米株ファンドを上回るパフォーマンスを実現、「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」が見据える未来

三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」のパフォーマンスが好調だ。2022年1月末時点で過去1年間のトータルリターンは37.85%と全国内株式ファンドの中でトップ、かつ、この期間の米国S&P500インデックスファンドの平均30.29%をも上回っている。2月10日に発表されたファンド オブ ザ イヤー2021の国内株式部門で最優秀ファンド賞も受賞した。同ファンドの魅力と今後の展望について三井住友DSアセットマネジメントの運用部シニアファンドマネージャーの所伴和氏に聞いた。
――当ファンドが非常に優れたパフォーマンスを残した要因は?
当ファンドは、トヨタ自動車、および、そのグループ会社の株式に投資するファンドです。現状は、トヨタ自動車を50%までとし、残りの50%をトヨタ自動車の連結子会社と持分法適用関連会社の株式に時価総額に応じて投資を行い、トヨタグループの株価をストレートに反映した運用成績をめざしています。
2021年はコロナ禍からの回復が期待されたものの変異種オミクロン株の強烈な感染力によって回復期待に水を差されました。製造業ではサプライチェーンの寸断などによって思うような生産ができない事態になりました。特に、自動車業界では半導体不足が深刻で、完成車メーカーは工場稼働率を抑えることを余儀なくされました。
しかし、トヨタグループは、部品の納入調整や欠品部品を使わない特別仕様車の導入等、仕入先を含めた減産回避努力を行い、21年9月の中間決算は過去最高の業績になりました。この危機にあって発揮されたグループの底力は、改めてトヨタ自動車とそのグループの強さを印象付けました。この好決算などを評価して、トヨタ自動車の株価は年末高になり、当ファンドは1年間で30%を超えるトータルリターンを実現しました。
――ファンドではなくトヨタ自動車やグループ各社の株価に直接投資した方が高いパフォーマンスを得られるのでは?
確かに、トヨタ自動車の株式に直接投資すると20年12月末と21年12月末で32.30%の値上がり率になり、ファンドの31.30%を上回るパフォーマンスでした。ただ、当ファンドでは、トヨタ自動車だけでなく、デンソーやアイシンなどグループ会社にも同時に投資することができます。たとえば、デンソーの株価は1年間で55%以上値上がりし、アイシンも42%以上の値上がりになっています。グループ全体の成長に投資することができます。
そして、デンソーやアイシンなど自動車部品メーカーは、トヨタ自動車の厳しい品質管理に鍛えられて世界的なトップメーカーに成長しています。両社のトヨタ自動車向け以外の売上高は約40%であります。このようにトヨタ自動車以外のメーカーの成長を取り込むこともできるのが、当ファンドの魅力の1つと考えます。
また、ファンドとしてトヨタグループに投資することによって、変革するトヨタグループの変化を捉えることが可能になります。トヨタグループは、当初は豊田自動織機を中心とした編み機メーカーだったことは良く知られています。そして、今でこそ、自動車の世界的なメーカーですが、20年後や30年後は、自動車メーカーではないかもしれません。豊田章男社長は「自動車産業は100年に一度の大変革期にある」と言って、この変革の先を見据えて着実に手を打っています。そこで生まれた子会社が上場すれば、当ファンドの投資対象に入ります。今後、どのような変化があろうと、トヨタグループの動きをしっかりとらえることができるのが、このファンドの魅力だと思います。
――自動車業界の競合相手は、従来の自動車メーカーだけではなく、家電メーカーやIT企業などに広がっています。その中にあってもトヨタグループは現在のトップの地位を保ち続けられるのでしょうか?
今後の勝者を特定することは難しいでしょうが、変革は、トヨタにとって大きな飛躍のきっかけになると考えられます。
たとえば、静岡県裾野市に建設中の「ウーブン・シティ(Woven City)」は、ロボットやAI(人工知能)、自動運転やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス=サービスとしてのモビリティ)、スマートホームといった先端技術を人々のリアルな生活環境の中に導入・検証できる実験都市と位置付けられています。まもなく2000人が生活を始める計画になっていますが、ここで実験され、研究されるテーマは生活のあらゆるシーンに及んでいます。この研究によってトヨタ自動車は、次世代のGAFAM(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル・マイクロソフト)のような存在になる期待すらあります。ところが、トヨタ自動車のPERは14倍程度で、自動車メーカーとしての評価でしかありません。GAFAMの25倍~60倍、テスラは約100倍というPERとはかけ離れているのです。この市場での評価の低さは、今後の成長余地になっていると思います。
また、電気自動車の分野でトヨタは出遅れたといわれますが、基礎研究は何年にもわたって行っています。量産型EVである「bZ4X」を今年発売しますが、他社に遅れたのは、製品の安全性を筆頭に顧客ニーズを満たす製品開発を重視したためと考えられます。EVは発火事故が相次いで、頻繁にリコールされています。現在のリチウムイオン電池では、発火のリスクから逃れられないとして、発火のリスクが低く、充電速度が速い、さらに、馬力も強いという全固体電池の開発を急いでいます。
また、次世代のエネルギーといわれる水素で発電する燃料電池自動車(FCEV)でも先行しています。水素を燃料にすると既存のガソリンエンジンの技術がそのまま活かせるメリットもあります。「エンジンを今否定されてしまうと100万人の雇用が失われてしまう。550万人中の100万人です」と豊田社長はおっしゃっています。雇用を守る意義も決して小さくありません。このように、産業界全体の行く末にまで目を配って、最適な解を見つけ出してきたのがトヨタグループですから、これからの変化の時代でも高い評価を維持し続けると思います。
――このファンドのリスクをどのように考えればよいでしょうか? また、資産形成の手段としての活用方法は?
トヨタ自動車とそのグループは、日本を代表する大きな存在ですから、良いことも悪いこともニュースになりやすいといえます。それらのニュースに株価が反応することもあります。また、投資対象をトヨタグループに絞っていますので、東証1部に上場している全銘柄を対象にしたTOPIX(東証株価指数)などと比較すると基準価額の変動率が大きくなる傾向があります。
価格変動リスクを考えると、中長期に投資するファンドであると考えます。また、価格変動リスクを抑える点では、時間を分散して購入する積立投資で購入されることをご検討ください。たとえば、当ファンドの設定月である2003年11月から毎月末に1万円ずつ積立投資をしたとすると、2022年1月末までに元本は219万円ですが、当ファンドに積立投資した評価額は513万円になります。これは、TOPIX連動型のインデックスファンドに積立投資をした結果の415万円を大きく上回ります。
今後の大きな成長が期待できるトヨタグループに投資する当ファンドを、ぜひ長期の資産形成の手段としてご活用いただきたいと思います。(グラフは、「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」の設定来のパフォーマンスの推移)(情報提供:モーニングスター社)
三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」のパフォーマンスが好調だ。(グラフは、「トヨタ自動車/トヨタグループ株式ファンド」の設定来のパフォーマンスの推移)
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2022-02-10 14:45