【為替本日の注目点】FOMC、テーパリング加速を決定

FOMCではテーパリングの加速が決定され、2022年の利上げ回数も3回が示唆されたことでドル円は114円台を回復。株価の大幅上昇もあり、114円28銭までドル高に。ユーロドルは1.1222まで「ドル高ユーロ安」が進む。FOMCの結果が市場予想通りだったとして、株式市場は堅調に推移。終盤にかけて上げ幅を拡大しダウは383ドル高。ナスダックも327ポイント高で引ける。債券相場は比較的落ち着いた動きだったが、結局小幅に売られ、長期金利は1.45%台と、小幅に上昇。金は続落し、原油は反発
12月NY連銀製造景況業指数 → 31.9
11月小売売上高 → 0.3%
11月輸入物価指数 → 0.7%
12月NAHB住宅市場指数 → 84
ドル/円 113.76 ~ 114.28
ユーロ/ドル 1.1222 ~ 1.1299
ユーロ/円 127.89 ~ 128.81
NYダウ +383.25 → 35,927.43
GOLD -7.80 → 1,764.50ドル
WTI +0.14 → 70.87ドル
米10年国債 +0.015 → 1.456%
本日の注目イベント
豪 豪11月雇用統計
日 11月貿易収支
トルコ トルコ中銀政策金利発表
欧 ECB政策金利発表
欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
欧 ユーロ圏11月貿易収支
欧 ユーロ圏12月製造業PMI(速報値)
欧 ユーロ圏12月総合PMI(速報値)
欧 ユーロ圏12月サービス業PMI(速報値)
英 BOE金融政策発表
英 BOE議事録
米 11月住宅着工件数
米 11月建設許可件数
米 新規失業保険申請件数
米 12月フィラデルフィア連銀景況指数
米 11月鉱工業生産
米 11月設備稼働率
米 12月マークイット製造業PMI(速報値)
米 12月マークイットサービス業PMI(速報値)
米 12月マークイットコンポジットPMI(速報値)
今朝方発表されたFOMCでは、テーパリングを2倍に加速させることと、2022年にはフェデラル・ファンド(FF)金利誘導目標を0.25%ずつ3回引き上げることが示唆されました。ややタカ派的と受け止められた部分はありましたが、ほぼ市場予想通りの決定で、市場の事前予想に突き動かされた決定ではないかとの印象も残ります。そのようなことはないと思いますが、現在月額150億ドル(約1兆7000億円)減額している資産購入を、国債とMBSを合わせて月額300億ドル倍に増させます。これによって2022年の早期には資産購入プログラムを終えることになります。
FOMC声明文では、「FRBは現在の困難な時期に米経済を支えるため、あらゆる手段を用い、それによって最大限の雇用と物価安定という目標を促進することにコミットしている」と記されています。また、「雇用はこの数カ月堅調に伸びており、失業率は大幅に低下した。パンデミックと経済再生に関連した需給の不均衡は、引き続き高水準のインフレにつながっている」とし、「経済の道筋はウイルスを巡る状況に引き続き左右されている」として、足元のオミクロン株の感染拡大が景気へのリスクであることに言及しています。
会合後の記者会見でパウエル議長は、「10月の雇用統計や7-9月の雇用コスト指数の力強い数値に加え、1990年以来の大幅上昇となった10月のCPIを受けて、CPI発表後の週末に資産購入のテーパリング加速の必要があると認識し、当局としてそのための作業に着手した」と説明しました。
この内容を受け、ドル円は113円台後半から114円台に乗せ、一時は114円28銭までドルが買われ、約3週間ぶりのドル高水準を付けています。株式市場も決定が想定通りだったと受けとめ株価が大幅に上昇し、ナスダックは2%を超える上昇となっています。ただ、この日の株価は大きく買われましたが、FOMC声明文が触れたように、オミクロン株の感染拡大は容赦ありません。米国の1日の新規感染数は14日には20万人に迫る状況でした。イギリスでも15日に報告された新規感染数は7万8610人と、新型コロナがパンデミックとなって以降の最多となっており、中でもオミクロン株の感染が急速に広がっています。香港大学は、新型コロナウイルスのオミクロン株はデルタ株や変異前のウイルスに比べ、およそ70倍のスピードで他人に感染する一方、症状はそれらに比べてずっと軽い可能性があるとの分析結果を発表しています。またイギリスの保健当局は、アストラゼネカ、ファイザー・ビオンテックが開発した両ワクチンの効果に関して、2回の接種後でオミクロン株の有症状感染を防ぐ効果はデルタ株に比べはるかに低いが、ブースター接種をすれば接種後初期には有症状の70-75%防げる水準に効果があるとの、暫定結果を発表しています。(ブルームバーグ)
114円台を回復したドル円ですが、115円は「近くて遠い距離」かもしれません。その根拠の一つが米長期金利の上昇力が鈍っていることが挙げられます。2022年には3回の利上げが見込めるにもかかわらず、長期金利は1.45%台と小幅な上昇に留まっています。115円台を回復するためには同金利が少なくとも、1.65-1.7%台まで上昇するといった「援軍」が必要かと思います。またオミクロン株の感染状況次第では日米株価の大幅下落も想定され、リスクオフから再び円が買われる局面もないとは言えません。FRBが金融正常化への第一歩を踏み出し、そのスピードを加速したことはドルにとって最大の支援材料であることは間違いありませんが、目まぐるしく変わる世界情勢の中で、米中関係の悪化や中国の不動産バブル、あるいはウクライナ情勢など、一夜にして円が急速に買われる材料は無くなりません。筆者は「7:3」の割合でドル高を予想していますが、この割合は非常に流動的であるのも事実です。
本日はECBの番です。ユーロ圏でも11月のCPIは「4.7%」と、1997年以降で最大の上昇を示しています。ECBはそれでも物価の上昇は一時的で、来春には落ち着くとの考えを堅持しており、利上げには否定的です。またドイツを中心にオミクロン株の広がりも懸念材料と見られ、緩和的な政策を続けると予想されます。
本日のドル円は113円70銭~114円60銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
FOMCではテーパリングの加速が決定され、2022年の利上げ回数も3回が示唆されたことでドル円は114円台を回復。株価の大幅上昇もあり、114円28銭までドル高に。(イメージ写真提供:123RF)
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2021-12-16 11:00