【為替本日の注目点】パウエル議長の議会証言を受けドル円上昇

 ドル円はパウエル議長の議会証言を受け、136円10銭台から137円台前半まで100bpほど上昇。議長発言は予想通りタカ派的で、市場の楽観論を一蹴。ドル高が進んだことでユーロは売られ、1.05台半ばに。株式市場は大幅下落。今後も利上げが加速する可能性があることからダウは574ドル下げ、他の2指数も大幅安。債券は続落。長期金利は上昇したものの、4%の大台には届かず。金と原油は大幅に下落。 1月消費者信用残高 → 14.799b ドル/円 136.06 ~ 137.19 ユーロ/ドル 1.0546 ~ 1.0672 ユーロ/円 144.56 ~ 145.29 NYダウ -574.98 → 32,856.46ドル GOLD -34.60 → 1,820.00ドル WTI-2.88 → 77.58ドル 米10年国債 +0.01 → 3.968% 【本日の注目イベント】 日 1月貿易収支 日 1月国際収支 日 1月景気先行指数(CI)(速報値) 日 2月景気ウオッチャー調査 独 1月小売売上高 独 1月鉱工業生産 欧 10-12月期GDP(確定値) 欧 ラガルド・ECB総裁講演 米 2月ADP雇用者数 米 1月貿易収支 米 1月求人件数 米 パウエル・FRB議長、下院金融委員会で証言 加 1月貿易収支 加 中銀政策金利発表  米議会上院でパウエル議長の証言は「想定通り」タカ派の内容でした。  昨年6月に「9.1%」というインフレのピークを記録し、その後は大幅利上げを断行したこともあり、インフレ率は1月には「6.4%」まで低下してきました。このまま順調に低下傾向を見せるとみられていましたが、2月に入ってからは市場予想を超える経済指標が相次ぎ発表され、米インフレ率は想定よりも「粘着性が強く」再び上昇に向かうとの観測も台頭している中での、パウエル議長の証言でした。それだけに、市場では非常に注目されていましたが、議長は「必要なら利上げを加速させる用意がある」と述べ、市場は大きく反応しています。「最新の経済データは予想より強く、金利の最終到達水準が従来想定を上回る可能性が高いことを示唆している」とし、「経済データが全体として、より速い引き締めを正当化するのであれば、利上げペースを加速させる用意があるだろう」と発言しました。パウエル議長のタカ派寄りの発言を受け、株式と債券が売られドルが買われています。先週から上げ足を強め、都合700ドルを超える上昇を記録していたダウは、最も下げがきつく、前日比574ドル下落。他の主要指数も大幅安の展開でした。利上げ加速が意識され債券も売られ、長期金利は上昇しましたが4%の大台には届かず、上昇幅はわずか1bpで、小幅な上昇だったことにやや違和感が残ります。株価程売られなかった債券が、今後何かの動きを暗示しているのではとしたら、考えすぎでしょうか。金利上昇を受けドル円は136円10銭台から100bp買われ、137円19銭近辺まで上昇し、わずかですが先週記録した年初来高値であった137円10銭を上回っています。また、金と原油も大きく売られており、次回3月会合での「0.5ポイントの利上げ確率」は「0.25ポイント」を上回る結果になっています。2年債も利回りが大幅利上げを織り込む格好で上昇し、一時5%を記録しました。その結果、「10年債との逆イールド」は拡大し、100bpに達しています。  これで、データ次第では次回FOMCで0.5ポイントの利上げの可能性が十分あることが確認されました。10日は「2月の雇用統計」が発表されますが、ここで市場予想を超えるデータが出るようなら「0.5ポイント利上げ」は「当確」ということになりそうです。もっとも、そもそもブレやすい「雇用統計」ですから、市場予想を下回る可能性にも注意が必要です。難しいのはその場合、市場の見方が再び「0.25ポイントの利上げ」に戻るのかどうかという点です。ユーロ圏でもインフレは長期化するとの観測が根強く、ECB政策メンバーのホルツマン・オーストリア中銀総裁は、「コアインフレ率は上期には大きく下がらず、現在の水準付近にとどまると思う。その場合、0.5ポイントの利上げを今年あと4回行うだろうと考えている」と述べ、3、5、6、7月の4会合連続で0.5ポイントの利上げを支持する考えを示しました。またオ―ストラリア準備銀行(RBA)も昨日、10会合連続の利上げとなる、0.25ポイントの利上げ決め、インフレ抑制に対する強い姿勢を見せていました。世界的にもインフレはピークを超えてはいますが、主要国は依然としてインフレ再燃に対する警戒感を解いてはいません。  ドル円は米利上げ長期化観測を支えに底堅い動きが続いています。今朝の日経新聞も触れていましたが、ここからはドル円が日足の「200日移動平均線」を越えられるかどうかが大きなポイントになります。現在、200日線は「137円47銭」近辺にあります。この水準に極めて近いところまでドル高が進んでいますが、この線は言うまでもなく「レジスタンス・ライン」(抵抗線)です。ドルロングもこの水準を境に決済をする向きも多く、実需のドル売りも集まり易い傾向があります。一方で、この上には「ストップ・ロス」も設定されていると思われ、ここを明確に抜けるかどうかは、今後140円を目指すのか、あるいは下落に転じるのかを占う意味でも重要だと言えます。この後も日銀の決定会合、雇用統計と材料はあります。注意深く、慎重に見極めたいと思います。  本日のドル円は136円50銭~138円50銭程度でしょうか。 (執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円はパウエル議長の議会証言を受け、136円10銭台から137円台前半まで100bpほど上昇。議長発言は予想通りタカ派的で、市場の楽観論を一蹴。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-03-08 10:15