【為替本日の注目点】ドル円は日銀会合をきっかけに大幅上昇

 140円台半ばで推移していたドル円は、午後3時半から始まった植田総裁の会見をきっかけに141円台まで上昇。NYではFRB高官発言や中銀の金融政策の差に注目した円売りが加速し141円91銭まで上昇。ユーロドルではドル安の流れが続き、1.0970までユーロが買われる。株式市場は3指数が7日ぶりに反落。3連休を控えていることや、連日の上昇もあり、利益確定の売りが優勢に。債券は反落し、長期金利は3.76%台に上昇。金は横ばい。原油は続伸し71ドル台に。 6月ミシガン大学消費者マインド(速報値) → 63.9 ドル/円 140.91 ~ 141.91 ユーロ/ドル 1.0918 ~ 1.0970 ユーロ/円 154.33 ~ 155.26 NYダウ -108.90 → 34,299.12ドル GOLD +0.05 → 1,971.20ドル WTI +1.16 → 71.78ドル 米10年国債 +0.045 → 3.761% 【本日の注目イベント】 中 中国首相、ドイツとフランスを訪問(18-23日) 米 6月NAHB住宅市場指数 米 NY休場(奴隷解放記念日)  前日141円台半ばまで上昇したものの、NYでは139円台後半まで押し戻されたドル円でしたが、先週末には再び141円台まで買われ、NYでは141円91銭と、昨年11月下旬の水準までドル高が進みました。再び年初来のドル高水準を更新しています。きっかけは相変わらず日銀の金融政策決定会合と、その後行われた日銀総裁の発言でした。これまでの黒田総裁のケースと全く変わらず、発言するたびに、面白いように円が売られていく様子が見られました。  日銀は市場予想通り大規模緩和策の維持を決定し、午後3時半から始まった植田総裁の発言でも、むしろ円売りを加速させるような効果しかありませんでした。植田総裁は、「企業が積極的になり始めた値上げや賃上げを見極めるのになお時間がかかる」とした上で、「速やかに正常化した場合、目標に達する前にインフレ率は下がるリスクがある」と説明し、イールドカーブ・コントロール(YCC)を含めて、現状維持を決定した理由を述べています。また従来通り、「拙速な緩和修正が、ようやく出て来た物価と賃金上昇の好循環の芽をつぶしかねない」との慎重な姿勢を維持した上で、YCC修正は、「ある程度のサプライズはやむを得ない」との認識を示しました。この発言は、今後物価見通しが大きく変われば、政策変更を行うことがあることを意味していると思われますが、その際事前にフォワードガイダンス等の「予告」もなしに行う可能性があることを示唆したものと受け止めています。  海外に目を向ければ、インフレが依然根強いとして予想外の追加利上げに踏み切ったカナダ中銀やオーストラリア準備銀行。さらにECBは今回の会合で0.25ポイントの利上げを決めた上で、「7月も利上げの可能性が非常に高い」とラガルド総裁自身が述べるなど、日銀との金融政策の方向性は歴然としています。先週末のNY市場でも、ドル円では円が大きく売られ「ドル高」が進んだ一方、ユーロドルではユーロが買われ「ドル安」が進むなど、基軸通貨ドルに対する動きが正反対でした。このため、ユーロ円は2008年9月以来となる155円30銭前後まで上昇しています。円は他の通貨に対しても全面安の展開で、今後原油など、多くの輸入品の値段に跳ね返って来るものと思われます。焦点は、それでも日銀が想定するように、秋口には日本のインフレ率が2%を下回るのかという点です。  ウォラーFRB理事は16日オスロでの講演で、「はっきり言うが、FRBの仕事は金融政策を使って二つの責務を達成することであり、それは現時点ではインフレ退治のための利上げを意味する」とし、さらに、「一部の銀行の経営不振を心配して金融政策の運営姿勢を変更することは支持できない」と述べています。もともとタカ派のイメージが強いウォラー理事でしたが、今回の発言もかなりのものです。また、リッチモンド連銀総裁のバーキン総裁もメリーランド州での講演で、「インフレ率2%が当局の目標だとあらためて言っておきたい。需要減速によってインフレが比較的早くその目標に戻るという妥当性の高いシナリオに確信を得たいと、私は依然考えている」と語っています。先週のFOMCでは11会合ぶりに政策金利の据え置きを決めましたが、パウエル議長を始め、多くのメンバーがこのような「タカ派寄り」発言を行うということは、想定内のことです。今後もこのような発言が相次ぐ可能性があり、市場はそれでもその発言の影響を受ける可能性もあり、注意は必要です。  ブリンケン国務長官は18日中国を訪れ同国の秦剛外相と会い、当初の予定時間を大幅に上回る7時間半にわたって会談を行いました。共同声明のようなものはないかもしれませんが、米国側は、「率直で実質的、建設的だった」と評価し、中国国営テレビ局も、「率直で深く、建設的だった」と同様の表現で総括しています。またブリンケン長官は、「お互い適切な時期にワシントンを訪問することを秦外相に求め、同氏がこれを受け入れた。今回の会談が関係緊密化につながり得ると両国がみていることを示唆する」と述べています。(ブルームバーグ)  本日のドル円は141円~142円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
140円台半ばで推移していたドル円は、午後3時半から始まった植田総裁の会見をきっかけに141円台まで上昇。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-06-19 10:00