【為替本日の注目点】ドル円、米CPIを受け一気に128円台に

 東京市場から欧州にかけてもドル売りが優勢だったドル円は米12月のCPIを受け、130円台半ばから130円を割り込み、一気に128円87銭前後まで急落。1月3日に記録した円高水準を下回る。ユーロドルでもドル売りが鮮明となり、昨年4月以来となる1.0867までユーロが続伸。株式市場はCPIの鈍化を受け3指数が揃って3日続伸。ダウは3万4000ドル、ナスダックは1万1000ポイントの大台をそれぞれ回復。債券も買われ、長期金利は3.44%台へと急低下。金は続伸し一時1900ドル台を達成。原油も6日続伸。 12月消費者物価指数 → 6.5%(前年同月比) 新規失業保険申請件数 → 20.5万件 12月財政収支 → -85.0b ドル/円 128.87 ~ 131.20 ユーロ/ドル 1.0730 ~ 1.0867 ユーロ/円 139.86 ~ 141.11 NYダウ +216.96 → 34,189.97ドル GOLD +19.90 → 1,898.80ドル WTI +0.98 → 78.39ドル 米10年国債 -0.099 → 3.440% 【本日の注目イベント】 中 12月貿易収支 欧 ユーロ圏11月鉱工業生産 欧 ユーロ圏11月貿易収支 英 11月鉱工業生産 英 11月貿易収支 米 12月輸入物価指数 米 1月ミシガン大学消費者マインド(速報値) 米 ウィリアムズ・NY連銀総裁、インタビュー 米 ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演 米 カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、開会挨拶 米 企業決算 → バンクオブアメリカ、ウェルズファーゴ、JPモルガン、シティグループ、ブラックロック 米 日米首脳会談  昨日の朝方、月4回ほど出演している「NIKKEIラジオ」の番組の中で、キャスターの岸田さんから「佐藤さんは昨年からドル円が130円方向に向かうと予想されていました。一旦130円を割った後、135円近くまで戻しましたが、まだ130円を割ると予想していますか?」と質問を受けました。筆者は、「そう思います。ひょっとしたら今夜のCPIがそのきっかけになるかもしれません」と答えましたが、ズバリ的中というよりも、それ以上に円高が進みました。2日前には134円87銭近辺までドルが買い戻されていたわけですから、わずか2日でちょうど6円もの「円高ドル安」が進んだことになります。昨年12月の「黒田ショック」に次ぐ、「CPIショック」とも言える状況です。いつもの事ですが下げ相場は、そのスピードが違います。  12月の総合CPIは、前月比で「-0.1%」と、前月比でマイナスを記録するのは約2年半ぶりのこととなります。前年同月比では「6.5%」と、いずれも市場予想と一致していました。コアCPIでは「5.7%」(前年同月比)と、こちらも前月の「6.0%」から大きく鈍化しています。原油価格の低下に伴うガソリン価格の下落が大きく、ピークからは4割ほど下がっています。この欄で昨日も振れたように、今回のCPIについて市場では予想よりも「0.1%程」下振れるとの観測が広がっており、この見方をはやして株高が続いていました。発表された数字は予想通りでしたが、それでも各市場は大きく反応しています。株高、債券高、金利低下からドル売りが強まり、ユーロドルも1.0867と、昨年4月以来約8カ月ぶりの高値を付けています。この結果を受けて、今月末から開催されるFOMCでは0.5ポイント利上げの芽はなくなり、0.25ポイントがコンセンサスになりつつあります。特筆すべきは、一部のトレーダーからは、「利上げそのものが見送られる可能性すらある」との見方も出て来たことです。  こうした動きの中、今年のFOMCで投票権を持つ、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁はペンシルベニア州でのイベントで、「今年はあと数回の利上げを実施する見通しだが、私の考えでは一度に75ベーシスポイント引き上げる局面は確実に過ぎ去った」と発言し、「私の見解では、この先は25bpの利上げが適切になる」と述べています。またリッチモンド連銀のバーキン総裁は、ハーカー氏ほど「ハト派」ではなかったものの、「インフレ鈍化に向けて取り組む中で、より慎重にかじを切るのが理にかなう」と述べ、インフレ率については、「鈍化しつつあるものの、依然として高すぎる」との認識を示しました。(ブルームバーグ)米国のインフレ率は昨年6月の「9.1%」でピークを付け、鈍化傾向にあるのは間違いありません。今後はどの程度のペースで鈍化していくのかという点がポイントで、そのペース次第ではFRBの引き締め終了の次期が早まる可能性もあります。筆者は現時点では、今月末の会合と、3月の会合で0.25ポイントの利上げを実施するとの見方を維持しながら、1月のCPIを待ちたいと思います。昨日発表された週間失業保険申請件数は予想を下回り、依然として低水準を維持しています。金利を大幅に引き上げて景気を抑制しようとするFRBの目論見は、こと労働市場に関しては道半ばです。今後も、少なくとも今年前半は「雇用統計」と「消費者物価指数」の二つが為替を見る上で最重要指標であることは変わりません。  本日も多くのFOMCメンバーの発言が予定されています。すでに、セントルイス連銀、ボストン連銀、そしてフィラデルフィア連銀総裁などが「ハト派寄り」の発言を行っています。今後どの程度の連銀総裁が「タカ組」から「ハト組」に集まってくるのか、今日のコメントも注目されます。中でも、やはりウィリアムズNY連銀総裁の発言が最も影響力があると思われます。  筆者は本日午後から対面によるセミナーを約3年ぶりに開催します。このタイミングでドル円が一気に128円台まで売られるとは、絶妙というか微妙というか、参加者からは多くの質問の声があがりそうです。  本日のドル円は127円50銭~130円程度を予想しますが、今回の動きが本格的な円高方向への始まりになるのか、それとも今月の第1週のように、単なるオーバー・シュートに終わるかここ数日の動きが大切です。 (執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
東京市場から欧州にかけてもドル売りが優勢だったドル円は米12月のCPIを受け、130円台半ばから130円を割り込み、一気に128円87銭前後まで急落。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-01-13 10:30