【為替本日の注目点】ロシアミサイルのポーランド着弾報道でドル円一時137円台に

 東京市場では140円台半ばまで上昇したドル円はNYでは急落し、一時は137円68銭までドル安が進む。米10月のPPIが予想を下回ったことや、ロシアのミサイルがポーランドに着弾し2人が死亡したことなどが背景。ユーロドルも続伸する場面があり、一時1.0481まで上昇。株式市場はロシアミサイルのポーランド着弾の報道に売られる場面もあったが、堅調に推移。3指数は揃って反発。債券は地政学的リスクの高まりを受け上昇。長期金利は3.77%台に低下。金は横ばい。原油は反発。 11月NY連銀製造業景況指数 → 4.5 10月生産者物価指数 → 0.2% ドル/円 137.68 ~ 139.69 ユーロ/ドル 1.0280 ~ 1.0481 ユーロ/円 143.35 ~ 145.15 NYダウ +56.22 → 33,592.92ドル GOLD -0.10 → 1,776.80ドル WTI +1.05 → 86.92ドル 米10年国債 -0.084 → 3.770% 【本日の注目イベント】 欧 ラガルド・ECB総裁講演 欧 ECB金融安定報告 英 10月消費者物価指数 英 10月生産者物価指数 米 10月小売売上高 米 10月輸入物価指数 米 10月鉱工業生産 米 10月設備稼働率 米 11月NAHB住宅市場指数 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演 米 バー・FRB副議長。下院金融委員会で証言 米 ウォラーFRB理事講演  ドル円は再びNY市場で乱高下を繰り返しています。東京市場では140円台半ばで推移していましたが、NYでは朝方10月の生産者物価指数(PPI)の発表が市場予想を下回ったことから、先週のCPIの時と同様に株式と債券が買われ、ドル円が売られました。加えて、ロシアのミサイルがポーランドに着弾し、2人が死亡したとのニュースが飛び込み、ドル円は一気に137円68銭まで売られています。ドル円はその後139円台まで値を戻していますが、引き続き外部からの情報には敏感に反応しやすい状況が続いています。  ポーランドへの着弾は意図的かどうかは分かっていませんが、ロシアがウクライナへの攻撃で発射したミサイルの一部の可能性もありそうです。ウクライナ軍報道官によると、約100発のミサイルが黒海やロシアのロストフ州、カスピ海から発射され、ウクライナ北部や中央部で最も大きな被害が出ている模様です。NATO加盟国であるポーランドはこの事態を受け、臨時の国家安全保障会議を開催することを発表しています。一方ロシア側はこの報道を否定しています。その数時間前には、ウクライナのゼレンスキー大統領が、和平交渉実現にはロシアが国境を受け入れ、ウクライナ全土から軍を撤退させる必要があると演説を行っていました。また、今回の事態はインドネシアのバリ島で「G20首脳会議」が開かれている最中に起きており、ホワイトハウスはロシアの攻撃を非難しています。  米10月のPPIは市場予想の「0.4%」に対して「0.2%」と鈍化しており、前年同月比でも「8%」と、市場予想の「8.3%」を下回る結果でした。CPIに続き、インフレ圧力が緩和し始めている兆候として受け止められています。PPIは「川上」での価格であり、この先消費者物価へ転嫁されることから、今後もCPIの鈍化につながるとみられます。これで10月については「川上」、「川下」で、物価上昇率が鈍化してきたことが確認されたことになりますが、問題はこの傾向が今後も続くかどうかです。このことに関して、アトランタ連銀のボスティック総裁は、「インフレ目標を達成するために十分抑制的な金融政策にすることがゴールだ」と述べ、「まだそこまでには達していない。従ってさらなる利上げが必要になると考えている」と、引き続き慎重な姿勢を見せています。一方、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁はやや楽観的な認識を示し、「これまでに行った累積的な引き締めを踏まえると、金融政策は十分に景気抑制的スタンスに近づいており、今後数カ月で利上げのペースは減速すると予想する」として、「来年のどこかの時点で金融政策が効果を表す様子を見守りつつ、景気抑制的な水準に金利を維持することになると考えている」と語っています。(ブルームバーグ)ただ、ハーカー総裁の見方はFOMCメンバーの中ではまだ少数派とみられ、多くのメンバーが慎重な姿勢を崩していないのが現状です。  本日、日本時間午前11時にトランプ前大統領は「Big announcement」(大きな発表)を行うと言っていました。2024年の大統領選への出馬を宣言するとみられていますが、米中間選挙前と現在ではやや情勢が異なってきました。中間選挙では期待外れの結果となっている共和党内では、票が伸び悩んだ責任はトランプにあると非難する声が増えているようです。今回の中間選挙では、まだ最終的な結果は出ていませんが、直近でもアリゾナ州知事選で、共和党のレーク候補が民主党のホップス候補に敗れるという大波乱がありました。レーク氏は、2020年大統領選でのバイデン氏の当選を認めない「選挙否定派」の中でも最も知名度が高く、今回の知事選でも「当選確実」と見られていただけに、トランプ氏にとっても手痛い敗北だったようです。その他、トランプ氏を後押した候補者が複数敗北を喫しています。このような中での「出馬宣言」のようですが、今回の結果について、「敗因はマコネル上院院内総務にある」と言ってはばからないトランプ氏、米国の「分断」だけではなく、共和党をも「分断」させる可能性もありそうです。本日の「出馬宣言」に関しても、共和党内ではジョージア州での決選投票が行われる12月16日まで発表を先送りするよう説得されていましたが、強行する模様です。ブルームバーグは政治ストラテジストのコメントを引用して、「ジョージア州決選投票を待たずにトランプ氏が発表するのは、国政史上最も利己的な政治的行為の一つとして語り継がれるだろう」と述べています。  本日のドル円は137円50銭~140円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
東京市場では140円台半ばまで上昇したドル円はNYでは急落し、一時は137円68銭までドル安が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-11-16 10:30