【為替本日の注目点】米4月のPPIは2.3%に低下

ドル円は続落し、一時133円74銭を付ける。米4月のPPIが予想を下回ったことで米金利が低下し、ドル売りが強まった。ユーロドルも下落し、約1カ月ぶりに1.09前後まで売られる。ユーロ円も146円台前半まで下げる。BOEは政策金利を0.25ポイント引き上げ、4.50%にすることを決定。ポンド円は169円台半ばから材料出尽くしから1円以上の下落。株式市場では景気減速懸念からダウが4日続落。一方ナスダックは金利低下を好感し続伸。債券は続伸し、長期金利は3.38%台に低下し。約2カ月ぶりの低水準を記録。金と原油は揃って続落。
新規失業保険申請件数 → 26.4万件
4月生産者物価指数 → 2.3%(前年同月比)
ドル/円 133.74 ~ 134.63
ユーロ/ドル 1.0900 ~ 1.0948
ユーロ/円 146.13 ~ 147.15
NYダウ -221.82 → 33,309.57ドル
GOLD -16.60 → 2,020.50ドル
WTI -1.69 → 70.87ドル
米10年国債 -0.046 → 3.384%
【本日の注目イベント】
英 1-3月期GDP
英 3月鉱工業生産
米 4月輸入物価指数
米 4月輸出物価指数
米 5月ミシガン大学消費者マインド(速報値)
米 ジェファーソン・FRB理事とセントルイス連銀総裁、パネル討論会に参加
米 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁講演
米4月の生産者物価指数(PPI)は、CPIと同様に市場予想を下回っていました。総合PPIは前年同月比で「2.3%」と、2021年初旬以来の低い伸びとなり、市場予想の「2.5%」を下回る結果でした。またコアPPIも「3.2%」と、市場予想を下回っています。この発表を受け、債券が買われ長期金利は3月7日以来となる3.38%台に低下し、ドル円は金利低下に反応し133円74銭まで売られました。GW直前には137円78銭までドル高円安が進み、140円も試すのではないかとの見方も出ていましたが、結局そこを頂点に下落が続き、「元の鞘」に戻った格好です。テクニカル的にも「三角保ち合い」(さんかくもちあい)を上抜けしたことで、損切りのドル買いも巻き込み急騰した面もあったと思われますが、昨日の動きは「円全面高」の様相となり、GW前とは状況が一変しています。PPIの低下を受け、NY株式市場では景気減速念からダウが大きく売られましたが、金利低下を好感したナスダック指数は上昇しています。WTI原油価格も景気減速懸念を手掛かりに70ドル台まで下げてきました。
新規失業保険申請件数が先週から2万2000件増え、2021年10月以来となる26.4万件に増加しています。また失業保険の「継続受給者数」も、181万3000人と、1万2000人増えており、好調な労働市場にも減速の兆しがうかがえる結果が示されています。ここ数ケ月の失業保険申請件数は増加傾向にあり、ハイテクや銀行などホワイトカラーの職種で始まったレイオフは、経済全体で企業に影響を与え始めているようです。「1年余りに及ぶ利上げと信用状況のタイト化が経済を圧迫し続けており、今後も人員削減は続く可能性がある」(ブルームバーグ)ようです。同指数は今後の雇用統計を予測する上でも重要です。
来日中のイエレン財務長官は11日新潟市で記者会見を行い、米債務上限問題に関して、「政府がデフォルトを回避できない場合には、世界的な景気下降を招くだけではなく、米国のグローバル経済のリーダーシップを損ない、国家安全保障の利益を守る政府の能力にも懸念が生じかねない」と警告していました。またロシアに対する制裁にも言及し、「一連の制裁には効果があるため、ロシアはそれを回避しようとしている。今年は制裁逃れを目指すロシアの企てを阻止する追加的な行動こそ、われわれの戦略の主要な柱になる」と訴えていました。財務長官としては、結構アグレッシブな発言だったと受け止めています。イエレン氏については、氏がまだサンフランシスコ連銀総裁であった頃からその言動には注目してきましたが、FRB議長、そして財務長官とキャリアを重ねてきましたが、長官に就任して以降の発言は金融にとどまらず、積極的な発言が目立つようになったと感じています。昨日のロシアに関する発言は、バイデン大統領の言葉やブリンケン国務長官の言葉かと思えるほどの発言でした。既に経済学者の域を超えているものと思われ、個人的には同氏のさらなる飛躍を願っています。バイデン大統領とマッカーシー下院議長との債務上限問題を巡る会談は本日12日にも予定されていましたが、延期されたようです。ただスタッフによる交渉は続いており、合意に向けてはより生産的と見られています。民主党のシューマー上院院内総務も交渉は「進展している」との認識を示しています。バイデン氏とマッカーシー氏との会談は来週早々にも再開される見通しですが、合意に時間がかかるようだと、バイデン氏は19日から始まる「G7広島サミット」を欠席することになりますが、その場合でもリモートでの参加があり得るようです。
サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は10日、11日の2日間にわたりオーストリアのウイーンで、中国外交のトップである王毅氏と会談したと報じられています。両氏の会談は事前に公表されてはいませんでしたが、ホワイトハウスは「意義深く建設的だった」と評価し、中国国営新華社通信も「開かれた意思伝達チャネルを維持し、責任ある形で競争を管理する継続的取り組みの一環」と報道し、「率直で踏み込んだ、意義深く建設的だった」と論じています。今回の会談が、バイデン大統領と習近平主席の首脳会談につながる期待もあるようです。
ドル円はジリジリと下値を切り下げてきましたが、重要なレベルは昨日も触れたように、132円台半ばとみています。米経済のリセッション入りの可能性、あるいは米地銀パックウエスト・バンココープなど新たな金融不安、またこの局面ではないとは思いますが、日銀によるYCC修正への行動といったように、外部環境的には円高材料が多く残っています。今すぐにドルが大きく売られることはないとしても、上記いずれかのきっかけで円買いが加速する可能性は残っていると思われることから、まだドル円が下がるリスクがあるとの見方は維持しています。
本日のドル円は133円50銭~135円30銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は続落し、一時133円74銭を付ける。米4月のPPIが予想を下回ったことで米金利が低下し、ドル売りが強まった。ユーロドルも下落し、約1カ月ぶりに1.09前後まで売られる。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-05-12 10:15