【為替本日の注目点】ドル円は半年ぶりに139円台半ばへ

 ドル円は大幅に続伸し、昨年11月30日以来となる139円48銭までドル高が進む。138円台半ばで取引が始まったが、ウォラー理事のタカ派発言や米金利の上昇にドル買いが加速。ドル円ではドル高が進んだものの、ユーロドルでは1.07台半ばまでドルが買われたが前日とほぼ変わらず。株式市場では3指数が続落。債務上限問題やさらなる利上げ観測が重荷となり、金融や不動産株が大きく売られる。債券は反落。長期金利は3.74%台まで上昇。金は続落し、原油は続伸し74ドル台に乗せる。 ドル/円 138.37 ~ 139.48 ユーロ/ドル 1.0749 ~ 1.0801 ユーロ/円 149.18 ~ 149.93 NYダウ -255.59 → 32,799.92ドル GOLD -9.90 → 1,964.60ドル WTI +1.43 → 74.34ドル 米10年国債 +0.050 → 3.742% 【本日の注目イベント】 トルコ 中銀政策金利発表 独 1-3月期GDP(改定値) 独 6月GFK消費者信頼調査 米 新規失業保険申請件数 米 7-9月GDP(改定値) 米 4月中古住宅販売成約件数 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演 米 コリンズ・ボストン連銀総裁講演  債務上限問題を巡り、バイデン政権と下院共和党の担当者による協議が24日午後、4時間にわたり行われましたが、合意への道筋は描けない状況が続いています。マッカーシー下院議長は協議終了後、「合意に達して、それを成し遂げる時間はあると引き続き考える」と語り、依然として楽観的な見方を示しています。またバイデン大統領も、再会談の日程は設定されていないとした上で、「適切なタイミングで再び会うことになるだろう」と、やや他人事のような発言をしています。ブルームバーグは、「下院議員は5月29日のメモリアルデーを挟んだ休会入りを前に、25日ワシントンを離れる見通しだが、共和党下院指導部は議員らに対して、採決が必要になれば戻ってくることができるよう求めた。また、下院共和党の保守派はマッカーシー議長に対して、交渉で譲歩しないよう圧力を強めた」と報じています。イエレン財務長官も再度警告を発し、「連邦政府の資金が枯渇しつつあり、市場では現在ストレスの兆候が表れ始めている。バイデン政権が重点を置いているのもデフォルトに陥った場合の対応計画を練ることではなく、債務上限を巡る交渉で合意をまとめることだ」と述べています。  市場は困惑しており、この日はNY株式市場では3指数が揃って大きく売られ、債券も売られたことで金利が上昇。ドル円は昨年11月30日以来となる139円48銭まで円安が進んでいます。ドル高が進んだこともありますが、円の弱さが際立っており、背景には植田日銀総裁が現状の金融政策の維持を、市場関係者が考える以上に「固執」しているようにも思えることがあります。YCCの修正時期観測も、そのために後ずれしており、緩和政策はまだ続くといった見方が優勢となっている状況です。ドル高に振れた要因はこの日講演で述べたウォラーFRB理事のタカ派発言にもあったと思われます。ウォラー理事はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のイベントで、「インフレが2%目標に向って低下しつつある明確な兆候が得られるまで、利上げを停止することは支持しない」と発言し、「6月会合で利上げを実施するべきか見送るべきか向こう3週間に発表されるデータ次第になる」と述べています。「向こう3週間」には、「5月の雇用統計」と「5月の消費者物価指数」が発表され、それらの結果次第という意味合いです。  5月2、3日に行われたFOMC議事録が公開され、銀行セクターでのストレスが経済に与える影響について高い不確実性がある中、インフレ抑制に向けた追加利上げの必要性を巡り、メンバーの見解が分かれたことが明らかになりました。同会合では0.25ポイントの利上げを「全会一致」で決めており、これで10会合連続での利上げを決めた会合でした。議事要旨では、「もし経済が現在の当局者見通しに沿って展開するなら、今会合後のさらなる政策引き締めは必要ないかもしれないと幾人かの参加者は指摘した」と記されている一方、「一部の参加者は、インフレ率を2%に戻すための進展が受け入れがたいほど遅い状態が続く可能性があるとの見通しに基づき、将来の会合での追加の政策引き締めが正当化される可能性が高いと発言した」ともありました。ただ、このことはすでに今月に入って相次いだFOMCメンバーの発言でも明らかであって、目新しいことではありません。(参照:What’s going on )アトランタ連銀のポスティック総裁とセントルイス連銀のブラード総裁が、その代表格と言えます。ただ個人的には、債務上限問題や金融不安が残る中、利上げが正当化されるかどうかは大きな問題かと思います。前者の問題はそれまでには片付くと思いますが、米地銀の経営不安は、利上げを行い金利上昇が続けば続くほど厳しいものになるとみられています。  ドル円はいよいよ140円を視野に入れた展開になってきました。米金利の想定以上の上昇と、上で述べたように日銀の緩和姿勢が思った以上に強固なことが挙げられます。日本の債券市場では長期金利が0.414%前後で推移し、植田氏が総裁になる前にあった金利上昇圧力も、もはや見られません。再び日米金利差が拡大している状況です。  本日のドル円は138円~140円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は大幅に続伸し、昨年11月30日以来となる139円48銭までドル高が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-05-25 10:15