました。米国では「オミクロン株」の感染が広がり、マサチューセッツ州など新たに3州で感染が確認されていますが、現時点で、このこと自体がFRBの利上げに向けた政策に影響を及ぼすほどのことにはならないと思いますが、やや過剰反応といったところでしょうか。
FRBのテーパリングの終了時期と、それに続く利上げのタイミングを巡っては、最も「タカ派」の予想としては、英バークレーズの「4月にテーパリングを終了し、5月に最初の利上げを行い、2022年には3回の利上げを見込む」というものがありますが、サマーズ元財務長官は3日、インフレとの闘いで米金融当局が失った信頼を取り戻すためパウエル議長は利上げを来年4回行う可能性を示唆すべきだと、さらに突っ込んだ意見を述べています。サマーズ氏は、「インフレの数値がどうなるかに左右されるが、私だったら来年4回の利上げを示唆するだろう」と述べた上で、「それは衝撃になるが、衝撃は信頼回復には必要なことだ」と語っています。サマーズ氏はこの日発表された雇用統計についても、「重要な留意点は失業率が4.2%と、前月の4.6%から急低下したことだ」と述べ、労働市場改善の力強さが増している点を指摘しています。
ドル円は先週初めから、113円を挟んで一進一退の展開に変わってきました。これまでの115円前後の水準からやや円が買われる地合いになっています。南アフリカで発生した「オミクロン株」の影響が、実際のところまだ読み切れていないことで、不安がリスク回避につながり、為替も、株も「ひとまず、ポジションを減らしておこう」といった考えにつながっています。「オミクロン株」の発生から1週間が経ちました。早ければ今週末辺りにはそろそろ、より信頼できるデータが出て来るのではないかと思っていますが、どうでしょう。
上でも述べたように、「オミクロン株」の発生がFRBの金融正常化に急ブレイキをかけるといった想定はしにくいと考えます。原油価格が下落に転じてきたことで、米国のインフレ率も鈍化して来るとの見方はできますが、それでもFRBが正常化への道筋を変更するほどではないと思われます。111円90銭前後にある「日足の雲の下限」を明確に下抜けするかどうかが、トレンド転換の重要なポイントになると、筆者は考えています。
本日のドル円は、先週末と同様に112円50銭~113円40銭程度と予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が予想を大きく下回ったものの、失業率は改善するなど強弱まちまちだったが、リスクオフの流れが進みドル円は112円56銭まで下落。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-12-06 10:00