【為替本日の注目点】プーチン氏の大誤算

ドル円は朝方、株価の大幅下落を受け120円60銭まで売られたが、その後はFOMCメンバーによる相次ぐタカ派発言で121円16銭まで反発。ユーロドルは水準を切り下げ、1.0964まで下落。株式市場は大幅に反落。ダウは448ドル下げ、他の主要指数も下落。FOMCメンバーによるタカ派発言が重しに。債券は反発。長期金利は2.29%台に低下。金と原油はともに反発。
2月新築住宅販売件数 → 77.2万件
ドル/円 120.60 ~ 121.16
ユーロ/ドル 1.0964 ~ 1.1012
ユーロ/円 132.32 ~ 133.39
NYダウ +448.96 → 34,358.50ドル
GOLD +15.80 → 1,937.30ドル
WTI +5.66 → 114.93ドル
米10年国債 ―0.091 → 2.292%
【本日の注目イベント】
欧 ユーロ圏3月製造業PMI(速報値)
欧 ユーロ圏3月サービス業PMI(速報値)
欧 ユーロ圏3月総合PMI(速報値)
欧 ECB経済報告
欧 EU首脳会(ブリュッセル、25日まで)
欧 NATO緊急首脳会議(ブリュッセル)
欧 G7首脳会議(議長国ドイツ、ブリュッセル)
英 3月製造業PMI(速報値)
英 3月サービス業PMI(速報値)
英 3月コンポジットPMI(速報値)
米 3月マークイット製造業PMI(速報値)
米 3月マークイットサービス業PMI(速報値)
米 3月マークイットコンポジットPMI(速報値)
米 3月フィラデルフィア連銀景況指数
米 経常収支(10-12月)
米 2月耐久財受注
米 新規失業保険申請件数
米 ボスティック・アトランタ連銀総裁、オンライン討論会に参加
米 ウォーラーFRB理事、講演(オンライン)
米 エバンス・シカゴ連銀総裁講演
米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁講演
2月24日にロシアがウクライナへ侵攻を開始してから今日で1カ月が経ちました。首都キエフを陥落させる計画でしたが、ウクライナの予想を超える強い抵抗に、プ―チン氏は焦りを感じており、マスコミは「プーチンの誤算」と書きたてています。焦ったプーチン氏は「核」をちらつかせ、欧米西側諸国に揺さぶりをかけていますが、ロシア軍の士気もかなり低下してきており、戦争は消耗戦の様相になってきました。昨日は、プーチン氏が「友好的でない」と見なす国に輸出する天然ガスについては代金の支払いを「ルーブル建て」で求める方針を示しました。現時点では詳細は明らかになっていませんが、大きく下落したルーブルの相場を押し上げる目的と、代金をドルで受け取っても制裁により口座が凍結されているため、自由に動かすことができない状況があるからとみられます。これに対してドイツは「契約違反だ」と反発し、イタリアはルーブルで支払う意志はないと言明しています。
侵攻から1カ月でウクライナでの民間人死亡者数は953人(国連)と発表されていますが、実際にはこれをはるかに上回る数字になるとみられます。一方ロシア側の被害についてブルームバーグは、少なくともロシア兵は7000人以上死亡し、最大で1万5000人の可能性もあると、NATO高官の情報として伝えています。ロシアではプーチン政権に対する批判の声も上がっており、批判の声をあげた多くの市民が拘束されていますが、ロシア中銀のナビウリナ総裁はプーチン氏がウクライナ侵攻を命じた後に辞任しようとしたが、プーチン氏に引き留められたと、関係者の話として報じています。また、ロシアで気候問題の大統領特使を務めるチュバイス氏が辞任し、同国を去ったことも報じられています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は昨日の夕方6時からオンラインで日本の国会向けに演説を行いました。演説では、アジアで唯一ロシアへの制裁に加わったことに感謝すると共に、さらなる制裁継続を求めていました。日本がリーダーシップを発揮することに期待し、ロシアとの貿易を禁止することも求めていました。最後に日本語で「ありがとう」と述べ、演説を終えましたが、岸田首相を始め日本の政治家はこの演説を聞いて何を思い、何をしようと思ったのでしょう。「胸が痛んだ」と語るだけでは何の意味もありません。今すぐどのような行動を起こすのか、見ていきたいと思います。
ドル円はほぼ一本調子で上昇を続け、昨日の東京市場では121円41銭までドルが買われる場面がありました。その後NYにかけて120円台半ばまで下押しする場面がありましたが、NY時間では相次ぐタカ派的な発言がFOMCメンバーから発せられたことで再び121円台に戻っています。積極的にタカ派発言を繰り返しているセントルイス連銀のブラード総裁は、米金融当局がインフレ率を2%目標に戻すには「長い道のり」があると述べ、「これは当局が慣れているペースより速く動くことを意味する。FF金利誘導目標を300ベーシスポイント引き上げた1994年―95年の引き締めサイクルが手本にすべき戦略だ」と指摘しました。クリーブランド連銀のメスター総裁も、「何回かの50ベーシスポイントの利上げが必要になる。ここから7月までの全会合を前提にするつもりはないが、後ではなく、より早い時期にもっと積極的になる必要があると考える」と年内に複数回の0.5%の利上げを支持する考えを示しました。またハト派として知られるサンフランシスコ連銀のデーリー総裁も「物価安定を確保するために必要なあらゆる措置を講じる用意がある。現時点で物価が安定していると誰も考えていないことは明白だ」として、「0.5ポイントの行動が必要なら、われわれはそれを実行するだろう」と発言しています。インフレ率は鈍化に向うとして、急激な利上げには慎重な姿勢を見せていたデーリー総裁までも50ベーシスポイントの利上げを支持する考えを示したことで、5月のFOMCでの大幅利上げの可能性が一気に高まったと思います。
現時点では、FRBが今年残り6回全ての会合で利上げを実施し、そのうち少なくとも1回は50ベーシスポイントの利上げ行う公算が高まってきました。為替は必ずしも金利だけで動くものではないものの、一方で「金利が為替水準を決める上で最も重要なファクターの一つ」であることも事実です。一旦121円台半ばまで上昇したドル円はなかなか下押ししにくくなって来たとも言えそうです。
本日のドル円は120円60銭~121円70銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は朝方、株価の大幅下落を受け120円60銭まで売られたが、その後はFOMCメンバーによる相次ぐタカ派発言で121円16銭まで反発。ユーロドルは水準を切り下げ、1.0964まで下落。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-03-24 10:00