【為替本日の注目点】FOMC、市場予想通り0.5ポイントの利上げ

134円台後半から135円台前半で推移していたドル円はパウエル議長の会見後に136円手前まで上昇。発言内容がタカ派寄りとの判断からドル買いが優勢となったが、その後は続かず。ユーロドルも会見後に一旦売られたが、その後上昇し、1.0695までユーロ高が進む。FOMCを受けて荒っぽい動きとなった株式市場は反落。パウエル議長がタカ派寄りの発言を行ったことから3指数は大きく売られたが、引け値ではやや戻す。ダウは前日比142ドル安。S&P500も24ポイント安で取引を終える。債券も大きく上下したが、結局価格は小幅に上昇し、10年債利回りは3.47%へとやや低下。金は売られ、原油は続伸。
11月輸入物価指数 → -0.6%
11月輸出物価指数 → -0.3%
ドル/円 134.57 ~ 135.99
ユーロ/ドル 1.0620 ~ 1.0695
ユーロ/円 143.54 ~ 144.66
NYダウ -142.29 → 33,966.35ドル
GOLD -6.80 → 1,818.70ドル
WTI +1.89 → 77.28ドル
米10年国債 -0.024 → 3.477%
本日の注目イベント
豪 11月雇用統計
日 11月貿易統計
中 11月小売売上高
中 11月鉱工業生産
英 BOE議事録
英 BOE金融政策発表
欧 ECB政策金利発表
欧 ラガルド・ECB総裁記者会見
米 新規失業保険申請件数
米 11月鉱工業生産
米 11月設備稼働率
米 12月NY連銀製造業景況指数
米 11月小売売上高
米 12月フィラデルフィア連銀景況指数
今年最後のFOMCでは予想通り、0.5ポイントの利上げを決めましたが、その後のパウエル議長の会見では、動きはあったものの、想定していたほどは動かなかった印象です。そして、これも想定通りでしたが、「パウエル議長の発言内容はタカ派寄り」のものでした。
FOMC委員会はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを4.25-4.5%に引き上げを決め、声明文では、「委員会はインフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するためには、継続的な誘導目標レンジ引き上げが適切になると見込む。誘導目標レンジの今後の引き上げペースを決定する上で、委員会は金融政策の累積的な引き締めや、金融政策が経済活動とインフレに与える影響の遅行性、経済や金融の情勢を考慮する」と記されています。また委員会メンバーの予測する政策金利の中央値は、2023年末が5.1%、2024年末が4.1%に低下する見通しが示され、いずれも9月時点での予側から引き上げられています。大注目されていたその後のパウエル議長の会見でしたが、議長は、「なお幾分か道のりは残っている」と発言し、「インフレ率が持続的な形で2%へと低下していると委員会が確信するまで、利下げが検討されることはないとみている」とし、「物価安定を回復させるには、景気抑制的な政策スタンスをしばらく維持する必要がありそうだ」と述べ、「まだ十分に景気抑制的なスタンスではないというのが、われわれが今日下した判断だ」と説明し、「任務を完了するまで現在の軌道を維持する」と言明しています。(ブルームバーグ)
FOMCではこれまで4会合連続で「0.75ポイント」という大幅利上げを実施し、経済成長を抑えるといった強い姿勢をみせてきました。今回、0.5ポイントの利上げにとどめたことで、今年3月以降の利上げステージで初めて利上げ幅を緩和したことになります。これは前日発表された11月のCPIが総合で「7.1%」まで低下し、インフレ率が5カ月連続で前の月から鈍化していることを考慮した結果です。ただ、それでもなおFRBの物価目標2%の3倍を超える高水準であり、先走る市場をけん制する意味でも、タカ派寄りの発言になるのではと予想していました。「米国のインフレはピークアウトしたと見られるもののまだ水準は高く、予断を許すわけにはいかない」というのが、委員会の一致した見方かと思われます。今後年末にかけて「ブラックアウト」期間も解け、セントルイス連銀のブラード総裁などタカ派の認識も披露されると思いますが、これらも相場変動の一因になる可能性があり、ひとまず大きな動きは避けられましたが、こちらもまだ予断を許さない状況です。ダドリー前NY連銀総裁は今回のFOMCの結果を受けて、「金融当局が望む状況を達成するまではまだしばらく時間がかかる」と指摘し、「労働市場に十分なスラック(たるみ)をもたらし、2%のインフレ率と整合する形で賃金のトレンドを低下させるには、経済を十分減速させる必要がある」と語っています。2%達成まで、まだ時間がかかることは衆目の一致するところですが、その過程でインフレが再燃するリスクもあります。FRBの物価目標である2%まで戻るのには「年単位」の時間が必要かもしれません。
ウクライナ情勢は依然として厳しい状況が続いており、停戦のメドは全くたっていません。ウクライナの国防トップは、停戦交渉にはロシア軍がウクライナから完全撤退するのが条件だとして、それ以外では交渉の余地がないことを明言しています。一方、米国がウクライナに地対空ミサイルシステム「パトリオット」の提供を検討していることに関して、ロシア大統領府のペスコフ報道官は「その場合、ウクライナ領内に配備される全てのパトリオットが攻撃対象になるだろう」と述べています。ロシアのミサイル攻撃に対するウクライナの防衛強化が期待されるパトリオットの提供は、現在バイデン大統領の最終的な承認待ちの状況です。
今年最後の重大イベントは終わりましたが、来週には「消費者マインド」や「PCEデータ」などが発表され、まだ気が抜けない状況が続きます。ドル円も135円台前半と、微妙な位置におり、ここから再び133円台を目指すのか、あるいは138円台に戻すことが出来るのか、なかなか読み切れない状況が続いています。目先は133-138円のレンジ内で推移すると予想しますが、まだまだ分かりません。
本日のドル円は134円~136円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
134円台後半から135円台前半で推移していたドル円はパウエル議長の会見後に136円手前まで上昇。発言内容がタカ派寄りとの判断からドル買いが優勢となったが、その後は続かず。(イメージ写真提供:123RF)
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2022-12-15 10:30