【為替本日の注目点】米3月のNFPは23.6万人に

「3月の雇用統計」発表を受け、ドル円は132円台を回復。失業率が低下し、非農業部門雇用者数も予想を若干超えていたことから132円38銭までドル高が進む。ユーロドルは引き続き1.09を挟む動きが続き、方向感は出ず。短縮取引となった債券は雇用統計を受け下落。長期金利は一時3.4%台まで上昇。
3月失業率 → 3.5%
3月非農業部門雇用者数 → 23.6万人
3月平均時給 (前月比) → 0.3%
3月平均時給 (前年比) → 4.2%
3月労働参加率 → 62.6
ドル/円 131.52 ~ 132.38
ユーロ/ドル 1.0876 ~ 1.0920
ユーロ/円 143.53 ~ 144.21
NYダウ → 33,485.29ドル
GOLD → 2,026.40ドル
WTI → 80.70ドル
米10年国債 +0.086 → 3.391%
【本日の注目イベント】
日 2月国際収支・貿易収支
日 3月景気ウオッチャー調査
米 ウィリアムズ・NY連銀総裁講演
3月の雇用統計についてはややネガティブな結果を想定していましたが、結果はわずかでしたが、予想を超えるものでした。「2月の求人動態調査(JOLTS)」の伸び率が鈍化し、「3月のADP雇用者数」も事前予想を下回るなど、これまで好調だった雇用の「潮目」が変わる可能性も意識していましたが、蓋を開けて見れば好調さは依然として維持されており、現時点では労働市場には大きな変調が見られないということでした。
失業率は市場予想の「3.6%」を下回る「3.5%」と、相変らず歴史的な低水準でした。非農業部門雇用者数(NFP)は予想の「23万人」を若干上回る「23.6万人」でした。1月分は速報値の「50.4万人」から「47.2万人」に下方修正されましたが、2月分が「31.1万人」から「32.6万人」へと、こちらは上方修正されたことで、ほぼ「チャラ」といったところです。結局、失業率の低下が材料視されたようですが、雇用統計全般を見ると、経済の他の分野が減速する中で、労働需要の底堅さが特に目立っていることが見て取れます。年初からの雇用者の増加幅は合計で100万人を超えています。市場からは、「データ自体はやや強弱が混在しているが、労働市場は十分強く、インフレはなお高止まり、FOMCは5月に0.25ポイントの追加利上げに動くだろう」との声も聞かれました。実際、市場が予想する5月の利上げ確率は、雇用統計発表前は「ほぼ五分五分」でしたが、結果を受け「0.25ポイントの利上げ確率」は70%程まで上昇しています。
懸念されるのは、上でも述べたように、米経済指標では雇用以外のデータはほぼ総崩れの様相を見せていることから、これで雇用が崩れたら一気に「リセッション入り」というリスクが考えられる点です。米シティグループが作成している「エコノミック・サプライズ指数」は、昨年は「0.35」を超えていましたが、今年2月には「0.13」前後まで低下し、直近では「-0.109」まで低下してきました。同指数は日々発表される経済データが、事前予想に対して「上回ったのか、下回ったのか」を集計したもので、「ゼロ」から上では予想を上回ったものが多いことを示し、マイナスでは下回ったものの方が多いことを示しています。プラス圏で推移していれば景気は拡大しており、マイナス圏ではその逆だという判断につながります。サマーズ元財務長官はブルームバーグ・テレビジョンの番組で、「はっきりしているのは、現在の引き締めサイクルがかなり終盤に入っているということだ」と述べ、一連の弱い経済指標を踏まえ、米国の利上げ局面が終わりに近づいているとの認識を示しています。サマーズ氏は、米国のインフレが加速していた昨年中は一貫して大幅利上げを提唱しており、「タカ派」の印象がありましたが、ここにきてトーンを変えています。米インフレが峠を越え、これ以上の金融引き締めは必要ないと判断しているようです。同氏は、IMFのチーフエコノミストを経て、クリントン政権では財務長官を歴任し、その後はハーバード大学の学長を務めた後、ブルームバーグやワシントンポストのレギュラー・オピニオンコラムニストも兼務しています。余談ですが、筆者が学生時代一世を風靡した「サミュエルソン・経済学」の著者である、ポール・サミュエルソンは彼のおじさんに当たることを後で知って驚いた記憶があります。
雇用統計が終わり、焦点は12日(水)発表の「3月の消費者物価指数」に移ります。本日のドル円は131円~132円80銭程度を予想します。
(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
「3月の雇用統計」発表を受け、ドル円は132円台を回復。失業率が低下し、非農業部門雇用者数も予想を若干超えていたことから132円38銭までドル高が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-04-10 09:45