不透明な投資環境で重要性を増すリスクコントロール「マイ・ウェイ・ジャパン」の低リスク・高効率運用に注目~

 インフレの進行や米国の急速な利上げによるリセッション(景気後退)懸念など、足元の運用環境は不透明となっている。これまで、米国株を中心に運用してきた投資家は、株価が軟調に推移する中、大いに頭を悩ませている人も少なくないだろう。これからの資産運用を考えるにあたり、現在の環境にどのように対処すればよいのかについて、三井住友DSアセットマネジメントで日本株の運用を行い、マーケットニュートラル戦略を用いたファンド「マイ・ウェイ・ジャパン」の運用を担当する同社運用部市場型グループシニアファンドマネージャーの富松正雄氏(写真:左)と、独立系投資助言会社で個人投資家等へのアドバイスを行うイデア・ファンド・コンサルティング代表取締役社長の吉井崇裕氏(写真:右)が対談した。 ◆米国の株安で浮上する日本株の魅力 吉井 2022年に入り、米国のハイテク・グロース(成長)株が崩れたことで、今後の対応をどうすればよいかという相談が増えています。過去10年を振り返ると、米国株のパフォーマンスが非常に良かったのですが、2022年の年初から軟調に転じました。そのため、これまではあまり問題にされてこなかった米国株のバリュエーション(株価評価)の高さが意識されるようになってきました。  私は、常に運用はポートフォリオで考えることをアドバイスしています。日本株も株式のグローバルな分散の一部、一つの地域という位置づけです。米国株のバリュエーションが高くて買いにくいと感じる投資家には、相対的に割安な日本株や新興国株が魅力的にみえると思います。また、これまでの米国株は、グロース株が主導する市場でした。市場は常に変化するものですから、何か1点に集中するのではなく、様々な観点で資産や地域を分散し、ポートフォリオとして管理していくことが重要だと思います。 富松 これまでは米国グロース株のパフォーマンスが突出していました。しかし、米国金利の上昇を機に米国株の上昇が崩れたため、日本株の魅力が相対的に上がってきているのが現状だと思います。実際に2022年の年初以降でみると、米国株と比較すると日本株のパフォーマンスは堅調に推移しています。これまで米国株が集中的に買われてきたという点から、需給関係で考えても日本株が優位といえるタイミングではないでしょうか。  ただ、日本株は「グローバル景気敏感株」といった性格があります。足元の状況は、世界的に景気後退局面に向かっている状況であり、今後を見通すと、日本株に全面的に強気になれる環境ではないと思います。現在の円安は、輸出関連企業にとっては業績の上方修正要因ですが、それ以外の企業にとっては、エネルギー価格や穀物価格の上昇といったコストアップ要因であり、業績の足を引っ張ることになりそうです。日本の株価指数は難しい展開が続くと考えています。 ◆株式への集中投資、過度なリスクテイクを抑える工夫 吉井 お客様の相談を受けて困るのは、この10年くらいが株高の時代でしたから、株式に強気の見方をする方が非常に多いことです。多少下がっていても、すぐに高値を取り返すだろうという考えなのです。株式の保有比率が高い方が多く、リスクを取り過ぎていると感じる方が少なくありません。そのため、株式ばかりではなく、債券や債券の代替となる資産にも投資するようにして、全体的なリスク量を下げる提案をすることが多いです。リスク許容度は人それぞれであり、よく聞いてみると実はそれほどリスクを取れる方ではないということが多いです。ですから景気後退が懸念されるこの局面で皆さまが株式に偏重したポートフォリオになっていることを心配しています。 富松 株式の市場リスクを極力とらない運用として、「マイ・ウェイ・ジャパン」のようなマーケットニュートラル戦略は有効だと思います。当ファンドは、「日本株MNマザーファンド」で現物株式のポジションを取り、それとほぼ同金額のTOPIX(東証株価指数)先物を売り建てる戦略で、実質的な株式のポジションはゼロに近くなります。現物株のポートフォリオのリターンが、TOPIXのリターンを上回った部分を運用収益として獲得するスキームとなっており、株式市場の変動リスクの低減を図りつつ、安定した収益を獲得することを目指しています。株式市場の上昇・下落にほぼ関係なく、収益の獲得が期待されるところが最大のポイントとなります。反面、現物株のポートフォリオのリターンがTOPIXのリターンを下回った場合には基準価額が下落するリスクもあるため、現物株運用の巧拙が重要となります。 吉井 「マイ・ウェイ・ジャパン」のパフォーマンスをみると、2022年8月末現在で過去1年間の年率リスク(標準偏差)が2.70%と債券並みに低い水準です。リターンが2.74%ですから、運用の効率性を示すシャープレシオ(リターン/リスク)が1.02という値になっています。足元、債券では安定的な運用成果がなかなか得られない環境下でシャープレシオが1を超えるような効率的な運用を実現しています。  特に、リスクの点では、過去3年(年率)、過去5年(年率)と遡っても2%台と非常に低い水準にコントロールできているので、リスクの高い運用に傾倒している方には、ぜひ、リスクを抑えるという観点で活用していただきたいと思います。 富松 「マイ・ウェイ・ジャパン」は、機関投資家向けに提供していたマーケットニュートラル戦略がベースになっています。私が担当する類似ファンドは、2002年9月に設定され、既に約20年の運用実績があります。この戦略の2003年4月から2022年3月までの月次データ(信託報酬控除後、分配金再投資データ)に基づいてリスクを計算すると2.43%になります。同期間の国内債券のリスクは1.93%となっており、債券並みにリスクを抑えた運用となっています。低金利環境が続いてきた中で、国内債券運用の代替商品として一定の評価を頂いています。  マーケットニュートラル戦略のファンドは絶対収益型に分類されるため、当ファンドの運用にあたっても、安定的なリターンを追求しつつ、ダウンサイドリスクを極力抑えることを意識しています。 ◆安定的な収益確保を目指す運用のポイント 吉井 マーケットニュートラル戦略でマイナスリターンにならない運用とは、現物株式の運用成績が、売り建てている株価指数(TOPIX)を安定的に上回る運用を実現することだと思います。それを実現するため、現物株式の運用では、どのような点に注意しているのですか? 富松 安定的なパフォーマンスを実現するために、リスクとリターンのバランスを常に意識しながらポートフォリオを構築することを心がけています。投資スタイルは「バリュー(割安株投資)」と「グロース(成長株投資)」の両方のスタイルを使い、業種別の配分や個別銘柄の投資ウエイト、規模別の配分などを、経済情勢や市場環境などを踏まえて決定しています。ポートフォリオの微調整は日々行っていますが、株式市場の大きなトレンド変化が予測される場合には、ポートフォリオを大きく見直すことで対応しています。そのため、売買回転率は比較的高い運用となっています。また、いつも株価指数に対して超過収益を期待できる市場環境とは限りませんから、リスクを取るべき局面を慎重に見極めることも重要だと考えています。  市場には様々な投資家が参加しており、日々変化しています。市場に向き合う際には、自らの意見だけに固執することなく、常に異なる考えも意識することが大切だと考えています。当ファンドの運用にあたっても、日頃から1人だけで考えるのではなく、多様な投資アイデアを持ち寄って検証するといったチーム運用の強みが活かせていると思います。 吉井 リスクを分散するという考えは、不安定な市場環境において非常に大事なことだと思います。私どもに運用の相談に来られる方は、退職前後の方々が多いのですが、退職金などまとまった資金を運用することを考えると過度なリスクを取れる人は少ないと思います。そこで、株式だけではなく債券への投資を含めた分散投資を提案するのが一般的です。ただ、現在のような政策金利の引上げ局面では、債券への投資リターンが金利上昇でマイナスになってしまう懸念があります。そこで、債券に近いリスク水準で安定的な運用実績のある「マイ・ウェイ・ジャパン」は、分散投資をするうえで債券の代替としても有効な投資手段になると思います。 富松 分散投資の観点では、機関投資家向けに運用している類似ファンドと伝統4資産の相関係数(値動きの連動性を表す指標)を求めると、国内株式とは0.19、国内債券とはマイナス0.15、外国株式(MSCIコクサイ・インデックス(配当込み、円ベース))とは0.20、外国債券(FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ベース))とは0.03という結果になりました。4資産のどれをとっても非常に低い相関関係になっています。  また、現在の運用環境は米欧の利上げ、その背景にある世界的なインフレ、加えて、ウクライナ紛争によってロシアやロシアとの関係を深める中国などと西側諸国との間に対立の構造ができるなど、不透明な要因が多く、運用環境としては難しい局面にあると思います。このような局面では、価格変動リスクを抑えた「マイ・ウェイ・ジャパン」のようなマーケットニュートラル戦略は、資産の安定的な運用に効果的だと思います。ぜひ、運用資産の一部に「マイ・ウェイ・ジャパン」を加えることをご検討ください。(情報提供:モーニングスター社)
「マイ・ウェイ・ジャパン」の運用を担当する三井住友DSアセットマネジメント運用部市場型グループシニアファンドマネージャーの富松正雄氏(写真:左)と、独立系投資助言会社イデア・ファンド・コンサルティング代表取締役社長の吉井崇裕氏(写真:右)が対談した。
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2022-11-11 11:15