【為替本日の注目点】ドル円続伸し連日の大台替え

ドル円は東京時間朝方には132円台半ばまで押し戻される展開だったが、欧州では133円台を回復し、NYでは134円台に。小売売上高などの経済指標が上振れし、134円36銭前後までドルが続伸。ドル高の流れが加速し、ユーロドルは1.0661まで下げる。株式市場は3指数が揃って上昇。ナスダックは1万2000、S&P500は4100ポイントの大台をそれぞれ回復。債券は続落。長期金利は3.80%台へと上昇。金は反落し、原油は続落。
1月小売売上高 → 3.0%
2月NY連銀製造業景況指数 → -5.8
1月鉱工業生産 → 0.0%
1月設備稼働率 → 78.3%
2月NAHB住宅市場指数 → 42
ドル/円 133.65 ~ 134.36
ユーロ/ドル 1.0661 ~ 1.0706
ユーロ/円 142.79 ~ 143.44
NYダウ +38.76 → 34,128.05ドル
GOLD -20.10 → 1,845.30ドル
WTI -0.47 → 78.59ドル
米10年国債 +0.059 → 3.803%
本日の注目イベント
豪 1月雇用統計
日 1月貿易統計
欧 ECB経済報告
米 1月住宅着工件数
米 1月建設許可件数
米 2月フィラデルフィア連銀景況指数
米 1月生産者物価指数
米 新規失業保険申請件数
米 メスター・クリーブランド連銀総裁講演
米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演
米 クック・FRB理事、ブルッキングス研究所主催のイベントで挨拶
昨日のコメントの最後の方で、「これで目先のレジスタンスゾーンであった132円90銭~133円を上抜けしたわけです。短期的にはドルが底堅く推移し、場合によっては135円テストもないとは言えない状況になったとみるのが順当でしょう」と記述しましたが、ドル円はNYで134円36銭近辺まで買われ、先月記録した年初来のドル高水準に迫ってきました。
無理もありません。昨日発表された米経済指標はいずれも力強い結果が示され、突出して強い「労働市場」に歩調を合わせるものでした。1月の小売売上高はほぼ2年ぶりの大幅増となり、個人消費の底堅さを示唆しています。2月の米住宅市場指数は2020年半ば以来の大幅な伸びとなり、ここ数カ月で住宅ローン金利の上昇が緩和し、過去1年にわたり落ち込んでいた住宅市場を支えていることが示唆されています。また製造業の生産は1月にほぼ1年ぶりの大きな伸びとなっています。「この分野はなお厳しい環境にあるものの、サプライチェーンの改善と需要増加が生産の押し上げに寄与している」(ブルームバーグ)とみられています。米債券が売られ、長期金利は先月3日以来約1カ月半ぶりに3.82%まで上昇しています。ただ分からないのが株価の動きでした。朝方は売られていた株式は引けに向けて大きく買われ、結局主要3指数は揃ってプラスで引けています。「雇用統計ショック」と「CPIショック」を受け、今後もFRBは粛々と利上げを続けざるを得ないと予想される状況の中、比較的底堅い動きを見せています。恐怖指数と呼ばれる「VIX指数」も、「18.23」まで低下し、投資家の恐怖感が後退していることを示しています。
ブリンケン国務長官は、今週ドイツで行われる「ミュンヘン安全保障会議」で中国の外交トップの王毅氏と会談する予定にはなっていますが、気球撃墜問題では両国の緊張が直ぐに緩和する気配はないようです。中国外務省の汪報道官は北京で15日に開いた会見で、米軍が今月サウスカロライナ州沖の上空で撃墜した中国の気球は気象用で単にコースを外れ、 米国の領空に入っただけだと、中国側のこれまでの主張を繰り返していました。その上で、バイデン政権が撃墜したことを非難し、「中国は強く抗議する。主権と正当な権利と利益を断固として守るため、われわれの主張と安全を損ねた米国の関係機関に対して対抗措置を取る」と語っています。また中国側は、米国の気球が昨年5月以降10回程度、中国領空を侵犯したと主張しており米中外交トップの会談も実現するのかどうか、現時点では不透明です。
ドル円が134円台前半まで買われたことで、日足の一目均衡表では「雲の下限」に接近してきました。言うまでもなく、ここからが「抵抗帯」の始まりで、教科書的に言えば、利益確定の売りも出易く、新規のドル売り注文も集まり易いとみられます。従って、ドル円がさらに上昇するには「ここからが本番」とみることができます。この「雲」は厚さもかなりあり、抜けるには139円台半ばを上回る必要があります。もっとも、「雲」は右下方に下がってきており、上記をクリアしなければならない値位置も下がっていることから、このままドル円が横ばいであっても、大きく下げなければいずれ「雲の中」に入る可能性もあります。「雲」の概念は、過去に取引された「未決済部分」とも解釈できることから、当然このレベルに差しかかると「売り」も出て来るのは頷けます。ユーロ円も昨日のNYで143円44銭前後まで上昇したことで、143円手前のレジスタンスを抜け、こちらは一足先に「雲抜け」を完成させています。ユーロドルが底堅い動きを見せていると同時に、ドル円では円安が大きく進んでいることが影響しています。目先のターゲットは、昨年12月に記録した145円台後半ということになります。
短期的にはドル高傾向が加速していますが、ここで中長期の相場観を修正するかどうかは慎重さが必要です。雇用統計を筆頭に、1月の経済指標は思いのほか好調です。この傾向が今後も続くのか、慎重に見ていかなければなりません。また多くのエコノミストが植田新総裁の下でも、いずれ金融政策の変更は避けられないと予想していることから、YCCを含め、日銀の出口に向けた一歩にも注意が必要です。
本日のドル円は132円80銭~134円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は東京時間朝方には132円台半ばまで押し戻される展開だったが、欧州では133円台を回復し、NYでは134円台に。小売売上高などの経済指標が上振れし、134円36銭前後までドルが続伸。(イメージ写真提供:123RF)
economic,gaitameonline,gaitamedotinterview,fxExchange
2023-02-16 10:00