【為替本日の注目点】米6月のCPI9.1%に上昇

6月のCPIが市場予想を大きく上回る9.1%と発表されたことから、136円台で推移していたドル円は137円87銭まで上昇。ただその後は米長期金利の低下もあり137円台前半まで押し戻される。ユーロドルも指標発表直後にドル買いユーロ売りが加速し、パリティを割り込む0.9998を記録。株式市場は3指数が続落。ダウは208ドル下げ、4日続落。FRBが大幅な利上げに動くとの観測が重しに。債券はCPIを受け売られ、長期金利も3%台に乗せたが、景気減速が意識されその後反発。結局前日より低下し、2.93%台で引ける。金と原油はともに反発。
6月消費者物価指数 → 1.3%
6月財政収支 → -88.8b
ドル/円 136.98 ~ 137.87
ユーロ/ドル 0.9998 ~ 1.0122
ユーロ/円 137.48 ~ 138.80
NYダウ -208.54 → 30,772.79ドル
GOLD +10.70 → 1,735.50ドル
WTI +0.46 → 96.30ドル
米10年国債 -0.035 → 2.934%
【本日の注目イベント】
豪 6月雇用統計
日 5月鉱工業生産(確定値)
米 6月生産者物価指数
米 新規失業保険申請件数
米 ウォラーFRB理事講演
米 企業決算 →JPモルガン、モルガンスタンレー
非常に注目度の高かった今回の米6月CPIでしたが、結果は前年同月比で「9.1%」と市場予想の「8.8%」を上回り、前月比でも「1.3%」でした。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIも、前年同月比「5.9%」、前月比「0.7%」と、全て市場予想を上回る結果でした。「米国の物価上昇は収まるどころか、さらに上昇の勢いを増している」との声も聞かれました。異例なことですが、CPI発表から約1時間後にバイデン大統領は声明を発表しました。6月のインフレ率について「容認し難いほど高い」としつつも、「今日のデータは、ここ30日近くにわたるガソリン値下がりの影響を完全には反映していない。ガソリンスタンドでの価格は6月半ば以降、約40セント下がっている」と述べました。その上で、「こうしたガソリンの値下がりで、米国の家計には一息つく余裕が生まれている」と語っています。(ブルームバーグ)米大統領がCPIの発表直後に、その結果について言及したことは筆者の記憶にはありませんが、それほど関心を示していたことと、支持率に直結してくるだけに何としても止めたいという気持ちの表れなのでしょう。先日この欄でも触れた、NYタイムズとシエナ大学が行った調査でも、バイデン氏を支持しない理由の一つに足元の急激な物価上昇を挙げています。
6月のCPI発表を受け、金融市場も大きく乱高下しています。発表前には136円台後半で推移していたドル円は直後に137円87銭まで買われ、今週月曜日に記録したドルの高値をわずかですが更新しました。下落の続いていたユーロドルはパリティを割り込み、0.9998と、約20年ぶりの低水準を付けました。わずか2ポイントだけ下回ったのは「ご愛嬌」ですが、ドイツを中心にユーロ圏の景気鈍化が深刻化していることを反映しています。CPIの結果を見れば当然の動きかとは思いますが、なかなか理解できないのがその後の動きでした。ユーロドルは「達成感」が出たのか、その後大きく反発し1.0122近辺まで買い戻され、ドル円も137円台前半まで押し戻されています。一時は3%台を回復した10年債利回りも2.93%台まで低下し、結局前日よりも低い水準で取引を終えました。
CPIの上昇が止まらず、FRBにはさらに積極的に金利を引き上げなければならないプレッシャーがかかるとの見立てから、景気の「オーバーキル」への懸念も台頭し、これが株安、債券高、金利低下に伴うドル下落につながったと思われます。今後は、米金利の上昇がドル高につながる一方、急激な利上げが景気を押し下げ、リセッションに入る可能性があることも認識しておくことも重要かと思います。この日の短期金融市場ではオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)は大きく上昇し、今月のFOMCでの0.75ポイントの利上げをほぼ織り込み、4分の3前後の確率で利上げ幅が1.00ポイントとなることを示唆しています。一部のマーケット・エコノミストは今月の会合で「100bpの利上げという歴史的な決定がある」といった方向に傾きつつあります。6月のCPIを受けて、アトランタ連銀のポスティック総裁はフロリダ州で記者団に対して、「CPIの数字は懸念すべき要素だ」とし、「あらゆる行動が考慮される」と説明しました。そうした行動に1ポイントの利上げが含まれるのかという質問には、「全てという意味だ」と答えています。(ブルームバーグ)今月会合では0.75ポイントの利上げが確実になったと思われ、タカ派的な見方をすれば1ポイントの利上げも考えられ、9月会合でも0.75ポイントの利上げといったシナリオもあるかもしれません。それほど今回のCPIの結果はインパクトがあったと考えます。
本日から米企業の四半期決算の発表が始まります。先ずは先陣を切って、JPモルガンなどの金融機関の発表が相次ぎます。今四半期はほぼ全ての金融、商品市場が大混乱に陥り、大きな値動きを見せました。各行ともトレーディング部門の収益が好調と予想されます。
本日のドル円は136円70銭~138円20銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
6月のCPIが市場予想を大きく上回る9.1%と発表されたことから、136円台で推移していたドル円は137円87銭まで上昇。ただその後は米長期金利の低下もあり137円台前半まで押し戻される。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-07-14 10:15