【為替本日の注目点】NY金価格8カ月ぶりに1900ドル台に

ウクライナを巡る緊張がさらに高まったことから、リスク回避の円買いが強まり、ドル円は115円を割り込む。米長期金利が大きく低下したこともあり、114円85銭までドル安に。ユーロドルではドル安は進まず、ほぼ前日と同水準で推移。NY株は3指数が揃って大幅安。ウクライナ情勢の混迷とフィラデルフィア連銀景況指数が予想を下回ったことでダウは622ドル安。ナスダックも3%近い下げに。債券は反発。長期金利は3日ぶりに2%を下回り、1.96%台まで低下。金は大きく買われ、昨年6月以来となる1900ドル台乗せ。原油は反落。
新規失業保険申請件数 → 24.8万件
1月住宅着工件数 → 163.8万件
1月建設許可件数 → 189.9万件
2月フィラデルフィア連銀景況指数 → 16.0
ドル/円 114.85 ~ 115.15
ユーロ/ドル 1.1351 ~ 1.1380
ユーロ/円 130.42 ~ 130.94
NYダウ -622.24 → 34,3123.03
GOLD +30.50 → 1,902.00ドル
WTI -1.90 → 91.76ドル
米10年国債 -0.077 → 1.961%
【本日の注目イベント】
欧 ユーロ圏12月経常収支
欧 ユーロ圏2月消費者信頼感指数(速報値)
英 英1月小売売上高
米 1月中古住宅販売件数
米 1月景気先行指標総合指数
米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演、ウォーラーFRB理事、フォーラムに参加
米 ブレイナード・FRB理事講演
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、パネル討論に参加
加 カナダ12月小売売上高
ウクライナを巡る緊張は、ロシア軍の一部が撤収したとの発表がありましたが、むしろその真偽を巡り混迷を深める結果になっています。米国は、ロシアが軍事演習を終えた戦車などがクリミア半島を離れる映像を公開しましたが、それは確認されていないとして「偽装工作」との見方を強めています。バイデン大統領はホワイトハウスの庭で記者から、ロシアのウクライナへの侵攻の可能性を問われると、「近いうちにある」と述べ、「ロシアは7000人の兵士を増強している」と警戒感を強めています。グリンフィールド米国連大使は、「ロシアの侵攻が目前に迫っているという証左を得ている」と語っています。これに対してロシア側は引き続き、米国からはNATOの拡大停止を求めるロシアの要求に対して誠意ある回答を得ていないと、両国の主張は平行線をたどっています。今朝の報道では、ロシアは米国の駐ロシア大使館ナンバー2である、ゴーマン次席大使を国外追放したことを発表しました。
一旦鎮静化したかに見えたロシアによるウクライナ侵攻リスクが再び高まったことで、昨日のNY市場ではリスク回避の円買いが活発となり、ドル円は114円85銭まで売られています。FRBによる利上げが連続すると見られていることから軟調だった米債券も昨日は買われ、長期金利は2%を割り込んでいます。株式市場は戻り基調を維持できず、ダウは622ドル安と大幅下落となり、ナスダックも2.9%安と、ほぼ全面安の展開でした。また金も大きく買われ、1900ドルの大台を約8カ月ぶりに回復するなど、「Flight toQuality」(質への逃避)が大きく進んだことが分かります。ウクライナへの侵攻はないと主張するロシアと、侵攻は目前に迫っているとする米国の主張が真っ向から対立していますが、今週末から来週にかけて、どちらが「嘘」を言っているのか判明するかもしれません。
もう一つの焦点であるFRBの利上げ観測を巡り、JPモルガン・アセット・マネジメントのマイケル最高投資責任者(CIO)はブルームバーグとのインタビューで、「FRBが50ベーシスポイントの利上げに踏み切ることを望んでいる」と、資産運用担当者としてはやや異質な発言を行っています。マイケル氏はその理由について、「消費者物価の急激な上昇は債券投資家にとって悪いニュースだ。資産価格上昇が見込めない上に、クーポン支払の価格が目減りするからだ」とし、「50bp利上げをしなければ、市場は金融当局への信頼を失い、クレジットや株式などリスク資産への投資は考えられなくなる」と述べています。
1月のFOMC議事録が公開され、多くのメンバーが早期の利上げを支持し、市場は3月会合ではウクライナ情勢など不確実性はあるものの、0.5%の利上げの可能性を一段と強めている印象です。どうやら、超タカ派のブラード・セントルイス連銀総裁の見方が[正鵠を射ている]といった状況になってきました。そのブラード総裁は昨日も講演で、インフレがこの先長引く可能性があると指摘していました。ブラード氏は、「一部ではインフレが落ち着くと期待する向きもあるが、われわれが落ち着かなくなるリスクに対処する必要がある」と述べ、「市場は、ある程度妥当な期間でインフレが落ち着くということに対して、やや信頼感を失いつつある」と語っています。
FRBによる利上げを根拠とした「円売り」と、ウクライナ情勢や株価の下落に伴う「円買い」に大きく振らされる状況は、足元では再び後者にシフトしつつあるようです。本日の日経平均株価も再び2万7000円の大台を割り込むと見られ、最悪の場合には前日比500円程の下げがあるかもしれません。ドル円では円買いが優勢な展開が予想され、114円台半ばを割り込む可能性もあるかもしれません。
予想レンジは114円30銭~115円20銭程度と見ます。ウクライナ情勢が最大の注目材料です。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ウクライナを巡る緊張がさらに高まったことから、リスク回避の円買いが強まり、ドル円は115円を割り込む。米長期金利が大きく低下したこともあり、114円85銭までドル安に。ユーロドルではドル安は進まず、ほぼ前日と同水準で推移。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-02-18 09:45