【為替本日の注目点】ドル円145円に迫る

144円台前半で推移していたドル円は朝方8時半頃から急伸。1-3月期GDPが上方修正され、失業保険申請件数も減少していたことで、年内2回の利上げ観測が高まる。ユーロドルは反落。ドルが買われ、ユーロは1.09台を割り込む。株式市場はナスダックがほぼ横ばいだったが、ダウとS&P500は上昇。債券は大幅に続落。長期金利は3.83%台と大幅上昇。金は小幅ながら3日続落。ドルが買われたことで上値が重い展開。原油は続伸。
新規失業保険申請件数 → 23.9万件
1-3月GDP(確定値 → 2.0%
5月中古住宅販売成約件数 → -2.7%
ドル/円 144.18 ~ 144.90
ユーロ/ドル 1.0860 ~ 1.0941
ユーロ/円 157.27 ~ 157.86
NYダウ +269.76 → 34,122.42ドル
GOLD -4.30 → 1,917.90ドル
【本日の注目イベント】
日 5月失業率
日 6月東京都区部消費者物価指数
日 5月鉱工業生産
中 6月中国製造業PMI
中 6月中国サービス業PMI
独 独6月雇用統計
欧 ユーロ圏5月失業率
欧 ユーロ圏6月消費者物価指数
英 英1-3月期GDP(改定値)
米 5月個人所得
米 5月個人支出
米 5月PCEデフレータ(前月比)
米 5月PCEデフレータ(前年比)
米 5月PCEコアデフレータ(前月比)
米 5月PCEコアデフレータ(前年比)
米 6月シカゴ購買部協会景気指数
米 6月ミシガン大学消費者マインド(確定値)
ドル円の「一歩後退・二歩前進」の動きは続き、昨日のNYでは145円に迫る水準まで円が売られました。もっとも、昨日は円全面安の展開ではなくドルそのものが買われる動きでした。米金利が大幅に上昇し、ドルは主要通貨に対して「強含む」展開でした。1-3月期のGDP確定値が「2.0%」と、改定値の「1.3%」から再び上方修正され、さらに週間失業保険申請件数も低下していたことで、FRBは7月の会合に加えさらに利上げを行うといった観測が高まったことが、ドル買いにつながっています。
昨日の「アナリストレポート」がお休みだったので、あえて触れておきたいと思いますが、ポルトガルで開かれていたECBフォーラムでは、日本を含めた4中銀総裁がパネルディスカッションでそれぞれ自国の物価情勢を説明し、それに伴う金融政策の方向性について意見を述べました。パウエル議長は、「政策は景気抑制的だが、十分に抑制的でない可能性がある。抑制的な政策はまだ十分に長い期間行われていない」とし、「コアインフレについては2025年まで当局の目標の2%まで戻ることはない」との見方も示しました。ECBのラガルド総裁は、利上げ停止についての質問に、「それは現在考えていない。われわれはまだやらねばならないことがある」と答えています。BOEのベイリー総裁も、「最近のデータにはインフレが持続する兆候が見られる。英国のコアインフレは他国・地域に比べて相当根強い」との認識を示しています。これに対して植田日銀総裁は、「足元ではインフレ目標の2%を大きく上回っているが、基調的なインフレ率は依然として2%をやや下回っているとわれわれは考えている」と説明し、「そのため、現時点では政策を変更していない」と、これまでの日銀の行った説明を繰り返しています。ただ今回の発言の中には、「来年インフレが上向くと確信が持てれば、金融政策の正常化に着手することはあり得る」と、これまでより一歩踏み込んだ発言を行っていることに注目しています。ただ今回のパネル討論会でもあらためて日銀の政策が、他の3中銀の方向性と真逆であることが浮き彫りになっているといった印象でした。
パネル討論会でのパウエル議長は「タカ派寄り」でしたが、米国家経済会議(NEC)のブレイナード委員長は29日、「消費者物価の数字は今年後半に、持続的に改善することが想定され得る」と発言し、「選挙前に2%前後あるいは2%を若干上回るレンジになるのは可能だと考える十分な根拠がある」と述べています。ブレイナード氏は、今年2月までFRB副議長を歴任し、一時は次期FRB議長候補としても名前が挙げられていました。またこの日ダブリンで行った講演でアトランタ連銀のポスティック総裁は、「政策が効果を表すのを待つべき時がある。私は追加利上げについてパウエル議長を含めた他のメンバーほど緊急性を感じない」と、金利据え置きを支持する考えをあらためて示しています。ただ昨日のスワップ金利市場では、年内あと1度ではなく2回目の追加利上げが行われる確率を約50%織り込んでいます。
ドル円はいよいよ最も介入を警戒しなければならない145円台に迫る水準まで来ました。すでに鈴木財務大臣や財務省の神田財務官がけん制する発言を行っていますが、これは想定通りほとんど効きません。当局としても円安が緩やかに進行しているため「過度の変動」とは認定しづらく、介入する「大義名分」がみつかりにくい状況です。米バンク・オブ・アメリカはレポートで、「FOMCでの追加利上げが年内続くようであれば、ドル円は160円もある」といった見通しを発表していました。
本日はPCEデータなど、インフレや米景気に関わる経済指標の発表があります。週末ということもあり、注意は必要です。
本日のドル円は143円80銭~145円80銭程度を予想します。(執筆者:佐藤正和・外為オンライン 編集担当:サーチナ)(イメージ写真提供:123RF)
144円台前半で推移していたドル円は朝方8時半頃から急伸。1-3月期GDPが上方修正され、失業保険申請件数も減少していたことで、年内2回の利上げ観測が高まる。(イメージ写真提供:123RF)
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2023-06-30 10:00