【為替本日の注目点】ドル円3週間ぶりに137円台に乗せる

ドル円は続伸し約3週間ぶりに137円台に乗せる。FOMCメンバーのタカ派的な発言もあり、長期金利が一時3%に迫る水準まで上昇したことで137円22銭までドル高に。ユーロドルも続落。1.0032まで売られ、7月15日以来となるユーロ安水準を付ける。株式市場は3指数が揃って売られる。長期金利の上昇にナスダックは260ポイントの下落。債券は反落。長期金利は一時2.99%台まで上昇し、2.97%台で引ける。ドル高が進む中、金は5日続落。原油は3日続伸。 ドル/円    136.73 ~ 137.22 ユーロ/ドル  1.0032 ~ 1.0068 ユーロ/円   137.28 ~ 137.86 NYダウ  ―292.30 → 33,706.74ドル GOLD    ―8.30 → 1,762.90ドル WTI     +0.27 → 90.77ドル 米10年国債 +0.090 → 2.972% 【本日の注目イベント】 米韓合同軍事演習(9月1日まで) 先週末のNYではドル円が7月27日以来となる137円台を回復し、一時は137円22銭までドル高が進みました。今月2日には130円台半ばまでドル安が進み、市場では「ドル高トレンドは終わった」といった見方が急速に高まりましたが、筆者は「まだ終わっていない」との見方を維持し、その根拠にも触れてきました。(参照:8月2日付け「今日のアナリストレポート」)ドル円は結局130円を割り込むことなく137円台まで反発したことになります。セントルイス連銀のブラード総裁が9月のFOMC会合では0.75ポイントの利上げを支持する考えを改めて表明したほか、リッチモンド連銀のバーキン総裁は講演で、「われわれはインフレ率を目標の2%に回帰させることをコミットしており、その達成に向けて必要な措置を講じる」と語り、「インフレを抑制する道はあるが、その過程でリセッションが起きる可能性もある」と述べています。 先週末のNYでは、リスク回避の流れが強まり、株式と債券が売られ、金利が上昇したことでドルが買われ、金が売られています。今週は26日にカンザスシティー連銀主催で、夏の恒例イベントとなっている「ジャクソンホール」での経済シンポジウムがあり、ここでのパウエル議長の講演が最大の注目イベントとなっています。パウエル議長は26日午前10時(日本時間同午後11時)に講演を行う予定ですが、9月のFOMCを前にどのような考えを示すのか市場は注目しています。先週の幾人かのFOMCメンバーの発言では、メンバーの中でも意見が分かれていたことが判明したことも、より注目度を高めています。ブルームバーグ・エコノミストは「タカ派に傾く可能性がある」と分析していますが、それでも9月の利上げ幅に言及することはないとみられます。7月の強い雇用統計が発表された一方、CPIとPPIは低下傾向を見せるなか、9月の利上げ幅が0.5ポイントになるのか0.75ポイントになるのかが焦点です。基本的には会合までに発表されるデータ次第ということになるとは思いますが、議長はインフレ抑制への強い意志を示すと同時に、ここで手綱を緩めることはないはずで、その意味ではタカ派寄りの発言になりそうだと、個人的にも予想しています。 ウクライナの南部クリミア半島でロシア軍施設での爆発が相次いでいます。公式には認めていないものの、ウクライナ軍による攻撃とみられています。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は「今後も(攻撃が)増える」と述べ、ロシアとの協議再開はロシア軍の同半島を含む「全土からの完全撤退が条件だ」と、日経新聞の取材に答えています。またゼレンスキー大統領は「ロシアがザポリージャ原子力発電所で核の恐怖を続ければ、今年の夏は欧州の歴史の中で最も悲劇的なものになる恐れがある」と警告しています。西側当局者の分析によれば、このところロシア側の軍事作戦はほぼ停滞している模様です。バイデン政権はウクライナへの7億7500万ドル(約1062億円)の追加軍事支援パッケージの一環として、地雷除去用の車両や無人偵察機などの兵器を供与する計画だと、米国防総省は発表しています。 中国四川省は21日、7月からの猛暑と降雨不足にエアコン使用のための需要急増が加わり、電力不足が「極めて顕著だ」とし、電力不足に対応するため、工業向け電力の供給制限措置を延長し、最高レベルの緊急対策を発動しました。この地区では電気自動車(EV)用のバッテリーやソーラパネルの生産設備が集中しており、日本のトヨタ自動車や米テスラなど、多くの企業が生産中止に追い込まれています。中国では電力不足以外にも、新型コロナウイルスの感染拡大を受けロックダウンに踏み切るなど、国内景気だけではなく、世界の景気動向に与える影響も大きいとみられます。 上でも触れましたが、ドル円は今月2日に一時、「日足の雲の下限」を割り込む場面がありましたが、その日のうちに133円台まで反発したことで「長い下ヒゲ」を示現させ、このレベルでは買い圧力の強いことが確認された形になっています。チャートでは結局、雲の下限に抑えられて反発した形状を残し、137円台まで反発したことで今度は、「雲の上限」を抜け切れるかどうかの段階に差し掛かっています。ドル円は市場のセンチメントに大きく左右されています。インフレ率の低下やリセッションを示すデータが出ると、大きくドル売りに傾き、反対にタカ派観測が強まるとドル買いが一気に増えます。言ってみれば、市場参加者はそれほど先行きが読めないということです。今週のジャクソンホールとPCEデータ、そして来週2日の雇用統計、さらにはCPIを経て9月のFOMCが控えています。為替市場の「残暑」はまだまだ続きそうです。 本日のドル円は136円10銭~137円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は続伸し約3週間ぶりに137円台に乗せる。FOMCメンバーのタカ派的な発言もあり、長期金利が一時3%に迫る水準まで上昇したことで137円22銭までドル高に。ユーロドルも続落。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-08-22 10:00