【為替本日の注目点】米12月のCPIは39年ぶりの高水準

ドル円は115円台半ばから大きく下げる。CPIが高水準ながら市場予想と一致したことや、長期金利の低下を手掛かりに114円38銭まで急落。ユーロドルでもドル安が進み、ユーロは1.14台半ばまで買われ、昨年11月15日以来の高値に。株式市場は3指数が小幅ながら揃って続伸。上昇して取引が始まったがマイナス圏に沈む局面もあったものの、引け値では小幅高。債券はほぼ横ばい。長期金利は1.74%台で推移。金と原油は続伸。原油は一時83ドル台に乗せる場面も。
12月消費者物価指数 → 0.5%
12月財政収支 → -121.3b
ドル/円 114.38 ~ 115.50
ユーロ/ドル 1.1362 ~ 1.1453
ユーロ/円 130.87 ~ 131.47
NYダウ +38.30 → 36,290.32
GOLD +8.80 → 1,827.30ドル
WTI +1.42 → 82.64ドル
米10年国債 +0.007 → 1.743%
本日の注目イベント
欧 ECB経済報告
米 12月生産者物価指数
米 新規失業保険申請件数
米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演
米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
米 上院銀行委員会、ブレイナード理事のFRB副議長指名承認公聴会
米12月の消費者物価指数は前年同月比で「7.0%」と、市場予想と一致していましたが、1982年以来、実に39年6カ月ぶりの高水準で、インフレの高進は止まりません。CPIは前月比でも「0.5%」と、市場予想を上回っており、これで3月のFOMC会合で利上げが開始されることは、今後余程の事がない限り確実視されそうです。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数でも前年比「5.5%」上昇していました。上昇は広範囲にわたっており、項目別では食料品が6.3%、光熱費が9.5%、輸送費が21.1%、居住費についても5.1%(いずれも前年同月比)などが目立っています。オミクロン株の感染が猛威を振るう中、隔離措置や病欠などにより人手不足は解消せず、サプライチェーンへの打撃を考えると、今後さらに物価上昇が続く可能性もありそうです。今回のCPIの上昇が3月のFOMCで、利上げ開始を後押しすることは間違いないとみています。
39年ぶりの高いCPIを受けクリーブランド連銀のメスター総裁は、「当局は金融市場を混乱させずに出来るだけ速やかにバランスシートを縮小すべきだ。また3月の利上げ開始を支持する」との考えをあらためて示しています。セントルイス連銀のブラード総裁もウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「実際のところ、現時点ではおそらく2022年に4回利上げすべきだと考えている」と述べており、従来は3回の利上げを予想していました。同総裁はさらに、「今年上期に2、3回の利上げを済ませれば、より望ましい状況になるだろう」と説明し、「実態経済を混乱させない方法でインフレを制御したいが、中期的に物価上昇率を2%に戻したいとの望みもしっかりと持っている」と語っていました。同総裁はタカ派の象徴として見られていますが、これまで同総裁が述べて来た物価上昇の道筋は概ね予想通りの軌道を描いて来たこともあり、説得力があるように思えます。因みに、ブラード総裁は今年のFOMCでの投票権を持っています。
12日に報告されたベージュブックでは、「楽観的な見方は依然として強いが、幾分弱まった。今後6カ月間、経済成長が続くとの明るい見通しを示した企業の割合が低下した」と記述されています。12地区連銀のうち10連銀では、新型コロナウイルスのオミクロン変異株が活動に影響を及ぼし、労働市場を巡る問題を深刻化させている」と指摘しています。(ブルームバーグ)また、大半の地区で企業は物価の強い伸びを顧客に転嫁したとも報告されており、CPIの上昇とも整合しています。
CPI発表を境にドル安が進み、ドル円は115円を割り込み、114円38銭まで売られました。CPIが高水準だったことから、ここまでドル安が進んだことに「想定外」と感じる人も多かったかと思います。余り明確な理由は見つかりませんが、115円を割り込み、114円80銭近辺も割り込んだことで、ポジション調整や手仕舞いのドル売りが加速したと考えています。また、ユーロドルが1.14台に乗せ、ドル安ユーロ高が進んだことも影響したようです。これで高値からほぼ2円下げたことになります。ドルの上値は重くなってきましたが、テクニカル的には基本となる日足を見る限りまだトレンド転換はありません。ドル円は「一目の雲」の上で推移しており、「MACD」でもプラス圏を保っています。デッドクロスを示してはいますが、プラス圏でのクロスであることから、ここからの深押しは限定的と判断するのが定石でしょう。ただこれは、あくまでもチャート上の判断です。注意しながらドルの買い場を探るスタンスを維持したいと思いますが、昨日の様に、相場は上昇に比べ下落が速いのも特徴で、過信は禁物です。
本日のドル円は114円10銭~115円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は115円台半ばから大きく下げる。CPIが高水準ながら市場予想と一致したことや、長期金利の低下を手掛かりに114円38銭まで急落。ユーロドルでもドル安が進み、(イメージ写真提供:123RF)
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2022-01-13 09:45