米国に並び立つ中国の成長を捉える「深セン・イノベーション株式ファンド」、現地に根差した運用の強み発揮

 日興アセットマネジメントが設定・運用する「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」は、2021年のトータルリターンは22.61%と、類似ファンド分類(国際株式・中国・為替ヘッジなし)平均がマイナスリターンになる中で、プラスのリターンを確保した。高い企業成長が期待される「深セン市場」に上場する銘柄を中心に、米国に並び立つ経済規模を誇る中国のイノベーションを運用成績に取り込む運用を目指している。ファンド オブ ザ イヤー2021「国際株式(グローバル・除く日本)型」部門で優秀ファンド賞を受賞した。同ファンドの魅力について、同社リテール事業本部 本部付部長の庄野洋一氏に聞いた。    ――ファンドの特徴は?  当ファンドは2017年11月に設定され、中国のシリコンバレーとして知られる深センに着目し、深セン証券取引所に上場するイノベーション企業の株式を主要投資対象とし、イノベーション企業の成長を積極的に捉えるファンドです。  また、深セン以外の証券取引所にも革新的な中国企業は多く上場しており、上海市場、香港市場などに上場する中国株式にも投資します。運用は、中国株式やアジア株式に精通する日興アセットマネジメント アジア リミテッドが行います。  ――なぜ、深セン上場企業への投資にしたのですか?  中国株式と一口に言っても、中国本土の証券取引所の上場株式、そして、中国の本土以外の香港や米国といった「オフショア上場中国株式」の違いがあります。また、中国本土上場株式は、「上海」と「深セン」で違いがあります。つまり、上場市場別では、中国株式は「上海上場」「深セン上場」「オフショア上場」に大きく3つに分かれます。  それぞれ特徴はかなり異なります。「上海」は、金融、重工業、公益などのいわゆるオールドエコノミーに関連する銘柄を多く含みます。一方で、「深セン」は情報技術やヘルスケアなどイノベーションが多く生じているニューエコノミーに関連する銘柄が多いのが特徴です。「オフショア上場」は、金融、不動産、そして、アリババやテンセントに代表される消費者向けインターネット銘柄を多く含みます。  また、深センは「メインボード」と新興企業向けの「創業板」に分かれます。「創業板」は中国版ナスダックともいわれ、非常に成長力が高い銘柄が多く上場しています。深セン上場銘柄を中心に、中国イノベーション企業の高い成長を取り組もうというのが当ファンドの商品コンセプトです。  「中国製造2025」政策が打ち出された2015年頃を境に、中国は不動産・インフラ投資主導の成長から、イノベーション主導の成長へと舵を切りました。昨年来、中国政府は、消費者向けインターネット企業に対する規制強化、不動産業界に対する規制強化などを進めていますが、これは一言で言えば、痛みを伴う構造改革です。イノベーション主導への成長へのシフトが鮮明になったということだと見ています。  中国株式というと、一部メディアなどは、オールドエコノミーに多く含む上海市場、消費者向けインターネット銘柄を多く含むオフショア市場で語ることが多いと思います。実は、中国での新たなイノベーションは、深セン上場銘柄が牽引しています。それは、過去のEPS(一株当たり利益)成長の推移をみると、上海上場やオフショア上場の中国企業よりも、深セン上場の企業が高い成長を示していることからも分かります。  もちろん、上海や香港などにも革新的な企業多くあります。当ファンドの主要投資対象は、深セン上場銘柄ですが、上海や香港などに上場するイノベーション企業にも適宜、投資しており、深セン上場銘柄以外の投資機会も捉えられる商品設計になっています。  ――設定来、良好なパフォーマンスをあげている理由は?  2017年11月の設定来、米中摩擦、コロナショック、そして、ここ1年の中国政府による構造改革など多くの事象が発生し、変動の大きな動きになりました。  それでも、これらを乗り越えて、基準価額は2022年2月末時点で累積約73%の上昇となりました。また、2021年は、中国株式市場が苦戦する中でも、当ファンドは22.6%のリターンを上げることができました。好調なパフォーマンスの要因として、大きく2つあると考えています。「商品コンセプト」と「運用力」です。  「商品コンセプト」は、深セン上場銘柄を中心に中国イノベーション企業の高い成長を取り込むということで、イノベーション主導の成長を図るという中国の長期的なビジョンと合致しています。従って、当ファンドの多くの銘柄が中長期的に中国政府による政策支援の追い風を受けるはずです。  イノベーションというと、IT、情報技術分野のイメージが強く、当ファンドに現在中国政府による規制の強まっている消費者向けインターネット大手銘柄を多く含むという印象を持たれるかもしれません。実は、これらの消費者向けインターネット銘柄は、中国本土ではなく、香港や米国に上場するケースがほとんどです。当ファンドでは、情報技術分野に関して、規制強化の重しのある消費者向けインターネットサービスよりも、国策として産業育成が進む半導体やテクノロジー・ハードウェアの組み入れが多くなっています。  また、当ファンドはイノベーションに着目をしているため、米中摩擦がどうしても気になるかもしれません。ただ、実態は反対です。トランプ政権による米中摩擦があったがゆえに、中国の官民双方によるイノベーション創出への本気度が増しています。もはや、「米国産技術や部品などに頼ることはできない」ということを痛感し、中国は国産サプライヤーの育成を加速しています。  「運用力」について、当ファンドの運用チームの運用調査体制や運用プロセスがうまく機能し、超過リターンを生み出すことができていると考えています。シンガポールや香港に所属する日興アセットの中国株式運用チームメンバーをポートフォリオ構築やリサーチの中核とします。そして、中国深センを根拠とする中国本土株式の専門家集団である融通基金管理有限公司(ロントン社)のリサーチネットワークをフル活用します。  特に、深センを根拠とするロントン社との共同を通じ、地域に根ざした中国関連情報の取得や中国株式に関する深いリサーチが可能となります。中国株式は、中国経済や政策動向の影響を大きく受けるため、地域に根差した情報や会社訪問が運用において非常に重要になります。  ――個人投資家が当ファンドを保有する場合、どのような保有の仕方がよいでしょう?  当ファンドの最大の魅力は、中国の新たな成長領域へアクセスし、高い収益機会を狙っていけることにあると考えています。今後、米国を中心とした経済圏と、中国を中心とした経済圏に緩やかに分かれていくことが想定されます。米国の成長にアクセスするだけではなく、中国の成長にもアクセスすることが重要になるのではないでしょうか?  当ファンドは、これに加えて、もう一つ重要な側面があります。本土上場中国株式、特に、深セン上場株式と、米国株式を中心とする先進国株式の相関が低いという特徴があります。深セン上場株式の株価と先進国株式の株価は異なった動きをすることがあるのです。  相関が低い理由としては、中国と先進国とでは、景気サイクル、金融政策、そして、投資家層も違うということが挙げられます。外国株式部分について、米国株式や先進国株式中心の資産をお持ちのお客様が多いのではないかと思います。特性の異なる当ファンドを併せ持っていただくことで、より分散効果の高い資産構成になると考えます。状況によっては、お客様の資産全体のリスクを低下させつつ、リターンを改善することも可能になります。  現在、米国や先進国ではインフレ懸念から、利上げや金利の正常化が意識される環境になり、株式市場では特にハイテク株に対する影響を心配する声があります。一方、中国については、インフレ懸念も限定的で、景気刺激のために昨年の12月以降、金融緩和方向にシフトしています。足元、欧米と中国では金融政策の方向性が逆になっています。  中国で金融緩和の方向にあるため、当ファンドで注目するイノベーション企業など、成長株に有利な環境と言えます。従って、こういう環境の中、お客様の資産全体の分散効果を高める観点から、資産運用の一部に、当ファンドをご検討いただいてもいいのではないかと思います。  ――投資家へのメッセージは?  昨年12月以降、今年3月前半にかけて、当ファンドの基準価額は低下傾向にあります。中国経済に対するセンチメントの悪化、投資スタイルの「グロース」から「バリュー」へのローテーション、そして、直近では、ロシアによるウクライナ侵攻、および、中国国内でのコロナの深刻化などの懸念材料があります。  中国のイノベーション企業への投資は、中長期の目線で考えていただきたいと思います。これらの企業の利益成長ポテンシャルは高く、投資タイミングに関わらず、中長期的な観点で非常に有望な投資領域と考えます。当ファンドを通じて、深セン上場銘柄を中心に成長ポテンシャルの高い中国イノベーション企業へのアクセスを検討いただければ幸いです。(グラフは、「深セン・イノベーション株式ファンド」設定来のパフォーマンス推移)(情報提供:モーニングスター社)
日興アセットマネジメントが設定・運用する「深セン・イノベーション株式ファンド(1年決算型)」は、2021年のトータルリターンは22.61%と、類似ファンド分類平均がマイナスリターンになる中で、プラスのリターンを確保した。(グラフは、「深セン・イノベーション株式ファンド」設定来のパフォーマンス推移)
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2022-04-14 10:45