【為替本日の注目点】ドル円欧州市場で121円台に乗せる

ドル円は一段と上昇基調を強め、120円台に乗せた後、欧州市場では121円03銭まで上昇。日米金利差や中銀の金融政策の違いなどが改めて材料に。ドル高が進んでいることからユーロドルは小幅に下落。1.10まで売られたが下げは限定的、円の下落がより大きく、ユーロ円は133円32銭まで上昇。株式市場は3指数が揃って反発。ダウは254ドル上昇し、ナスダックも270ポイント買われる。債券は続落。長期金利は一時2.39%台まで上昇し、この日の高値圏で引ける。金と原油は下落。
3月リッチモンド連銀製造業景況指数 → 13
ドル/円 120.39 ~ 120.90
ユーロ/ドル 1.1000 ~ 1.1045
ユーロ/円 132.58 ~ 133.32
NYダウ +254.57 → 34,807.46ドル
GOLD ―8.00 → 1,921.50ドル
WTI ―0.36 → 111.76ドル
米10年国債 +0.093 → 2.382%
【本日の注目イベント】
トルコ 2月消費者物価指数
欧 ユーロ圏3月消費者信頼感指数(速報値)
英 2月消費者物価指数
米 2月新築住宅販売件数
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、ブルームバーグ主催のイベントに参加
米 ブラード・セントルイス連銀総裁、討論会に参加
ドル円の上昇が止まりません。昨日の朝方には119円台半ばで推移していたドル円は120円台に乗せ、その後も上昇を続け、欧州市場ではついに121円03銭までドル高円安が進行しました。余りの上昇の早さに、筆者のレンジ予想も大きく外れています。ドルが買われていますが、それ以上に「円が売られている」状況かと思います。
ドル買いの背景は米金利の上昇ですが、そのきっかけは21日のパウエル議長のタカ派的発言が大きく影響しています。先週のFOMC後の会見ではそれほど目立った発言はなかったものの、21日の全米企業エコノミスト協会での講演では、「FF金利誘導目標を1会合ないし複数の会合で0.25ポイント引き上げる、より積極的な行動が適切だとの結論に至った場合は、そうするだろう」と述べ、さらに議長は講演後の質疑応答では、5月FOMC(5月3~4日)会合での0.5ポイント利上げを妨げる要素はあるのかとの質問に対し、「妨げるものなどあるだろうか。何もない」と発言し、金利上昇とドル高のきっかけを与えました。さらに先週末の日銀金融政策決定会合では、これまでの大規模な金融緩和政策の維持を決め、黒田総裁は「日本経済全体では円安はプラス」との認識を示したことも、円売りにつながったように思います。これらが改めて意識され、昨日の市場では「円全面安」の展開に大きく振れたものと見られます。
ドル円は2016年2月以来の水準に達しましたが、今朝の経済紙は当時の状況と足元の状況を比較しています。当時「29.9ドル」だった原油価格は「112.1ドル」に上昇し、「1.77%」だった米長期金利は足元では「2.12%」に。さらに「2428億円の貿易黒字」は、「6683億円の貿易赤字」に転落しており、全てが「ドル買い・円売り」要因となります。特に原油価格の大幅な上昇はほぼ全量を輸入に頼っている日本にとって、それだけドル需要が増すことになり、「実需のドル買い」に基づいた円安と言えないこともありません。このまま原油価格が100ドル台で定着するようだと、貿易赤字も定着し、折からの新型コロナウイルスによる影響からインバウンド効果も、最早見る影もないほど低下しており、ひょっとすると長期にわたって円安が定着する可能性も頭をよぎります。
ただ足元では急激にドル高へとバイアスがかかっており、市場では「121円は単なる通過点」といった声まで出始めています。「調整らしい調整」も見られないまま121円台まで来ましたが、昨日の欧州市場で121円03銭まで上昇した後、NY市場の朝方にかけて120円38銭前後まで下押しされた場面が唯一の「小幅な調整」でした。120円~125円の間のどこかでは「円安を牽制する」発言が出るとみていますが、ここからドルを買うのは怖いし、かといって売ってもなかなか機能しづらい面もあり、難しい動きになってきました。ただ明確な根拠があるわけではありませんが、市場全体が一気にドル高へシフトしてきた状況に、筆者は警戒感を覚えます。「人の行く、裏に道あり、花の山」といった心境でしょうか。
FOMCメンバーによる発言も多くありました。タカ派の重鎮であるセントルイス連銀のブラード総裁はブルームバーグとのインタビューで、「インフレ抑制のため金融当局は積極的に動く必要がある」と指摘し、金融当局がどの程度の速さで動くべきかといった質問に対しては、「速いほどよい」と答えています。またクリーブランド連銀のメスター総裁は、「経済の基調的な強さと現在の極めて低水準のFF金利を考えると、必要な利上げの一部をプロセスの後半ではなく早期に前倒しすることが好ましいと思う。経済が予測と異なる展開となった場合に政策を調整しやすくできるからだ」と述べ、年末までに2.5%程度への金利引き上げを支持する考えを示しました。昨日の発言で最もハト派とみられるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、「インフレ期待は十分抑制されているようであり、物価上昇はなお鈍化する見込みだ」と発言しています。
ロシアによるウクライナへの攻撃は止まず、消耗戦の様相を呈してきました。前米国防長官のエスパー氏は、ロシア軍の装備が整っておらず、士気の低さが影響していることは明らかだと述べ、「戦争がロシア人とロシア軍にとって壊滅的な影響をこれまでに及ぼしている」と指摘しています。明日からバイデン大統領はベルギーのブリュッセルへ行き、NATO首脳との会談やポーランドへの訪問も予定されており、局面が変わるかもしれません。今夜6時からはウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで日本の国会で演説を行います。日本のより積極的なサポートを要請してくるのでしょう。
本日のドル円は120円60銭~121円80銭程度を予想しますが、あまり参考にはならないかもしれません。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は一段と上昇基調を強め、120円台に乗せた後、欧州市場では121円03銭まで上昇。日米金利差や中銀の金融政策の違いなどが改めて材料に。ドル高が進んでいることからユーロドルは小幅に下落。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-03-23 10:00