【為替本日の注目点】ドル円は143円台で落ち着いた動きに

ドル円は久しぶりに小動き。143円台前半から後半まで上昇したが144円には届かず。長期金利の上昇がドルの支えに。ユーロドルは景気後退と金利上昇観測を手掛かりに、パリティを挟みもみ合いが続く。株式市場は3指数が続落。ダウは173ドル下げ、今週の大幅安の余韻が残る。債券は反落。長期金利は3.44%に上昇。金は3日続落。金利高とドル高の影響から金から資金が流出との見方。一時は1668ドル台まで売られ、2020年4月以来の安値に沈む。原油も世界景気の減速懸念から大幅に下落。
9月NY連銀製造業景況指数 → -1.5%
8月小売売上高 → 0.3%
9月フィラデルフィア連銀景況指数 → -9.9
8月輸入物価指数 → -1.0%
8月輸出物価指数 → -1.6%
8月鉱工業生産 → -0.2%
8月設備稼働率 → 80.0
新規失業保険申請件数 → 21.3万件
ドル/円 143.16 ~ 143.73
ユーロ/ドル 0.9980 ~ 1.0018
ユーロ/円 143.16 ~ 143.68
NYダウ -173.27 → 30,961.82ドル
GOLD -31.80 → 1,677.30ドル
WTI -3.38 → 85.10ドル
米10年国債 +0.045 → 3.449%
本日の注目イベント
中 中国8月小売売上高
中 中国8月鉱工業生産
欧 ユーロ圏8月消費者物価指数(改定値)
欧 NATO会合(エストニア、18日まで)
英 英8月小売売上高
米 9月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
加 カナダ8月住宅着工件数
昨日のNYは比較的静かな取引きに終始したようです。朝方の東京市場では143円を割り込み、142円80銭近辺まで売られる場面もありましたが、その後は143円台に戻し、その流れが海外でも維持された格好です。日銀の「レートチェック」が話題になり、個人投資家からも市場介入の可能性性について問い合わせもあり、警戒感はあるものの徐々に消化している状況です。
政府日銀は145円に迫る円安を放置できないとして、14日には市場介入を匂わす「レートチェック」を行いました。仮に日銀が市場介入しても、その効果は限定的だと昨日のコメントで述べましたが、根本的な要因は、米国がインフレを抑制するため大幅な利上げを継続する一方、日本ではいまだにゼロ金利政策が取られていることに大きな差があり、これが円安の最大の理由になっています。加えて、15日に発表された8月の貿易収支では13カ月連続の「貿易赤字」となり、赤字額は比較可能な1979年以降単月で「過去最大」でした。輸出も増えてはいますが、輸入はそれを上回るペースで拡大しています。資源価格の高騰に加え円安が拍車をかけており、原油と原粗油は90.3%増え、LNGでは2.4倍、石炭は何と3.4倍に増え、8月の貿易赤字額は2兆8173億円でした。赤字額が増えると、単純に言えば市場でドルを買う人が増えるということになり、上記金利差以外の「構造的要因」となっています。仮に市場介入で短期的にドルを押し下げたとしても、この「構造的な要因」が解消されないかぎり、円安の流れは簡単には止まらないのかもしれません。もっとも、円安がさらに大幅に進めば海外生産を行っているメーカーも採算が取れなくなり、国内に生産拠点を回帰させる動きも徐々に出てくるかもしれません。そうなると、国内で人員不足がさらに高まり、賃金の上昇にもつながる可能性がありますが、やや時間の長い話になります。
いよいよ来週にはFOMCが始まり、21日には政策金利の発表があります。現時点での予想は、0.5ポイントの利上げの可能性はほぼ「ゼロ」と見て良く、0.75か、1.0ポイントの利上げ幅に絞られます。米国ノムラやJPモルガンなどが、1ポイントに傾いているようですが、基本は依然として0.75ポイントの利上げということかと思います。筆者も0.75ポイントの予想を維持しています。FOMCで1ポイント利上げといったサプライズの可能性も全くないわけではないと思われますが、冷静に考えれば、0.75ポイントでも通常の3倍であり、しかも3会合連続ということになり、かなりタカ派的行動ということになります。サマーズ元財務長官などは、早めの行動がより効果的だと言及していますが、FRBが3月に利上げを開始してからすでに2.25%に達しています。大きく売られているNY株式市場の状況を考えると、FRBが1ポイントの利上げを行うリスクは取れないのではないかと考えます。仮に1ポイントの利上げを決定したら、NYダウは再び1000ドルの下げを見せる可能性もあり、ドル円は145円を超えて上昇することになりそうです。ブルームバーグは、「インフレの筋道を変えるには政策を引き締める必要があることを金融当局は分かっている。そしてそれはまだ始まっていない」、「遅れを取り戻そうとしている状況だ」といった、KPMGのチーフ・エコノミストのコメントを紹介しています。
中ロ首脳会談がウズベキスタンで行われました。プーチン氏は、「ウクライナ危機について中国の友人たちが示すバランスの取れた姿勢」をたたえる一方、「米国とその衛星国による台湾海峡での挑発」を非難しました。習氏はプーチン氏を「旧友」と呼び、「両国それぞれの中核的利益に関する問題について、強力な相互支援を拡大する用意がある」と述べています。ウクライナ南部でロシア軍の形勢が急速に悪化している状況に直面しているプーチン氏にとって、中国の後ろ盾が欲しいということでしょう。中国にとっても、ロシアの窮地を外交上の手段としてうまく使いたい思惑がありそうです。
昨日は多くの経済指標が発表されましたが、雇用の方は引き続き拡大傾向を維持しているようです。NY連銀製造業景況感指数など、その他の指標では明らかにブレイキがかかっている状況がうかがえますが、同時に底堅さも示しています。本日はミシガン大学消費者マインドの結果が注目です。予想レンジは142円50銭~144円50銭程度とします。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は久しぶりに小動き。143円台前半から後半まで上昇したが144円には届かず。長期金利の上昇がドルの支えに。ユーロドルは景気後退と金利上昇観測を手掛かりに、パリティを挟みもみ合いが続く。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-09-16 10:15