業界初のESGバランスファンド「ブルー・アース」、債券に小型株とリートを組み合わせる妙味とは?

野村アセットマネジメントが設定・運用する「グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし)年2回決算型(愛称:ブルー・アース)」は、2021年のトータルリターンは22.28%、上位4%(316本中第10位)だった。設定(2020年11月)来の月次リターンは、13カ月すべてで類似ファンド分類平均を上回るなど、安定的に優れた運用成績を残している。ファンド オブ ザ イヤー2021の「ESG型」部門で優秀ファンド賞を受賞した。同ファンドの運用について、同社のアドバイザリー運用部(プロダクトマネジメントグループ)ポートフォリオ・マネージャーの木下侑紀氏に聞いた。
――ファンドの特徴は?
当ファンドは、債券、小型株、リート(不動産投信)にバランスよく投資するESGのバランス型ファンドです。業界初のESGバランスファンドになります。
また、ファンドをご購入いただくことで、信託報酬の一部から地方自治体に寄付をするという寄付スキームもついています。
――2021年に優れた運用成績になった要因は?
当ファンドの資産配分が好パフォーマンスに寄与したと考えています。約50%のウェイトを占める債券から安定したインカムを得て、残りの25%ずつはパフォーマンスが堅調な小型株、リートを組み入れています。
中でも小型株とリートのパフォーマンスが昨年2021年は非常に大きなものとなりました。他のバランスファンドとは違い、あえてパフォーマンスの堅調な小型株やリートを取り入れることで、ファンドのリターンを高めることに寄与しています。
――組入株式を小型株にしている理由は?
小型株にした理由は大きく2つあります。1つは、設定の時にシミュレーションをして、通常の大型株の株式指数より小型株指数の方が、パフォーマンスが上回っていました。
2つ目が、小型株の方が大型株よりも投資妙味があると考えたからです。小型株の専属アナリストの数は大型株の約3分の1であり、業績等をフォローしているアナリストが少ないこと。また、グローバルの株式指数を構成する銘柄数は、小型株は大型株の約7倍あります。このようなことから、小型株の方に投資妙味があると判断しました。
――バランスファンドとして、小型株、債券、リートを組み合わせるメリットは?
ファンドの組み合わせは非常に良いと考えています。債券が安定したインカムとファンド全体のドローダウン(価格下落)を抑制し、小型株とリートが高いパフォーマンスを発揮することが期待できます。
また、よく金利上昇局面でのパフォーマンスについてご質問いただきますが、金利上昇は原則、債券ファンドにはネガティブと言われていますが、この「グローバルESGバランスファンド」の債券の利回りは、1月末時点で先進国社債が約3%、新興国債が約3.5%というふうに比較的高利回りの債券です。
そして、景気拡大を伴う金利上昇では、小型株、リートといった、いわゆるリスクアセットではパフォーマンスが期待できます。このように異なるアセットクラスを組み合わせることで、パフォーマンスが安定して推移することが期待できます。
――ESGの観点から、銘柄選定はどのように行なうのでしょうか?
投資先のファンドごとにESGの分析、ポートフォリオの構築を行っています。まず、債券の2ファンドは、ネガティブスクリーニングという手法を主に用います。投資対象となるユニバース全体の銘柄、社債であれば、米ドル建ての先進国社債全体、新興国の国債であれば国債全体にESGのレーティングを行い、点数を付与して、下位30%の銘柄を除外します。そして、残った銘柄の中から、アナリストがESGについての定量定性評価を行い、利回りや流動性、割安、割高などを評価してポートフォリオを構築します。
このネガティブスクリーニングを行う際の点数については、社内の専属アナリストが開発した独自のシステムを用いて行います。
そして、小型株とリートについては、運用会社であるアメリカン・センチュリー・インベストメントのESGのスペシャリストが、個別銘柄ごとにE(環境)・S(社会)・G(企業統治)それぞれのウエイト付けを行います。そして、それぞれが業界や競合他社と比較して上回っているか、下回っているかといったことを判断し、総合評価を行います。同じESGの分析プラットフォームを使っています。
――道府県への寄付スキームの仕組みと導入理由は?
まず、仕組みについてですが、ESGバランスファンドをお取り扱いいただく各地域の金融機関の販売残高に応じて、当社が得られる収入信託報酬の一部を道府県に寄付します。
導入の狙いは、地方創生のスローガンとして掲げられている「場所、地域にこだわらず誰もが学べる地域をつくる」、「豊かな自然エネルギー等をその地域で活用する」、「健康なまちづくり」といった目標は、ESGにも共通項が非常に多いと考えます。地方創生の要素にESGの要素を取り入れるきっかけを作れないかと思い、このようなスキームを考えました。この寄付スキームを通じて、持続可能な地域の活性化を目指すことができると考えています。
――昨年は非常に好成績でしたが、今後の見通しは?
シミュレーションベースでは1年間で約10%近辺のリターンを狙えるという結果になりました。ただ、あくまで過去のデータであるため、必ずこのリターンが毎年狙えるというわけではありません。例えば、昨年2021年は、年間でプラス22%という好調なパフォーマンスとなりましたが、今年に入ってからは、1月に月間でマイナス7%と比較的大きな下落となっています。長期間でならすと10%程度のリターンというふうにお考えいただければと思います。
――資産形成において当ファンドはどのように活用できますか?
長期で安定した投資をお考えのお客様に最適な商品と考えます。比較的長期での目標を掲げているESGの考え方と、リスクを分散しながら長期でリターンを積み上げる分散投資は相性の良い組み合わせだと思います。
また、ESGのテーマは若い方ほど興味をお持ちというデータもあります。10%近辺のリターン水準は、若年層、資産形成層の投資家の方にもおすすめできると思います。このように幅広い目的のお客様におすすめできる商品になっています。
――最後に投資家の方へのメッセージをお願いします。
「グローバルESGバランスファンド」は、昨年11月30日に運用開始から1周年を迎えました。ESGへの関心の高まりを背景に、世界のESG投資残高は拡大を続けています。こうした世界の流れを追い風に運用を行ってまいります。引き続き、「グローバルESGバランスファンド」をよろしくお願い申し上げます。(グラフは、「ブルー・アース」設定来のパフォーマンス推移)(情報提供:モーニングスター社)
野村アセットマネジメントが設定・運用する「グローバルESGバランスファンド(為替ヘッジなし)年2回決算型(愛称:ブルー・アース)」の運用について、同社のアドバイザリー運用部(プロダクトマネジメントグループ)ポートフォリオ・マネージャーの木下侑紀氏に聞いた。(グラフは、「ブルー・アース」設定来のパフォーマンス推移)
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2022-05-09 09:15