資生堂は今期営業減益見通しに対する目先的な売りが一巡、上値試す
資生堂 <4911> の株価は、4月25日発表の今期(15年3月期)営業減益見通しを嫌気して戻り高値圏から急反落したが、目先的な売りが早くも一巡したようだ。消費増税に伴う反動減は一時的要因であり、収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。
抜本的な収益構造改革および中期成長に向けて、12年度に「市場と同程度の売上成長でも着実に利益を拡大できる高収益構造」を目指す方向に軌道修正した。特に「日本、中国、米ベアエッセンシャル」の3領域を重点強化する方針を打ち出して、国内市場における事業の再構築、海外市場でのグローバルブランド育成を推進している。13年12月時点でのグローバルブランド「SHISEIDO」の展開地域は世界89の国・地域(日本を含む)となった。
なお14年2月に「カリタ」ブランドと「デクレオール」ブランドを仏ロレアル社に譲渡する契約を締結した。今期の特別利益に売却益を計上する。4月10日には、インドネシアのコングロマリットであるシナルマスグループ傘下のシナルマス・トゥンガルとの合弁契約締結を発表した。合弁会社に対する出資比率は65%で14年7月営業開始予定だ。
また毛髪再生医療の早期実現に向けて、13年7月にカナダのレプリセル社の毛髪再生医療技術導入に関する技術提携契約を締結した。そして4月21日には、毛髪再生医療の事業化に向けて研究開発の中核となる「資生堂細胞加工培養センター(SPEC、呼称スペック)」を、5月1日付で神戸医療産業都市に開設すると発表した。
4月25日に発表した前期(14年3月期)連結業績(4月17日に2回目の増額修正)は、売上高が前々期比12.4%増の7620億47百万円、営業利益が同90.6%増の496億44百万円、経常利益が同81.0%増の514億26百万円、純利益が261億49百万円(前々期は146億85百万円の赤字)だった。
円安による差益増、コスト構造改革の前倒し効果、費用の効率運用などに加えて、第4四半期(1月~3月)の消費増税前駆け込み需要も寄与して大幅増収増益となった。特別損益での遊休不動産売却益計上や減損損失一巡も寄与した。実績為替レートは1米ドル=97.7円、1ユーロ=129.7円、1中国人民元=15.9円だった。
セグメント別に見ると国内化粧品事業は売上高が同1.1%増の3497億18百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同43.5%増の394億60百万円だった。中価格帯の中核ブランドが好調に推移し、消費増税前の駆け込み需要が想定以上だった。利益面ではコスト構造改革も寄与した。グローバル事業は同24.8%増の4022億13百万円、営業利益が76億59百万円(前々期は32億88百万円の赤字)だった。現地通貨ベースでは同1.4%増収だったが為替の円安効果が寄与した。その他事業は売上高が同6.5%増の101億14百万円、営業利益が同5.9%増の20億81百万円だった。子会社の資生堂パーラーが展開する飲食業が好調だった。
今期(15年3月期)連結業績見通しは、売上高が前期比2.4%増の7800億円、営業利益が同15.4%減の420億円、経常利益が同18.3%減の420億円、純利益が同45.3%増の380億円で、配当予想は前期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)としている。
売上面では、国内の消費増税前駆け込み需要の反動減(販社売上ベースで前期駆け込みによる売上増約120億円に対して、今期反動による売上減約80億円を想定)や、海外の「カリタ」ブランドと「デクレオール」ブランドの仏ロレアル社への譲渡がマイナス要因となるが、欧米、中国、新興国などでの売上伸長や、為替変動影響(円安効果)などで吸収して増収見込みだ。営業利益と経常利益については、成長性拡大に向けたマーケティングコスト強化や人件費増加で減益見込みとしている。純利益は特別利益計上で大幅増益見込みだ。
セグメント別売上高の計画は、国内化粧品事業が同1.6%減の3440億円、グローバル事業が同5.9%増の4260億円、その他事業が同1.1%減の100億円で、想定為替レートは1米ドル=100円、1ユーロ=135円、1中国人民元=16.5円としている。
なお4月25日に決算期(事業年度の末日)の変更を発表した。すべての連結子会社と決算期を統一することで、グループ一体となった経営を推進するとともに、経営の透明性および質の向上を図るため、決算期を現在の「毎年3月31日」から「毎年12月31日」に変更する。この変更によって来期(15年12月期)が15年4月~12月の9カ月決算となる。
株価の動きを見ると、3月25日の高値1911円から利益確定売りなどで一旦反落したが、4月11日の1711円から4月24日の1900円まで切り返した。4月17日の前期2回目の増額修正も好感した。そして4月25日発表の今期営業減益見通しを嫌気する形で4月25日に1791円、4月28日に1720円まで急落する場面があったが、4月30日は終値で前日比50円(2.82%)高の1824円まで戻した。目先的な売りが早くも一巡したようだ。
4月30日の終値1824円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円34銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.1%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS849円42銭で算出)は2.1倍近辺である。週足チャートで見ると、足元の急落場面は26週移動平均線がサポートラインとなって反発した。強基調を維持した形であり、目先的な売りが早くも一巡して3月高値を試す展開だろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
資生堂<4911>(東1)の株価は、4月25日発表の今期(15年3月期)営業減益見通しを嫌気して戻り高値圏から急反落したが、目先的な売りが早くも一巡したようだ。
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2014-05-01 06:45