【為替本日の注目点】ドル円5年2カ月ぶりに117円台前半まで上昇

ドル円は大幅に続伸。東京時間にドルの直近高値であった116円35銭を上抜け、NYでは117円35銭まで買われる。ドル高の流れが加速し、ユーロドルは1.0902まで下落。株式市場は3指数が揃って下落。バイデン政権がロシアの最恵国待遇を取り消したことなどが材料に。ダウは229ドル下落。債券は横ばい。長期金利は1.99%台で推移。金は反落し、原油は反発。
3月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 59.7
ドル/円 116.83 ~ 117.35
ユーロ/ドル 1.0902 ~ 1.1011
ユーロ/円 127.83 ~ 128.81
NYダウ -229.88 → 32,944.19ドル
GOLD -15.40 → 1,985.00ドル
WTI +3.31 → 109.33ドル
米10年国債 +0.005 → 1.992%
【本日の注目イベント】
欧 ユーロ圏1月鉱工業生産
ドル円は一気に117円台前半まで急伸しました。116円台半ばから117円にかけてはもう少しもみ合うだろうと予想していましたが、金曜日の東京時間で、これまでのドルの直近高値であった116円35銭を抜くと、ストップロスらしきドル買いも巻き込み116円台半ばを超え、NYでは117円35銭までドル高が進みました。これまでユーロドルに比べ動きが緩慢でしたが、それを取り戻すかのように、ドル高円安が進んでいます。この水準で思い出すのは、2016年11月の米大統領選で大方の予想に反して、トランプ氏が事前調査では有利だったクリントン女史に勝利し、その影響からドル円が100円を割り込み、急激な円高が進行しました。その後1月の大統領就任演説を経て、市場の評価はトランプ氏が予想された以上に大統領職を遂行できるといった見方に変わり、ドル高が一気に進んだ水準です。この時はわずか2カ月余りで18円以上も急激なドル高が進みました。その後のトランプ氏の言動はご存知の通りです。
ウクライナ情勢は相変わらず予断を許さず、ロシアによる攻撃が続いています。ロシア軍は首都キエフに15キロほどまで迫り、この週末にも一気に総攻撃を仕掛ける可能性も取りざたされていましたが、首都制圧には至っていません。それでもウクライナ西部、ポーランドとの国境に近いリビウにあるウクライナ軍の施設に、ロシア軍からミサイルが撃ち込まれ、数十人が死亡しています。空爆は西側へとさらに侵攻しているようで、キエフ周囲の標的に対する攻撃も続き、戦闘の激化が報告されています。黒海に面したミコライフへの空爆では民間人9人が死亡したとみられています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアとの交渉はこれまでより中身のある内容になってきた兆候があるとし、かつての「最後通告から変わりつつある」と述べています。また、ウクライナの大統領府顧問は、ロシアとの間で「継続的な」ビデオ交渉が行われていることを明らかにしています。ウクライナからの避難民は250万人を超え、その多くはポーランドに逃れたようです。避難民の数は今後数日で400万人に達する可能性があると、ブルームバーグは伝えています。
ロシアのシルアノフ財務相は13日、国営テレビのインタビューで、「ロシアの外貨準備高は約6400億ドル(約74兆7000億円)で、そのうちの約3000億ドルは現在使うことができない状況にある」と述べました。さらに、人民元建て準備資産へのアクセスを制限しようと「西側諸国が中国にどのような圧力をかけているのかわれわれは見守っている」と説明し、「しかし、ロシアと中国の協力関係は同準備資産を守るだけでなく、拡大させると考える」と続けています。ロシアに対する経済制裁の効果はまだ顕著には出ていない様ですが、金融の分野ではその影響はより早期に出て来そうです。すでにロシアからの業務の撤退を決めたJPモルガンやゴールドマンに続き、欧州の有力金融機関であるドイツ銀行はロシアでの業務の縮小を決定しました。フランスのBNPパリバやソシエテも追随する見込みです。
ドル円の上昇スピードはやや早過ぎると感じますが、この先は118円台まで目立ったレジスタンスは見当たりません。2016年12月から翌年1月にかけて記録した118円60銭台が一応の目安になりますが、仮にその水準を抜ければ、市場は「120円」という数字を意識し始めることになります。今週は明日からFOMCが開催され、16日には政策金利の発表があります。政策金利は「0.25%の利上げ」で動かないものと思いますが、その後のパウエル議長の発言には注目が集まります。議長がウクライナ情勢のリスクをどのように捉え、米景気への影響をどのように考えるのか。また、原油価格の高騰からインフレ圧力はさらに高まると見られますが、その対応策として、その後の会合で「0.5%の利上げ」の可能性があるのかどうかもポイントになります。「次回以降の会合で、0.5%の利上げの可能性を排除しない」といった表現になれば、ドル円はもう一段上昇する公算が高いと考えますが、その際に株価がどこまで下げるのかにも注意です。
ドル円はオセアニア市場ですでにNYの高値を大きく上回り、117円60銭まで買われています。ドル円の上昇に勢いが付いて来ましたが、本日の予想レンジは117円10銭~118円10銭といったところでしょうか。思いのほかドルの上昇圧力は強いようにみられますが、市場参加者のセンチメントもドル高方向に大きくシフトしているようです。上昇スピードの速さには一応注意が必要です。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大幅に続伸。東京時間にドルの直近高値であった116円35銭を上抜け、NYでは117円35銭まで買われる。ドル高の流れが加速し、ユーロドルは1.0902まで下落。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-03-14 10:00