綿密な分析と柔軟性で安定感抜群の「ジパング企業債ファンド」、インフレ環境にも対応する運用の秘訣を聞く

日興アセットマネジメントが設定・運用する「ジパング企業債ファンド」は、2021年のトータルリターンは2.48%と、類似ファンド分類平均を4.06%上回った。類似ファンド分類内の約9割のファンドがマイナスのリターンとなる中でプラスのリターンを確保した。運用効率を測る指標であるシャープレシオは1.75と、類似ファンド分類内で第1位となり、第2位のファンドにも0.69の大差をつけて運用の効率性でも抜群の実績を上げた。ファンド オブ ザ イヤー2021「債券型」部門で最優秀ファンド賞を受賞した。同ファンドの運用の特徴について、同社資産運用アドバイザー部グループマネージャーの目片宏介氏に、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也が聞いた。
◆類似ファンドの9割がマイナスでもプラス維持
朝倉 当ファンドは、債券型ファンド1462本の中で最優秀に評価されました。2021年の運用を振り返って、当ファンドの運用の特徴を教えてください。
目片 当ファンドは、超低金利の影響で、リターンの確保が難しい国内債券投資において、日本企業や日本企業の海外子会社を「ジパング企業」と名づけ、それらの企業が発行する社債や劣後債を主な投資対象とすることで、相対的に高い利回りを確保することを目指しています。
当社の債券運用チームにより、綿密な市場分析、個別企業分析、ポートフォリオ構築、そして、モニタリングとリスク管理を徹底して行っており、それが運用成果につながったと自負しています。
2021年も、日本、米国、欧州、それぞれの債券市場、および、個別企業のファンダメンタルズを常にモニターし、魅力があると考えられる市場や銘柄への機動的なアロケーションを継続しました。2021年初めの米国金利上昇局面におきましては、これを機会として捉えまして、米ドル建て社債を積み増しました。夏頃に米国金利が低下に転じた際は、キャピタルゲインを確保しながら、米ドル建て社債のウエイトを減らしました。
また、米ドル建て債券の一部を、デュレーション(債券の償還までの期間=残存年数)が短めの銘柄に入れ替えるなど、基準価格への金利変動の影響を抑えることを意識した運用にも努めました。このような運用上の工夫と、インカム収益の積み上げによりまして、安定的なパフォーマンスを実現できたと考えております。
朝倉 非常に緻密で、かつ、機動的な運用をなさっていることがわかります。2022年に入り、世界情勢やインフレ(物価上昇)懸念から、金利を含めてかなり大きな変化が起こっています。このファンドが属するカテゴリー(国際債券・グローバル・含む日本・ヘッジあり)平均が2022年の3月末を基準として過去1年がマイナス4.56%だったのですが、このファンドはプラス0.15%でした。カテゴリー内でトップという非常に素晴らしいパフォーマンスを上げられたわけなのですが、その秘訣を教えてください。
目片 一言で申しますと、市場環境に合わせてフレキシブル(柔軟)な運用を行ってきたことだと思います。加えて、個別企業の信用調査もしっかり行ってまいりました。
2022年に入り、インフレ懸念などから、世界的に金利が大幅に上昇しました。社債市場におきましてもその影響を受けましたが、外貨建て社債より円建て社債の値動きの方が相対的に安定しています。
当ファンドでは、2021年の時点でグローバルな金利上昇リスクへの警戒から年末にかけて、金利変動の影響が比較的大きい外貨建社債のウエイトを引き下げています。一方で、金利変動の影響が比較的小さい円建て社債のウエイトを引き上げました。こういった投資行動が奏功したと考えています。
◆インフレ環境下での運用方針
朝倉 これからFRB(連邦準備制度理事会=米国の中央銀行)を含めて世界的に金利を引き上げていく見通しです。難しい環境になってくると思うのですが、金利の見通しも含めて、当面の運用方針をお聞かせください。
目片 世界的な金利の上昇に加え、足元ではロシアによるウクライナ侵攻を受けた不確実性の高まりと、世界経済の成長減速懸念などで、クレジットスプレッドも一時大幅に拡大したため、外貨建て社債の利回りは全体的に大きく上昇しました。
日本企業への直接的な影響は限定的ではありますが、日本企業が発行する社債におきましても、グローバル社債市場全体のセンチメントに影響されて、クレジットスプレッドが一時拡大しました。つまり、債券価格が下落しました。
当ファンドの運用は、今後は引き続き、金利リスクを保守的にとりつつ、クレジットスプレッドの縮小が遅れていて投資妙味が高いと考えられる銘柄を、円建て、外貨建てを問わず積極的に組み入れていきたいと考えています。その際には、引き続き個別企業の信用リスクを精査し、銘柄の分散を考慮しながら運営を行う所存です。
朝倉 本当に今年は、今後非常に難しい運用環境になってくると思います。今まである意味で、株式も債券もインデックスで運用していればいいということから、やはりアクティブに、機動的に運用していかないとパフォーマンスをあげるのは難しいんじゃないのかなと思っています。その意味では、運用実績もいいことに加え、なおかつ投資家にありがたいのは、コストが低いことです。アクティブ運用のファンドでありながら、信託報酬が低いということも魅力の一つだと思います。
目片 当ファンドの信託報酬は、日本の新発10年国債利回りの水準によって変動する仕組みとなっています。現在の信託報酬率は最低の0.23%の水準となっております。
ファンドの収益力である最終利回りは、為替ヘッジコスト控除後で、2022年3月末時点において1.91%になっています。信託報酬の0.23%を差し引いたとしても、約1.7%となるため、利回り重視のお客様やコスト意識の高いお客様にとっても魅力的な利回りではないでしょうか。
朝倉 コストが低いっていうのは非常に投資家にとってはありがたく、なおかつ、こうして運用実績もしっかりあげているので、投資家の方もますますこのファンドに期待をされていると思います。最後に、投資家の皆様にメッセージをお願いいたします。
目片 現在、投資家の皆様におかれまして、ポートフォリオの多くが外国株式に偏重してしまっている傾向が見られます。したがいまして、不安定な金融市場の環境が続いている中で、投資家の皆様の運用資産が株式市場の変動の影響を受けやすい状況になっていると考えられます。
当ファンドをお客様の資産運用のツールとしてご活用していただくことで、お客様のポートフォリオにおける債券比率が高まるため、ポートフォリオ全体のリスク分散を図ることができると考えています。
「ジパング企業債ファンド」を、より魅力的な投資対象として実感していただけますよう、今後も日興アセットマネジメント一丸となりまして、運用、並びに、情報提供に努めてまいります。今後ともご愛顧のほどよろしくお願いいたします。(グラフは、「ジパング企業債ファンド」設定来のパフォーマンス推移)(情報提供:モーニングスター社)
「ジパング企業債ファンド」の運用の特徴について、日興アセットマネジメント資産運用アドバイザー部グループマネージャーの目片宏介氏に、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也が聞いた。(グラフは、「ジパング企業債ファンド」設定来のパフォーマンス推移)
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2022-05-12 09:30