【為替本日の注目点】WTI原油価格5ドルを超える急落

138円台前半で取引が始まったドル円は、好調な労働市場を示す指標や、連銀総裁の相次ぐタカ派発言を受け上昇。一時は139円08銭まで買われ、138円台後半で引ける。ユーロドルはドイツのCPIが上振れしたことから買われ、再び1.00台まで上昇したものの続かず。株式市場はFRBが大幅な利上げを継続するとの見方から3指数が続落。ダウは308ドル下げ、先週末のジャクソンホール以降約1500ドルの大幅下落。債券は横ばい。長期金利も変わらず3.10%台で推移。金は3日続落。前日大きく買われた原油は急反落。世界的な景気後退で原油消費量が減少するとの見立てから5ドルを超える下げに。 6月ケース・シラ-住宅価格指数      →  18.65%(前年同月比 6月FHFA住宅価格指数         →  0.1% 8月コンファレンスボード消費者信頼感指数 →  103.2 ドル/円   138.18 ~ 139.08 ユーロ/ドル 0.9983 ~ 1.0041 ユーロ/円  138.51 ~ 139.21 NYダウ -308.12 → 31,790.87ドル GOLD  -13.40 → 1,736.30ドル WTI    -5.37 → 91.64ドル 米10年国債    ±0 → 3.102% 【本日の注目イベント】 日 7月鉱工業生産 中 8月中国製造業PMI 中 8月中国サービス業PMI 独 8月雇用統計 欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(速報値) 米 8月ADP雇用者数 米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演 米 ボスティック・アトランタ連銀総裁講演 米 8月シカゴ購買部協会景気指数 ジャクソンホール以降、再び「好材料は悪材料」といった構図が強まってきました。昨日のNYでは、それまでのアジア、欧州市場では上値を抑えられる展開で推移していたドル円は、138円台前半でオープンを迎えました。その後労働市場の好調さを示す指標が発表されると買いが強まり、午前中には139円台に乗せ、一時は139円08銭と、今週月曜日の東京時間に記録した139円ちょうどを上抜けました。ただ、その後は一進一退で、高値圏で推移してはいたものの、上昇の勢いは見られませんでした。 良好な経済指標は、FRBが積極的な利上げを続ける根拠の一つとなり、ドル円が買われる構図です。この日はドイツの8月の消費者物価指数(CPI)も「8.8%」と発表され、米国のそれを上回る数字でした。ユーロドルもこの発表後に買われ、結局欧米では今後大幅な利上げが避けられないことから、日銀との政策の違いが意識され「円全面安」の展開でした。さらにこの日はFOMCメンバーによる講演では、ジャクソンホールでのパウエル議長の講演内容と足並みを揃えるように「タカ派的」で、これもドルを押し上げ、株価の大幅安につながっています。主要中銀がインフレ抑制に全力を注ぎ、敢えて景気の減速を強めるとの観測からWTI原油先物市場では原油が大きく売られ、前日比5ドル37セント(約5.5%)も下げています。この日はハンガリー中銀も基準金利を1%引き上げ、今後もイギリスやカナダ、あるいはスウェーデンなどが大幅な追加利上げに踏み切る可能性が高く、それら中銀と異なる日銀の政策スタンスがさらに際立ってきました。 NY連銀のウイリアムズ総裁はウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙主催のバーチャルイベントで、「いくらか景気抑制的な政策を講じて需要を減速させる必要があり、まだそこには到達していない」と述べ、9月のFOMCでの利上げ幅はデータの全体像次第だとしながらも、「抑制的な水準の維持は2023年末まで続く可能性がある」と語っています。また、リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「われわれはインフレ率を目標の2%に戻すことをコミットしており、そのため必要な措置を講じる。金融当局が物価抑制に向けた取り組みでひるむことはない」と、やはりタカ派的な発言を行っています。アトランタ連銀のボスティック総裁はややニュアンスを異にしており、「今後の指標がインフレの鈍化が始まったことを明確に示すようなら、利上げ幅をここ最近の75bpから巻き戻す理由になるかもしれない」と述べていますが、「どんなデータが出て来るか見極める必要がある」としています。(ブルームバーグ) 9月のFOMC会合では0.75ポイント利上げの可能性が徐々に高まって来た印象ですが、ドイツのCPIが高水準だったことを受け、ECBにも大幅な利上げ圧力が強まってきました。ECBの政策メンバーであるミュラー・エストニア中銀総裁は「インフレ見通しが改善していないことを踏まえると、0.75ポイントは9月の選択肢の一つに入るだろうと」と語り、同じく同メンバーのバレス・スロべニア中銀総裁も、「7月に実施した0.5ポイントの利上げより大幅となり得る利上げを、来週の政策委員会で支持する」と述べています。米国だけではなく、ユーロ圏でも0.75ポイントの利上げの可能性が強まってきました。仮にECBが0.75ポイントの利上げを決めれば、通貨ユーロ発足以来、初めてのこととなります。 今朝の報道で、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領の死去が伝えられています。同氏がソ連で拘束された際には、筆者も現役で、第一線で為替の売買を行っていましたが、懐かしい思いもします。一方ロシア・ウクライナ戦争では、ウクライナがロシアへの反撃を強め、クリミアへ通じる要衝であるヘルソン州で強硬策に出ている模様です。ウクライナ軍が米国から供与された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使って、遠隔地からロシア軍の軍事施設を攻撃しており、ロシア軍の被害も拡大しているようです。 本日のドル円は138円~139円50銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ・メディア事業部)(イメージ写真提供:123RF)
138円台前半で取引が始まったドル円は、好調な労働市場を示す指標や、連銀総裁の相次ぐタカ派発言を受け上昇。一時は139円08銭まで買われ、138円台後半で引ける。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-08-31 10:15