【為替本日の注目点】ドル円一時131円台後半まで売られる

ドル円は7月のPPI発表後に急落。131円74銭まで売られ、10日ぶりの円高水準を記録。その後は長期金利の上昇にドルを買い戻す動きが急速に強まり133円台まで反発。前日1.03台半ばまで買われたユーロドルは上昇したが、この日も同水準までの上昇にとどまる。株式市場はまちまちながらダウは続伸。長期金利の上昇にナスダックは下げ、S&P500はほぼ横ばい。債権相場は大きく下げる。長期金利は2.88%台まで上昇。金は4日ぶりに反落。原油は続伸し94ドル台を回復。 7月生産者物価指数   → -0.5% 新規失業保険申請件数  → 26.2万件 【本日の注目イベント】 欧 ユーロ圏6月鉱工業生産 英 4-6月GDP(速報値) 英 6月鉱工業生産 英 6月貿易収支 米 7月輸入物価指数 米 8月ミシガン大学消費者マインド(速報値) 米国のインフレ関連指標の結果を受け、ドル円は大きく上下しています。前日10日の動きから振り返ってみると、7月のCPIは市場予想の「8.7%」を下回り「8.5%」でした。コア指数も予想を下回ったことでドル円は135円近辺から132円ぎりぎりの水準まで一気に売られました。どちらかと言えば、上値の方にリスクがあると予想していましたが、残念ながら外れてしまいました。ドル円はその後133円台まで値を戻し、昨日は東京市場が祝日だったこともあり、概ね133円台で推移していましたが、NYでは再びドルが急落しました。 7月の生産者物価指数(PPI)が前月比「マイナス0.5%」と、市場予想の「+0.2%」を下回り、コロナ禍の初期以来のマイナスとなり、2年ぶりの低下となりました。前日のCPIに続き、PPIも低下したことで、FRBが大幅な利上げを回避できるとの見方が強まり、ドル円は一気に131円74銭まで売られましたが、その後は米長期金利が大きく上昇したことに引っ張られ133円前後まで反発しています。まるでシーソーの様に上下に揺れ動き、荒っぽい展開でした。システム売買が活発になり、ヘッドラインだけで瞬時に売買を行う取引が増え、さらに今年のドル円はボラティリティが高く、利益が取れる機会が多くなったため、投機筋にとってもドル円は「主役の座」に近い位置を占めているものと思われます。加えて、個人投資家の参入も増えており、これらがドル円の大きな値動きを醸成しているものと思われます。正に「熱い夏の夜」といった様相です。 10日のCPI発表後にNY株は急上昇をみせましたが、昨日のPPI後にはダウ以外は売られました。CPIの低下に過剰反応したといったところですが、その前の週末の雇用統計発表直後の反応と真逆の動きでした。それは、米国のインフレの行方が市場の最大の関心事であることの証左であって、為替も株も債券も、あるいは金や原油についても、ほぼ全ての相場の動きを決定するからです。インフレの高進が続いていた米国で、ようやくトンネルの前方に明かりが見えてきたといった状況ですが、ただインフレ率の低下はまだ1カ月を確認しただけです。今後もこの傾向が続くようならFOMCでの大幅利上げの継続は回避できそうですが、まだその判断は早計です。サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は英フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで、「インフレは依然として高水準にあり、われわれの物価安定目標にはほど遠い」と述べ、「高水準にあるインフレとの闘いで米金融当局が勝利宣言するのは時期尚早だ」と語っています。また9月のFOMCについては、「9月に0.5ポイントの利上げが自身の基本シナリオだ」と説明しています。(ブルームバーグ)全米自動車協会(AAA)のデータでは、米国のガソリン平均小売価格は1ガロン3.99ドルに低下し、3月上旬以来となる低水準になっていますが、まだFRBが金融引き締めの手綱を緩める段階ではないと言えるでしょう。 クリミア半島のロシア軍基地で9日に起こった爆発で、少なくとも8機のロシア軍機が破壊されたと報じられています。詳細は分かっていませんが、ウクライナの特殊部隊が関わっているとされています。ゼレンスキー大統領は10日夜のビデオ演説で、「ロシア軍はクリミア半島で航空機9機を失い、ザポリージャ地方でもう1機失った」と述べています。まもなくロシアのウクライナ侵攻から半年が経とうとしていますが、事態は一向に解決しません。米国はウクライナへの軍事面での支援を継続する意向を示しており、欧州各国はこの冬のエネルギー不足への対応を今から準備しています。このままでは再びあの厳しい冬の環境下での殺戮が続く可能性が高いようです。 引き続き荒っぽい動きを見せるドル円は、今後も現在の上昇トレンドを維持できるかどうかという意味でも非常に重要な水準にいます。今月2日には130円台半ばまで売られ、日足の「雲の下限」を一旦は割り込みましたが、その日のうちに133円台まで反発したことで、結果的には「雲の下限が抵抗線となり押し戻された」形になっています。昨日は131円台後半まで売られましたが、今度は見事に「雲の下限」で下げ止まり、再び押し戻される展開でした。結局、現時点では「日足の雲が機能している」ことになります。ただ注意したいのが、この雲を構成する「先行スパン1」が「先行スパン2」を上から下へと割り込んできたという現象です。つまり「雲の逆転」が起きたことになり、これは昨年10月以来のこととなります。相場の先行きを示す「先行スパン」がドルの下落を示したこととなり、これは今後も注意深く見ておく必要があります。 本日のドル円は132円~134円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は7月のPPI発表後に急落。131円74銭まで売られ、10日ぶりの円高水準を記録。その後は長期金利の上昇にドルを買い戻す動きが急速に強まり133円台まで反発。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-08-12 10:15