【為替本日の注目点】ドル円143円を割り込むも底堅い

 ドル円は上値を重くし、ドル売りが優勢となったものの、下値も限られた。東京時間夕方には143円を割り込んだがNYでは再び買われ143円70銭まで上昇。ユーロドルは小動きで、1.09台前半で推移。株式市場は小幅ながら3指数が続落。ナスダックは下げ幅が大きく、ハイテク株の利益確定の売りに押され156ポイント下落。債券は続伸。長期金利は3.72%台に低下。金と原油は揃って上昇。 ドル/円 143.07 ~ 143.70 ユーロ/ドル 1.0900 ~ 1.0920 ユーロ/円 156.14 ~ 156.71 NYダウ -12.72 → 33,714.71ドル GOLD +4.20 → 1,933.80ドル WTI +0.21 → 69.37ドル 米10年国債 -0.013 → 3.721% 【本日の注目イベント】 日 4月景気先行指数(CI)(改定値) 欧 ラガルド・ECB総裁講演 米 5月耐久財受注 米 4月ケース・シラ-住宅価格指数 米 4月FHFA住宅価格指数 米 5月新築住宅販売件数 米 6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 米 6月リッチモンド連銀製造業景況指数  ドル円は、当局の「口先介入」に対する警戒感もあり上値をやや重くし、利益確定のドル売に押され143円台を割り込む場面もありましたが、下値は限定的でした。昨日の東京時間午前中には、財務省の神田財務官が「行き過ぎた動きは適切に対応していく」と述べ、「口先介入」を行い、ドル円は下げる場面もありましたが、先日指摘した通り、今回の「効果」は限定的でした。  ドル円はNYでは、NY連銀のウイリアムズ総裁の発言を受け再び上昇し、143円70銭まで買われています。ウイリアムズ総裁はBISのイベントで「世界的な高インフレ環境において、世界中の中央銀行が物価安定を回復するために強力かつ断固とした行動をとっている」と述べた上で、「物価安定の回復が最も重要だ。持続的な経済および金融の安定を支える基盤だからだ」と強調しています。この発言に、「FRBは物価が安定するまでは利上の継続は辞さない」との連想が働き、市場はドル買い、株売りで反応しています。ウイリアムズ総裁はFOMCでは議長を務めていることもあり考え方もFRBに近く、執行部の一員と見られており、パウエル議長と同様「タカ派寄り」の発言を行ったものと理解しています。  ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の反乱があったことで、今朝のブルームバーグでも同組織と創設者プリゴジン氏のニュースに多くの時間をかけています。プリゴジン氏はプーチン氏に反旗を翻し、モスクワまで数百キロ圏内の地点まで進軍した後、武装蜂起を中止しました。その後の同氏の存在と、プーチン氏の発言もない状況が続いていましたが、今朝の最新の報道では同氏は26日、通信アプリ「テレグラム」に11分間の音声メッセージを投稿し、「ワグネルがモスクワまでに200キロ以内に迫った24日の進軍は、ワグネルの破壊を防ぐことに加え、ウクライナ侵攻の『甚大な誤り』の「責任を負う者らを追及することを目的とした抗議だった」と語っています。ただ、「既存の体制や合法的に選ばれた政府を打倒するという目的はなかった」と述べていますが、プーチン氏への忠義を公言するには至らなかったとしています。この音声メッセージに対してロシア大統領府の反応は今のところないようですが、プーチン氏は今回の武装蜂起を「裏切り」だと非難しており、今後のブリゴジン氏への対応が注目されます。  ロシア大統領府の説明によると、事態収拾に向けた取引の一環として、当局が刑事訴訟に向けた手続きを取り下げる代わり、プリゴジン氏はベラルーシに出国することに合意したとしています。ただロシアの複数のメディアは26日、同氏に対する検察当局の捜査は継続しており、訴追手続きは取り下げられていないと報じています。筆者も「ワグネル」には相当数の戦闘員がいることは耳にしていますが、ピーク時には約5万人もいたと報道されています。同組織は2014年にプリゴジン氏によって設立され、雇い兵のほとんどは「元囚人」のようです。米国は今年初め、「ワグネル」を国際犯罪組織に指定しており、オーストラリアとカナダ、日本、英国、EUが同組織を制裁対象にしています。「ワグネル」の法的地位は不透明で、ロシアでは雇い兵は厳密には違法とのことです。「ワグネル」はロシアの正規軍とは独立して活動しており、最近は軍との正式な契約を結ばせるロシア当局の要求をはねつけているようです。  また今朝のブルームバーグはプリゴジン氏とプーチン氏との関係にも触れています。プリゴジン氏は62歳でロシアの実業家でありますが、前科があるとしています。プリゴジン氏が経営するケータリング会社とロシア大統領府との契約や、大統領との長年の関係から「プーチン氏のシェフ」と呼ばれており、プーチン氏の右腕の一人とみなされています。プーチン氏は「ワグネル」による支援を高く評価しており、1年4カ月にも及ぶ戦争でロシア側の正確な犠牲者数は不明ですが、多数の兵士を失っており、その多くがほとんど訓練を受けていません。「ワグネル」部隊はロシアの地上攻勢に重要な役割を担い、220日余りにわたる戦闘の末、5月にウクライナ東部の都市バフムトを制圧しています。今のところ、プリゴジン氏とプーチン氏との関係がどうなるのかは不明ですが、この確執がプーチン政権にとって政治的に非常に大きなダメージになっていると結んでいました。  本日のドル円は142円50銭~144円程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
ドル円は上値を重くし、ドル売りが優勢となったものの、下値も限られた。東京時間夕方には143円を割り込んだがNYでは再び買われ143円70銭まで上昇。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-06-27 10:15