【為替本日の注目点】ドル円3カ月ぶりの135円台示現

 ドル円は大幅続落。パウエル議長の講演を境に、米金利が急低下しドル円も次々と大台替えを示現。NYでは135円21銭までドル売りが進み、約3カ月ぶりのドル安水準に。ユーロドルも大きく買われ、6月29日以来となるユーロ高に。前日は3指数が揃って大幅に上昇したが、この日はまちまち。ダウは大きく下げたものの、ナスダック指数は小幅に続伸。債券は続伸。長期金利は3.5%台まで低下。ドル安が急速に進んだことで金は大幅に反発。一時は1818ドル台まで買われる。原油も小幅ながら4日続伸。 新規失業保険申請件数 → 22.5万件 11月ISM製造業景況指数 → 49.0 10月個人所得 → 0.7% 10月個人支出 → 0.8% 10月PCEデフレータ(前月比) → 0.3% 10月PCEデフレータ(前年比) → 6.0% 10月PCEコアデフレータ(前月比) → 0.2% 10月PCEコアデフレータ(前年比) → 5.0% 11月自動車販売台数 → 1414万台(年率換算) ドル/円 135.21 ~ 136.33 ユーロ/ドル 1.0435 ~ 1.0534 ユーロ/円 142.07 ~ 143.13 NYダウ -194.76 → 34,395.01 GOLD +55.30 → 1,815.20ドル WTI +0.67 → 81.22ドル 米10年国債 -0.101 → 3.505% 【本日の注目イベント】 日 10月マネタリーベース 独 10月貿易収支 独 10月鉱工業生産 欧 ユーロ圏10月卸売物価指数 欧 ラガルド・ECB総裁、パネル討論に参加 米 11月雇用統計 米 エバンス・シカゴ連銀総裁。イベントで基調講演 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演 加 11月就業者数 加 11月失業率  今週水曜日のパウエル議長の講演を境に、ドル円は次々と大台を塗り替え、ついに135円台前半までドル高が修正されてきました。筆者も本欄で、「137円68銭の直近安値を切ると、135円が視野に入る」とコメントしてきました。ドルは米国のインフレが一向に収まらないことで買われてきましたが、そのインフレがピークアウトした可能性が浮上し、それに伴ってFRBがこれまで行ってきた大幅利上げのペースを見直すことになりそうなわけですから、ドル高が修正される流れに、違和感はありません。ドル円は8月18日以来、およそ3ヵ月半ぶりに135円台前半まで売られました。  パウエル議長は今週30日(水)のブルッキング研究所での講演で、「利上げペースを落とす時期は早ければ12月の会合になる可能性がある」と発言し、「政策引き締めにおけるわれわれの進展を踏まえれば、こうしたペースを落とすタイミングの重要性は、インフレ抑制に向けあとどの程度金利を引き上げる必要があるのか、また政策を景気抑制的な水準でいつまで維持する必要があるのかという問題の重要性より著しく劣る」と述べました。議長が12月会合での利上げペースの見直しを明確にしたことで、この日は株価が大幅に上昇し、債券市場でも債券が買われ、3.7%台で推移していた長期金利は、昨日は3.5%割れ目前の水準まで低下してきました。金利の低下が直接ドル売りを誘い、講演前には139円90銭近辺まで買われる場面もあったドル円は、2日間で5円に迫る急落ぶりです。昨日は商品市場でも金が大きく買われ、1818ドル台まで上昇しています。金はドルの代替品の側面が強いのと、金利の付かない金は金利上昇局面では売られ易い傾向があり、昨日は金利低下をはやしたてたようです。  問題はFRBがどこまで利上げペースを落とすのかという点です。12月の会合での0.5ポイントの利上げは確実でしょう。その後来年1月の会合でも0.25ポイントの利上げが有力です。場合によってはその次の会合でもさらに0.25ポイントの利上げも考えられます。そして、この辺りで利上げが一旦停止される可能性があります。結局ターミナルレートとしては、4.75~5.25%程度が落ち着き処と予想しています。昨日講演したFRBのボウマン理事も、「フェデラルファンド(FF)金利は十分に景気抑制的な水準に近づいており、目標レンジをどこまで引き上げる必要があるかを見極める上で、利上げペースを減速させることが適切となろう」と、パウエル議長と同様な発言を行っていました。昨日発表された経済指標を見ても、PCEデフレータは明らかに鈍化しており、ISM製造業景況指数も経済活動の「拡大と縮小の境目」を示す「50」を割り込み、2020年5月以来の低水準でした。また、週間失業保険申請件数でも、2月以来となる高水準となり、労働市場の減速を示唆していました。このように、景気抑制を狙った大幅利上げの効果が、ようやく目に見えて出て来たといった印象です。  ドル円は今朝8時時点でも135円台前半で推移しています。135円割れを試しにいきそうな雰囲気です。ここを大きく割り込むようなことになると、130-135円の新しいレンジに入る可能性がありそうです。135円は重要な節目です。市場のセンチメントも、かなりドル売りに傾いてきたと思われます。ただ、今夜の雇用統計で、労働市場の底堅さが確認されるようだと、ドルの反発余地はあります。市場は上がっても下がっても、常にオーバーシュート(行き過ぎ)する宿命のようです。その意味で、ここ2日間の下げと、センチメントもやや行き過ぎかもしれません。実態としては、「日米金利差が縮小」するのではなく、「日米金利差の拡大が鈍化」するということです。  本日のドル円は134円~136円60銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大幅続落。パウエル議長の講演を境に、米金利が急低下しドル円も次々と大台替えを示現。(イメージ写真提供:123RF)
economic,gaitameonline,gaitamedotinterview,fxExchange
2022-12-02 10:45