【為替本日の注目点】ECB、0.25ポイントの利上げを決定

 ドル円は東京時間夕方には141円50銭前後まで買われ、直近高値を抜けたがNYでは反落。経済指標は強弱まちまちだったが、米長期金利の低下やユーロ高の影響もあり140円16銭まで下げる。ユーロドルは利上げを材料に続伸。1.0952まで買われ、対円でも153円65銭近辺まで上昇。株式市場は3指数が続伸。AIを巡る高揚感が相場をけん引。ダウは428ドル上昇。債券価格は上昇。長期金利は3.71%台に低下。金は小幅に続伸。原油価格は中国の景気刺激策を好感し大幅に反発。 米 新規失業保険申請件数 → 26.2万件 米 5月輸入物価指数 → -5.9% 米 5月輸出物価指数 → -1.9% 米 6月NY連銀製造業景況指数 → 6.6 米 5月小売売上高 → 0.3% 米 6月フィラデルフィア連銀景況指数 → -13.7 米 5月鉱工業生産 → -0.2% ドル/円 140.16 ~ 141.30 ユーロ/ドル 1.0815 ~ 1.0952 ユーロ/円 152.63 ~ 153.65 NYダウ +428.73 → 34,408.08ドル GOLD +1.80 → 1,970.70ドル WTI +2.35 → 70.62ドル 米10年国債 -0.07 → 3.717% 【本日の注目イベント】 日 日銀金融政策決定会合 日 植田日銀総裁記者会見 欧 ユーロ圏5月消費者物価指数(改定値) 米 6月ミシガン大学消費者マインド(速報値) 米 ウォラー・FRB理事講演 米 ブラード・セントルイス連銀総裁講演 米 バーキン・リッチモンド連銀総裁講演  2大イベントを終え、相場は材料不足から値動きが限定的になると考えましたが、予想は大きく外れ、失礼いたしました。昨日の東京時間には終始ドル買いが優勢となり、5月30日に記録したドルの直近高値140円93銭を抜けてからも上昇が続き、夕方には141円50銭前後までドル高が進みました。ECB、日銀の政策会合を控え、再び「金利差」や「金融政策の方向性の違い」が意識されたようです。その結果、円は対ドルだけではなく、他の主要通貨に対しても大きく売られ、まさに「円全面安」の展開でした。何やら昨年の秋を彷彿させるような動きでした。豪ドル円は昨年9月15日以来となる96円72銭まで買われ、ユーロ円に至っては、2008年9月、つまりリーマンショック当時の水準となる153円65銭近辺まで値を飛ばしています。実際、ECBは予想通り0.25ポイントの利上げを決めた一方、本日の日銀決定会合では「政策据え置き」が予想されており、植田総裁も追い詰められそうな展開です。この先、円がさらに売られようであれば、日本の物価上昇率は日銀が予測しているように、秋までに2%を下回る可能性も低下しそうです。植田総裁にも圧力がかかることになるでしょう。  ECBは予想通り政策金利を4%、中銀預金金利を3.5%にすることを決めました。ラガルド総裁は会見で相変わらず分かり易い言葉で、しかも丁寧に、「Have we finished the Journey ?・・・・No!! 」「We are not at Destination」(われわれはインフレ退治の旅を終えたと思うか? ノーだ。まだ目的地にはいない)と述べ、「7月の追加利上げの可能性は極めて高い」と発言しています。また最終的な金利水準については、「ターミナルレートについてはコメントしたくない。そこに到達した時に分かるものだ」と答えるにとどめています。ラガルド氏は、あらかじめ用意された原稿をただ単に読み上げる多くの中銀総裁とは異なり、「自分の言葉で」丁寧に説明し、分からないものには率直に「勉強不足です」と答えるなど、その真摯な姿勢に非常に好感を持てます。中銀にとって大切な「市場との対話」という点では、ドラギ前総裁より一段と具現化したと考えます。7月の会合で実際に利上げを行うかどうかは分かりませんが、短期金融市場では10月までに中銀預金金利が4%まで達する確率を約80%まで織り込んでいます。  本日からブリンケン米国務長官が中国を訪問します。場合によっては習近平氏との会談の可能性もあるかもしれません。言うまでもなく、米中関係はここ10年間では最悪の状況になっています。台湾を巡る緊張や、中国企業の米国内からの排除など、軍事的にも経済的にもこれまでになかったほど緊張が高まっています。そのような中、ブリンケン氏が訪中し、緩和の糸口を探るようですが、バイデン・習トップ会談につながるのか注目されています。キッシンジャー元国務長官はブルームバーグとのインタビューで台湾問題に触れ、「現在の関係の軌道では、何らかの軍事衝突はあり得ると思う」と述べ、「しかし、関係の現在の軌道は変更されねばならないと考えている」と付け加えています。すでに100歳になるキッシンジャー氏ですが、まだその舌鋒は鋭いようです。  本日の日銀決定会合では、政策変更はないと予想していますが、上でも述べたように、政策変更へのプレッシャーは相当あります。日本の物価上昇が「持続的、安定的に2%の目標を維持できる」のかどうかが今後のカギになりますが、日銀のハト派姿勢が続く限り円安は進み、輸入物価に上昇圧力がかかるといったジレンマに陥ります。変更や修正はないとは思いますが、昨年12月の「黒田ショック」の例もあります。注意するに越したことはありません。長期金利の上限を0.25%から0.5%に突如引き上げたことで、その日だけで約6円も円高に振れたことは記憶に新しいところです。  本日のドル円は139円50銭~141円50銭程度と予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は東京時間夕方には141円50銭前後まで買われ、直近高値を抜けたがNYでは反落。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-06-16 10:15