【為替本日の注目点】ドル円140円台を回復

ドル円は続伸し、およそ半年ぶりに140円台に乗せる。GDP改定値が上振れるなど、インフレ鎮静化に歯止めがかからない指標が出たことや、米金利がさらに上昇したことを受け、140円23銭まで「ドル高円安」が進む。ユーロドルでもドルが買われ、一時1.0708まで売られ、およそ2カ月ぶりの安値に。株式市場はエヌビディアが急伸し、ハイテク株をけん引。ナスダックは213ポイント上昇。一方ダウは小幅ながら5日続落とまちまち。債券は続落し、長期金利は3.81%台に上昇。金はドル高を受け4日続落。原油も「OPECプラス」が追加減産には否定的との報道から大きく下げ71ドル台に。
新規失業保険申請件数 → 22.9万件
7-9月GDP(改定値) → 1.3%
4月中古住宅販売成約件数 → 0.0%
ドル/円 139.19 ~ 140.23
ユーロ/ドル 1.0708 ~ 1.0740
ユーロ/円 149.24 ~ 150.27
NYダウ -35.27 → 32,764.65ドル
GOLD -20.90 → 1,943.70ドル
WTI -2.51 → 71.83ドル
米10年国債 +0.075 → 3.817%
【本日の注目イベント】
豪 4月小売売上高
日 5月東京都区部消費者物価指数
英 4月小売売上高
米 4月個人所得
米 4月個人支出
米 4月PCEデフレータ(前月比)
米 4月PCEデフレータ(前年比)
米 4月PCEコアデフレータ(前月比)
米 4月PCEコアデフレータ(前年比)
米 4月耐久財受注
米 5月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
ドル円は先週から「一歩後退、二歩前進」の動きを見せ、昨日のNYではおよそ半年ぶりとなる140円台に乗せ、一時は140円23銭までドル高が進みました。ドル高が進む一方、まだしばらく金融緩和が継続されるとみられる円は、ドル以外の主要通貨に対しても売られ「最弱通貨」の位置に追い込まれています。
米1-3月期のGDP改定値が速報値の「1.1%」から「1.3%」に上方修正され、リセッション入りと見られている米景気が底堅い動きを見せていることで、インフレの鈍化には逆風となっており、6月会合では0.25ポイントの利上げを徐々に織り込む形となり、ドルを押し上げる格好になっています。ただ、国内総所得(GDI)は「2.3%」減少し、2四半期連続でマイナスを記録しています。ボストン連銀のコリンズ総裁は、「インフレ率はまだ高過ぎるが、緩和を示す有望な兆候もいくつかある」と講演で述べ、「われわれは利上げを一時停止できる地点、あるいはその近くにいるのではないかと考える」とハト派寄りの発言を行いましたが、ドル高傾向が支配的な市場にはほとんど影響はなかったようです。
債務上限問題は残された時間が刻々失われていく中、依然として合意には至っていません。与野党の相違点も明らかになり、合意に近づいているのは確かかと思われますが、マッカーシー下院議長は、「ある程度は進展があったと思うが、未解決の問題がある。この問題を解決するため、われわれのチームには24時間体制で働くよう指示した」と述べ、その上で、「最終的に全員がハッピーになるとは思わない。それが現在、このシステムの仕組みだ」と述べています。一方バイデン大統領は、共和党に対して歳出額の2年凍結案を提示したとし、「連邦債務上限と歳出を巡り生産的な協議が行われており、交渉は妥結するだろう」と、引き続き楽観的な見方を示しています。(ブルームバーグ)共和党の有力議員は、交渉は26日にも合意に達する可能性があると話しています。交渉が今週末に合意し、来週にも議会の承認を経てぎりぎり6月1日にはバイデン大統領が署名を行い、なんとか最悪の事態を回避するのではないかと、個人的には予想していますが、どうでしょう。
ドル円は約半年ぶりに140円台を回復しました。昨年10月21日の151円94銭から、今年1月16日の127円22銭まで下げた下落分(24円72銭)の「半値戻し」を達成したことになります。米利上げ観測がなかなか消えないことに加え、新たに就任した植田日銀総裁のYCCの修正局面も、思った以上に後ずれするとの見方からドルが買われ、圧倒的低金利の円が売られていると考えます。植田氏は就任前から長期間にわたる大規模緩和継続による「副作用も出ている」ことに言及しており、早期に「YCCを含む何らかの修正」に踏み切るとの観測がありましたが、国会等での発言を聞くと、ややトーンが変化してきたような印象も受けます。
日経新聞は植田氏とのインタビューの内容を今朝の紙面で明らかにしています。総裁は、物価上昇が続き、「国民全員にかなり大きな負担になっている」との認識を示し、「サービス部門での価格上昇も進んでいる。原料価格が低下しても、需要面の高まりから物価高が継続する可能性が高い」と述べています。日本の直近の消費者物価指数(CPI)は総合で「3.5%」、コアコアでは「4.1%」といずれも前月よりも上昇し、再び騰勢傾向を強めています。総裁は、それでも現行の大規模緩和政策を止めない理由を「基調適な物価上昇率はすこしずつ上がってきているのは事実だが、持続的・安定的(な達成)には届いていない」と語っていました。日銀は、物価上昇率は2023年後半には2%を下回ると予想しています。また拙速な金融政策の変更は避けたいとしながらも、「政策の継続、修正については効果と副作用をみて判断する。(効果と副作用の)バランスに変化があれば修正はあり得る」とも話しています。筆者の記憶が正しければ、黒田前総裁は昨年の決定会合後の会見では、「物価上昇は2023年第2四半期辺りには1.5%程度まで下がる」と述べていたようでしたが、実質金利が大きくマイナスとなっている中、「国民全員」ではなく、大幅な賃上げも出来ない中小企業で働いている人にとっては、毎月の生活を維持するのは大変なことなのでしょう。
140円台を示現して、やや達成感が出ることで一旦上昇が止まるのか、あるいは引き続き上値を試す動きになるのか、やはり債務上限問題が気になります。本日のドル円は139円~140円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は続伸し、およそ半年ぶりに140円台に乗せる。GDP改定値が上振れるなど、インフレ鎮静化に歯止めがかからない指標が出たことや、米金利がさらに上昇したことを受け、140円23銭まで「ドル高円安」が進む。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-05-26 10:15