自動車のパラダイムシフトを先取る「グローバル自動運転関連株式ファンド」、飛躍的成長を捉える工夫とは?

 三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「グローバル自動運転関連株式ファンド(為替ヘッジなし)」は、2021年のトータルリターンが36.41%と、類似ファンド分類平均を12.74%上回った。3年トータルリターンの推移では、2021年12月末までの過去21カ月のうち、20カ月でプラスとなり、特に、類似ファンド分類平均が10%(年率)以上のプラスとなった直近11カ月は全ての月で同平均を上回っており、グローバル株式市場の大きな上昇局面で優位性を発揮している。ファンド オブ ザ イヤー2021「国際株式(グローバル・含む日本)型」部門で優秀ファンド賞を受賞した。同ファンドの運用の仕組みと「自動運転」の投資機会について同社グローバルパートナー運用部シニアマネージャーの蔵屋誠氏に聞いた。  ――ファンドの特徴は?  自動運転の普及により、業績の拡大が期待できる企業にグローバルで投資するテーマ型ファンドです。実質的な運用は、アメリカの独立系運用会社であるニューバーガー・バーマンが担当しています。  ――2021年の好調なパフォーマンスの要因は?  2021年の好調なパフォーマンスには4つの要因がありました。1つ目は、半導体関連銘柄への積極的な投資です。2021年は多くの国でワクチン接種が進み、コロナショックから世界経済が回復する年となりました。一方で、急激な最終需要の高まりや労働力不足から、サプライチェーン問題が表面化し、自動車業界では計画通りに生産ができない事態になりました。当ファンドでは、このような事態をいち早く想定し、ネガティブな影響を受ける自動車関連の組み入れ比率を引き下げ、ポジティブな影響を受ける半導体関連の組比率を引き上げるなど、半導体に一貫して強気な姿勢で臨んだことが好調なパフォーマンスをもたらしたと考えます。  2つ目は、環境関連への積極的な投資です。バイデン政権の誕生でアメリカがパリ協定に復帰し、COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)の開催などを受けて、主要各国は気候変動問題に積極的に取り組む姿勢を示しました。このような動きを受けて株式市場でも多くの環境関連銘柄が上昇しました。当ファンドでも2020年後半から自動運転に関係する環境関連銘柄への取り組みを積極化してきました。このような取り組みが、2021年の好成績をもたらしたと考えます。代表例としては、アメリカでレアアースの採掘・加工を手がける『MPマテリアルズ』が挙げられます。同社の株価は昨年58%上昇し、当ファンドに大きなプラス寄与をもたらしました。  3つ目は新規銘柄の発掘の強化です。新規銘柄の発掘の強化は、当ファンドにおける2021年の運用強化策の一つでした。当ファンドでは、設定当初は自動運転に使われるカメラやレーダーなどのハードウェア企業に大部分を投資していました。自動運転技術の発展に伴い、投資対象銘柄はソフトウェア関連、環境関連、自動車以外の移動運転関連などへと拡大してきました。新規銘柄の発掘を強化した結果、当ファンドの組み入れ銘柄数は、1年で44銘柄から55銘柄に11銘柄増加し、これら新規組み入れ銘柄の上昇も2021年の好調なパフォーマンスに貢献しました。  4つ目は、バリュエーション(企業価値評価)を重視した運用です。2021年はインフレ懸念の台頭から米FRB(連邦準備理事会)をはじめ、各国中央銀行が金融政策の正常化に動き出す年となりました。このため、バリュエーションが割高な長期成長銘柄が年末にかけて大きく調整することになりました。当ファンドでも割高とみられる銘柄が下落し、悪影響を受けましたが、当ファンドでは元々厳しいバリュエーション基準を採用し、割高な銘柄や赤字の銘柄の組み入れが相対的に少なかったことが好調なパフォーマンスにつながったと考えます。  ――運用の特徴について教えてください。  当ファンドの実質的な運用は、ニューバーガー・バーマンのグローバル株式調査部門が行っています。他のテーマ型ファンドと異なる特徴としては、当ファンドが調査部門のアナリスト主体で運用されている点にあると思います。  通常、ボトムアップのアクティブ運用では、ポートフォリオマネージャーが中心となり、意思決定が行われますが、同ファンドでは、産業の専門家であるアナリストの意見や投資判断が、実際のポートフォリオにより多く取り入れられるような運営がなされています。これは、当ファンドが自動運転という特殊なテーマを扱うファンドであり、変化が激しい自動運転や電気自動車の技術面をしっかりと評価することが重要であるとの考えから、専門性の高いアナリストが主体となって運用するニューバーガー・バーマンに運用をお願いしています。  実際、設定来、アナリストのファンダメンタルズ分析や、バリュエーション評価は当ファンドの好調なパフォーマンスの源泉になっていると理解しています。  さらに、2021年、ニューバーガー・バーマンが運用力強化の一環として、アジア地域の半導体と自動車のアナリストを新規で採用しました。特に、半導体のアナリストとして採用されたセバスチャン・ホー(Sebastian Ho)氏は、セルサイドの半導体アナリストとして、その調査分析能力が高く評価されており、市場関係者が注目する人物の1人であると認識しています。ホー氏の加入は、現在当ファンドが最も重視する半導体関連の調査分析能力を強化し、2021年の好調なパフォーマンスをもたらしたと判断しています。  ――自動運転の現状と今後の投資機会は?  自動運転という言葉は急速に広がり、今では一般的になりましたが、現時点で公道を走る自動運転車は実は多くはありません。自動運転はその発展段階に応じて「レベル1」から「レベル5」に分類されますが、現時点で公道を走る車のほとんどが「レベル2」に分類され、先進運転支援システム(ADAS)と呼ばれるシステムを搭載しています。  しかしながら、「ADAS」はあくまでドライバーの運転を支援するシステムです。「レベル2」では、運転の主体は依然としてドライバーである人間にあることから、自動運転には分類されません。  運転の主体が機械に移る「レベル3」以上が自動運転に分類されますが、現時点ではホンダの『レジェンド』など、高級車の一部に限られています。  また、社会的なインパクトが大きく、その実用化が期待される「レベル4」以上の完全自動運転車も現時点では限定されたエリア内でのテスト走行を行っている段階です。このように、自動運転はまだ黎明期にあるといえます。現時点で社会に与えたインパクトは限定的ですが、自動運転の普及によるパラダイムシフトは、これから起こると予想しています。  現在、2025年の実用化を目指し、「レベル4」を可能にする半導体チップの開発が進んでいます。「レベル4」になると、運転手なしで自律走行する車、いわゆる、「ロボタクシー」をはじめ、様々な革新的なサービスが登場すると期待されます。「ロボタクシー」が普及すると劇的なコストの削減により、短距離移動に革命をもたらすと言われています。格安な移動手段の出現は、自動車を個人が所有するものから、利用するものへと変え、自動車産業に創造的な破壊をもたらすと同時に、自動運転の成長ドライバーもモビリティサービスに移ると予想します。  このように、自動運転の投資機会は現在のハードウェア中心から、将来的にはソフトウェアやサービスへと拡大していくことが期待できます。当ファンドの保有銘柄も現在のハードウェア中心から、将来的には現在とまったく異なる銘柄を保有している可能性も高く、今後の自動運転の潜在的な成長余地は非常に大きいと考えています。  ――最後に投資家の方々へのメッセージをお願いします。  自動運転の普及が私達の生活に大きな変化をもたらすのは、これからが本番と考えています。今後とも、投資家の皆様のご期待に応えられるよう、ニューバーガー・バーマンとパフォーマンスの改善に取り組んでまいります。引き続き当ファンドをご愛顧いただきますようよろしくお願い申し上げます。(グラフは、「グローバル自動運転関連株式ファンド」設定来のパフォーマンス推移)(情報提供:モーニングスター社)
「グローバル自動運転関連株式ファンド」の運用の仕組みと「自動運転」の投資機会について三井住友DSアセットマネジメントのグローバルパートナー運用部シニアマネージャーの蔵屋誠氏に聞いた。(グラフは、「グローバル自動運転関連株式ファンド」設定来のパフォーマンス推移)
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2022-05-25 10:00